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37散らして絡まる② ※

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 女官が壁の向こうで耳を立てていることを、ルイは知っている。レオポルドはどうだろうか。ここで話されることはすべてが筒抜けで、記録されることを理解しているのだろうか。

「俺のものになれ、ルイ」

 飽き足らず、そんな気味の悪いことを言う。ルイはこの場は容赦しているが、普段の調子であればレオポルドを引っ叩いているところだった。
 今までの成人儀礼の記録では、相手どうしの会話はわずかにあるだけだ。ほとんどが指南役の助言や、手ほどきに関することである。それらも文字にすれば100文字程度のこと。黙って済まされることが多いのだと、ルイは女官から聞いていた。

(もうぐしゃぐしゃだ……)

 ルイは自分の股が開かれ、唇はわけもわからない液体にまみれている状況を恥じた。指南役の勤めだと胸を張ることはできないし、居た堪れない。完全に主導権は王子側にあった。

「指をいれるぞ?」

「ひっ……まって」

 長い腕が腹部を這って、尻にまで伸びていく。その先はルイにもわからない。自分の身体の中なのに、これから暴かれるところはまったくの未知である。

 指が入っていく感覚に、ルイはぎゅっと目をつぶって耐えていた。熱い、苦しい。丁寧に下準備があったとはいえ、初めてのルイには心身からの負担が大きかった。

「ルイのここ、すごいいい具合だ」

 女官があらかじめ用意していたのだから当然だろう。それにしても、ルイの尻穴は小さくて、レオポルドの指を一本受け入れるのにも苦痛が伴っていた。男性器で貫くためには、もっと中をほぐす必要がありそうだった。

「そんな……むり、奥は」

 ルイの小さな悲鳴を聞き入れても、レオポルドは流れを止めることはない。尻に気を取られている指南役に対して、乳首や性器に触れて王子は攻めたてる。

「レオポルド様、くるしい。奥はやめて……」

 彼の言葉も嗚咽も、レオポルドの理性を煽るだけ。まくし立てるように段取りだけが整えられていった。

 意識があちらこちらに連れていかれてしまう。頭のなかで練られた順序がすでにあるかのように、相手は刺激を加えてくる。陰茎を握られて、触ったこともない胸の先端を弄られる。
 愛撫の仕方は人それぞれなのだと、ルイは学んでいた。
 自分が今まさに受けているこれは愛撫で、女性にしてやるのが普通だとわかっている。だから男がされて興奮するのはおかしい。そんなのはありえない。ルイは当初はそう思っていた。
 
「指、こんなに入ってるぞ」

「いいから、あぁ……いやだ、そこ触るなぁ」

 緩やかな刺激の波にルイは喘いだ。自分の興奮を隠したいのに、声が自然と出てしまう。

 全身にかかる甘い痺れに、ルイは我慢いかずに嬌声を上げた。情けない。大人げなくひどい声を出している。王子はもちろん、女官たちもきっと幻滅しているに違いない。

 快楽の種がぷつぷつと頭から出ているような気分。生まれて初めて、ルイは軽い絶頂を味わった。足と腰が同時に浮いて、考えていたことが一気に蒸発していく。奈落に落ちそうになるところを寸前で踏ん張っていた。

「あっ……はぁ、はぁ、ああぁ……」

 情欲をしぼられ、目の前で果ててしまった。ルイは今の自分の顔が、レオポルドに見せられたものでないことを悟り、首を頑張って曲げようとした。
 その動きを予想していたように上の相手は、浴びるほどのキスをルイに降らせていった。
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