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22模範になりたい①
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王との謁見を済ませたレオポルドが、足早にルイのもとに顔を出してくる。まだ時間はそんなに経っていない。さっき送り出したと思ったら、彼はすぐに戻ってきた。
「意外とお早かったのですね」
ルイは言葉では穏やかに振る舞っているが、レオポルドとの対面にはまだ慣れていない。自身の身長が、王子の胸元程度にしか達していないことに驚かされる。どこまで成長する気だろう。これで17歳は嘘だろうと、ルイは部屋の卓をぶん投げたい衝動に駆られた。
嬉しさが半分、焦りが半分こみ上げてくるが構わない。しばし感情を抑える。
「ルイに会いたくて、急いできたからな」
「そんなにですか。では、さっきの続きの話をいたしましょうか」
「いや、ルイのことをもっと教えてくれ。知りたいんだ」
レオポルドはことあるごとに「ルイが知りたい」と手紙に書きつけてくる。だからこれは今に始まったことではない。おやおや、と後ろの侍女たちが盛り上がるのを、ルイはごほんと咳払いで制した。
自分のことを語る。つまり、自分の内情をさらすというわけで、空っぽな自分をさらすことを意味している。
(故郷にもこの国にも関心がない……残っているのはこの王子と、ただ長い時間だけだ)
そのようなルイの本性が、レオポルドにバレてしまっては困る。大人のプライドというか、年上だからこその譲れないものがある。
「レオポルド様の努力に比べたら、私なんて。語るに値しない人間です」
「そんなこと。自分を卑下し過ぎじゃないか?」
王子とは年齢差があっても夫婦である。だから年下だとしても正直に話すべきなのか。それを語ってレオポルドが受け入れてくれるか、ガッカリするかは正直わからない。でも隠し事をひそめることが悪影響になるのなら、正直に自白したほうが良いのではないか。
「あのレオポルド様、私たちってどういう関係なのでしょうか?」
「なんだ?ルイ、それはどういう意図の質問だろうか」
「いやえっと。レオポルド様は私のことをどう思っているのかな……って。え、レオポルド様?」
ルイの目の前で、レオポルドが顔を真っ赤に染め上げる。見るからに熱を発していた。
「それを、俺は言わないといけないか?」
周囲を燃やしてしまいそうなほど火力が高そうな、激しい血色。苦し気な表情でいる。
相手がどんな気持ちで接してきているのか、軽く訊ねようとしただけ。自分に憧れを抱いているならやめてほしい、あまり自分に構わなくてもいいとルイは伝えたかった。でもレオポルドの反応は常軌を逸していた。
「嫌なことを訊いてしまったのなら、ごめんなさい。別にいいですから。つい気になってしまっただけで」
そんなに嫌なら言わないでと、ルイは慌てて訂正した。
再会したばかりなのになんだか気まずくなり、ルイは先走ってしまったことを強く悔やんだ。血を分けた弟のように、昔は考えていることが共鳴できていたはずなのに。
今は相手のことがわからず、まだ手紙の文面上のほうがわかりやすい。じれったいとルイは感じ、わずかに目を伏せた。
「意外とお早かったのですね」
ルイは言葉では穏やかに振る舞っているが、レオポルドとの対面にはまだ慣れていない。自身の身長が、王子の胸元程度にしか達していないことに驚かされる。どこまで成長する気だろう。これで17歳は嘘だろうと、ルイは部屋の卓をぶん投げたい衝動に駆られた。
嬉しさが半分、焦りが半分こみ上げてくるが構わない。しばし感情を抑える。
「ルイに会いたくて、急いできたからな」
「そんなにですか。では、さっきの続きの話をいたしましょうか」
「いや、ルイのことをもっと教えてくれ。知りたいんだ」
レオポルドはことあるごとに「ルイが知りたい」と手紙に書きつけてくる。だからこれは今に始まったことではない。おやおや、と後ろの侍女たちが盛り上がるのを、ルイはごほんと咳払いで制した。
自分のことを語る。つまり、自分の内情をさらすというわけで、空っぽな自分をさらすことを意味している。
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そのようなルイの本性が、レオポルドにバレてしまっては困る。大人のプライドというか、年上だからこその譲れないものがある。
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「そんなこと。自分を卑下し過ぎじゃないか?」
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「あのレオポルド様、私たちってどういう関係なのでしょうか?」
「なんだ?ルイ、それはどういう意図の質問だろうか」
「いやえっと。レオポルド様は私のことをどう思っているのかな……って。え、レオポルド様?」
ルイの目の前で、レオポルドが顔を真っ赤に染め上げる。見るからに熱を発していた。
「それを、俺は言わないといけないか?」
周囲を燃やしてしまいそうなほど火力が高そうな、激しい血色。苦し気な表情でいる。
相手がどんな気持ちで接してきているのか、軽く訊ねようとしただけ。自分に憧れを抱いているならやめてほしい、あまり自分に構わなくてもいいとルイは伝えたかった。でもレオポルドの反応は常軌を逸していた。
「嫌なことを訊いてしまったのなら、ごめんなさい。別にいいですから。つい気になってしまっただけで」
そんなに嫌なら言わないでと、ルイは慌てて訂正した。
再会したばかりなのになんだか気まずくなり、ルイは先走ってしまったことを強く悔やんだ。血を分けた弟のように、昔は考えていることが共鳴できていたはずなのに。
今は相手のことがわからず、まだ手紙の文面上のほうがわかりやすい。じれったいとルイは感じ、わずかに目を伏せた。
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