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【番外編】小田切家の人々
前編
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「まあ!晶ちゃん!いらっしゃい」
玄関先で甲高い声に迎い入れられて晶は怯んだ。
雅治の母親の景子は、いつも意味もなくテンションが高い。
「お、お邪魔します」
「んもう!なに他人行儀なこと言って!いやねえ。さ、入って入って。お父さんも待ってるのよ。ほら、うちって、男ばかりでむさ苦しいでしょう?華がないのよねぇ。晶ちゃんが居てくれたら、明るくなるわ。私ねえ、晶ちゃんが雅治と結婚してくれて本当に嬉しいのよ。昔から晶ちゃんみたいな可愛い娘が欲しかったの!」
晶と雅治を居間に誘導しながら景子は一人で喋り続ける。
居間に入ると、雅治の父親の琢磨が慌てたように景子をたしなめた。
「母さん、晶君は嫁と言っても女性じゃないんだ、娘というのはおかしいだろう」
「あらやだ!ほんとう、そうだわ。ごめんなさいね、晶ちゃん。悪気があって言ったんじゃないのよ。晶ちゃんってほら、そんじょそこいらの女の子よりずっと可愛いじゃない?つい性別がわからなくなっちゃうのよね。ま、どっちでもいっか、ほほほ」
「母さん、頼むから少し黙ってくれないか。晶がびっくりして脅えてる」
「まあ、雅治ったらなに言ってるの、嫌な子ね」
景子が台所に飲み物を用意するために消えると、階段を駆け下りてくる騒々しい音がして、直後、雅治の弟の智哉が居間に駆け込んできた。
「晶!プレステやろ!ドラクエ!」
雅治の弟の智哉は、前から異様に晶に懐いていた。
「智哉、おまえはまともに挨拶も出来ないのか。だいたい、晶のこと呼び捨てで呼ぶなって何回言ったらわかるんだ」
「じゃあ、なんて呼ぶんだよ。兄貴の嫁さんなら普通はオネエサンだけど、晶はオネエサンじゃねえじゃん。なあ、晶?」
晶はひきつった笑顔を雅治に向けながら、
「いいって、雅治。オレ、智哉とゲームしてくる」
と言って、智哉に手を引っ張られながら居間を出た。
「さ、晶はこっちね」
言いながら晶にコントローラーを渡し、ゲーム機のスイッチをオンにすると、智哉は当然のように晶の膝の上に座った。
「智哉、おまえ、いくつになった」
「はあ?忘れたの?今中2で、今度中3だよ」
「だったよな。なんで、人の膝の上に乗るんだよ」
「だって…」
甘えた声を出して、膝の上で振り返る。
智哉は雅治に顔立ちの似た美少年だった。
「晶、いい匂いがするんだもん」
クンクンと晶の首筋に鼻先を押し付けてそんなことを言う。
「ねえ、晶、オレね、もうあそこの毛、生えたんだよ。見る?」
重大な秘密を打ち明けるように、晶の耳元に唇を寄せて声をひそめて言う。
晶はこめかみをピクピクさせた。
そういう年頃なのか、最近の智哉は会うたびにこうだ。
子供のように甘えた振りで晶にまとわりつきながら、ちゃっかり身体に触ったり、性的な視線を向けてきたりする。
兄嫁を誘惑するとはたいした中学生だが、子供に興味のない晶にはうっとおしいだけだった。
「見たくねえよ」
「なんでなんでなんで!!!見てよ見てよ見てよ!!!」
あくまで無邪気を装って、智哉は立ち上がるとズボンと下着を膝まで下げて晶の目の前で股間を露わにした。
「見て、ほら」
晶は醒めた目で少年らしい初心な性器を本人の望む通りに見てやった。
「ね?生えてるでしょう」
「小せえ…」
「え?!なに?なんて言ったの?!」
「小さいな、って言ったの!」
智哉は口と目を大きく開いたまま、絶句している。
いたいけな少年にはどうやら相当ショックな一言だったようだ。
しばらく固まっていたあと、床に両手をついてガックリ、項垂れた。
「そりゃあ、そうだよ。だってオレ、まだ中学生なんだから。兄貴と比べないでよ。でもきっと大人になったら兄貴より大きくなると思うよ。牛乳だって一日に1リットル飲んでるし」
どんな根拠だ、と思ったがそんなところを突っ込んでも仕方ない。
「おまえのチンコが雅治のより大きくなろうが小さいままだろうが、オレにはカンケイねえし。それより、パンツあげろよ。風邪ひくぞ」
「ねえ、晶は雅兄のどこが好きなの?顔?」
「顔も好きだし、カラダも好き。頭がいいとこも好き」
「そんなの、オレだって全部負けてないよ!カラダはまだ成長期だけどさ、顔と頭は兄貴よりイイと思うんだ!女の子から告白された数でも負けてないし、成績だって中間も期末も学年トップだったよ!雅兄は弁護士だけど、オレは判事になるんだ」
「だから、なんだよ」
晶の側ににじり寄って、下からじっと見上げるように甘えた声で智哉は言った。
「だから晶、雅兄と別れて、僕のものになってよ」
ニキビひとつない綺麗な肌の少年の美しい顔のアップに、一瞬晶は怯んだ。
まだ怖いものも、本当に悲しいことも知らないような、汚れのない純粋な少年の瞳は、傷つけてはいけないと思わせるに充分だった。
「悪いんだけど…」
晶にしては思いやりのある優しい声で、言う。
「オレはもう、雅治のものだから」
智哉は潤んだ瞳でフルフルと首を振り、
「だったら愛人でもいいから!」
と言って、晶の首にしがみついた。
慕われて、悪い気がするはずはない。
しかも相手は雅治そっくりの美少年だ。
ただし似ているのは顔だけで、無茶で無鉄砲で恥知らずな性格は、どちらかと言えば自分が中学生の頃とそっくりだ、という気がする。
少年らしい一途な想いに思わずほだされそうになるが、中学生は晶の守備範囲ではなかった。
自分の稚気を自覚している晶にとっては、子供の相手は疲れるだけで、少しも欲望を感じない。
幸いなことに、智哉とはキスひとつする気になれない。
しかし、すでにほとんど身長差のない智哉に伸し掛かられて体重を支えきれず、押し倒されて床に重なってしまった。
玄関先で甲高い声に迎い入れられて晶は怯んだ。
雅治の母親の景子は、いつも意味もなくテンションが高い。
「お、お邪魔します」
「んもう!なに他人行儀なこと言って!いやねえ。さ、入って入って。お父さんも待ってるのよ。ほら、うちって、男ばかりでむさ苦しいでしょう?華がないのよねぇ。晶ちゃんが居てくれたら、明るくなるわ。私ねえ、晶ちゃんが雅治と結婚してくれて本当に嬉しいのよ。昔から晶ちゃんみたいな可愛い娘が欲しかったの!」
晶と雅治を居間に誘導しながら景子は一人で喋り続ける。
居間に入ると、雅治の父親の琢磨が慌てたように景子をたしなめた。
「母さん、晶君は嫁と言っても女性じゃないんだ、娘というのはおかしいだろう」
「あらやだ!ほんとう、そうだわ。ごめんなさいね、晶ちゃん。悪気があって言ったんじゃないのよ。晶ちゃんってほら、そんじょそこいらの女の子よりずっと可愛いじゃない?つい性別がわからなくなっちゃうのよね。ま、どっちでもいっか、ほほほ」
「母さん、頼むから少し黙ってくれないか。晶がびっくりして脅えてる」
「まあ、雅治ったらなに言ってるの、嫌な子ね」
景子が台所に飲み物を用意するために消えると、階段を駆け下りてくる騒々しい音がして、直後、雅治の弟の智哉が居間に駆け込んできた。
「晶!プレステやろ!ドラクエ!」
雅治の弟の智哉は、前から異様に晶に懐いていた。
「智哉、おまえはまともに挨拶も出来ないのか。だいたい、晶のこと呼び捨てで呼ぶなって何回言ったらわかるんだ」
「じゃあ、なんて呼ぶんだよ。兄貴の嫁さんなら普通はオネエサンだけど、晶はオネエサンじゃねえじゃん。なあ、晶?」
晶はひきつった笑顔を雅治に向けながら、
「いいって、雅治。オレ、智哉とゲームしてくる」
と言って、智哉に手を引っ張られながら居間を出た。
「さ、晶はこっちね」
言いながら晶にコントローラーを渡し、ゲーム機のスイッチをオンにすると、智哉は当然のように晶の膝の上に座った。
「智哉、おまえ、いくつになった」
「はあ?忘れたの?今中2で、今度中3だよ」
「だったよな。なんで、人の膝の上に乗るんだよ」
「だって…」
甘えた声を出して、膝の上で振り返る。
智哉は雅治に顔立ちの似た美少年だった。
「晶、いい匂いがするんだもん」
クンクンと晶の首筋に鼻先を押し付けてそんなことを言う。
「ねえ、晶、オレね、もうあそこの毛、生えたんだよ。見る?」
重大な秘密を打ち明けるように、晶の耳元に唇を寄せて声をひそめて言う。
晶はこめかみをピクピクさせた。
そういう年頃なのか、最近の智哉は会うたびにこうだ。
子供のように甘えた振りで晶にまとわりつきながら、ちゃっかり身体に触ったり、性的な視線を向けてきたりする。
兄嫁を誘惑するとはたいした中学生だが、子供に興味のない晶にはうっとおしいだけだった。
「見たくねえよ」
「なんでなんでなんで!!!見てよ見てよ見てよ!!!」
あくまで無邪気を装って、智哉は立ち上がるとズボンと下着を膝まで下げて晶の目の前で股間を露わにした。
「見て、ほら」
晶は醒めた目で少年らしい初心な性器を本人の望む通りに見てやった。
「ね?生えてるでしょう」
「小せえ…」
「え?!なに?なんて言ったの?!」
「小さいな、って言ったの!」
智哉は口と目を大きく開いたまま、絶句している。
いたいけな少年にはどうやら相当ショックな一言だったようだ。
しばらく固まっていたあと、床に両手をついてガックリ、項垂れた。
「そりゃあ、そうだよ。だってオレ、まだ中学生なんだから。兄貴と比べないでよ。でもきっと大人になったら兄貴より大きくなると思うよ。牛乳だって一日に1リットル飲んでるし」
どんな根拠だ、と思ったがそんなところを突っ込んでも仕方ない。
「おまえのチンコが雅治のより大きくなろうが小さいままだろうが、オレにはカンケイねえし。それより、パンツあげろよ。風邪ひくぞ」
「ねえ、晶は雅兄のどこが好きなの?顔?」
「顔も好きだし、カラダも好き。頭がいいとこも好き」
「そんなの、オレだって全部負けてないよ!カラダはまだ成長期だけどさ、顔と頭は兄貴よりイイと思うんだ!女の子から告白された数でも負けてないし、成績だって中間も期末も学年トップだったよ!雅兄は弁護士だけど、オレは判事になるんだ」
「だから、なんだよ」
晶の側ににじり寄って、下からじっと見上げるように甘えた声で智哉は言った。
「だから晶、雅兄と別れて、僕のものになってよ」
ニキビひとつない綺麗な肌の少年の美しい顔のアップに、一瞬晶は怯んだ。
まだ怖いものも、本当に悲しいことも知らないような、汚れのない純粋な少年の瞳は、傷つけてはいけないと思わせるに充分だった。
「悪いんだけど…」
晶にしては思いやりのある優しい声で、言う。
「オレはもう、雅治のものだから」
智哉は潤んだ瞳でフルフルと首を振り、
「だったら愛人でもいいから!」
と言って、晶の首にしがみついた。
慕われて、悪い気がするはずはない。
しかも相手は雅治そっくりの美少年だ。
ただし似ているのは顔だけで、無茶で無鉄砲で恥知らずな性格は、どちらかと言えば自分が中学生の頃とそっくりだ、という気がする。
少年らしい一途な想いに思わずほだされそうになるが、中学生は晶の守備範囲ではなかった。
自分の稚気を自覚している晶にとっては、子供の相手は疲れるだけで、少しも欲望を感じない。
幸いなことに、智哉とはキスひとつする気になれない。
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