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第三章≪とまらぬ想い≫

5.嫉妬

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ジュディスが来る日は、夕食を一緒に食べる。
兄と二人きりの夕食だと、ほとんどわたし一人が喋っているけど、ジュディスがいるととても賑やかになる。

ジュディスには兄に近寄って欲しくない、なんて思っていたけど、今はジュディスが帰ってしまうのが寂しく感じる。
お姉さんがいたら、こんな感じなのかなって思う。

夕食の後片付けを手伝っていたら、長谷川さんが「奏さんとジュディスさんは美男美女で本当にお似合いのカップルですね」と言った。

長谷川さんは悪い人ではないし、お料理はいつもとても美味しいのだけど、時々、わたしを落ち込ませるようなことを言う。

前から長谷川さんには「花音さんはお兄さんに甘え過ぎですよ」と、よく言われていた。

生活の全ての面倒をみてもらっている兄に、感謝が足りないとも。

反論出来ないけど、じゃあ、どうすればいいのかわたしにはわからないし、長谷川さんも、具体的なことは教えてくれない。

なんとなく、機嫌の悪いときに当たられているだけのような気もするし、単純に、長谷川さんには嫌われている気もする。
そんな風に思いたくはないけど。

「でも、お兄ちゃんとジュディスはお付き合いしてるわけじゃないよ」
わたしは長谷川さんに言った。
美男美女でお似合いかもしれないけど、二人は恋人同士ではないのだ。

わたしは勇気を出して、ジュディスに聞いた。
「ジュディスはお兄ちゃんの恋人なの?」って。
ジュディスは豪快に笑って否定した。
「奏は男性として魅力的だし、奏と付き合いたいってガールはたくさんいるわ。でも奏は誰ともステディな関係にはならないの。多分、心に決めた人がいるんだと思う」
「心に決めた人?」
わたしは、ドキっとした。
「もしかして、カオルさん?」
「カオル?花音は、カオルを知ってるの?」
「うん、お兄ちゃんと一緒に、お墓参りをしたの」
「そうだったの。カオルはギルドの開発メンバーの一人よ。わたしはカオルに会ったことはないけど、確かに奏とカオルが付き合ってるって噂は日本にいたわたしの耳にも入ってきたし、二人はとても親密だったみたい。二人の間には特別な絆があったらしいわ。でも、恋人同士ではなかったと思う。だって、奏はストレートだと思うわ」
「ストレートって?」
「性的嗜好のことよ。ストレートは異性愛者。カオルと恋人同士なら、奏はゲイかバイってことになるから」
「え?カオルさんって、男の人なの?」
「あら、知らなかったの?」

そのジュディスとのお喋りは、わたしを有頂天にした。

兄とカオルさんは恋人ではなく、兄とジュディスも恋人ではないってわかったから。

わたしは、兄の過去にまで嫉妬する嫌な女だ。

長谷川さんは、まるでそのことを見抜いているような目でわたしを見て言った。
「奏さんのような男性には、ジュディスさんくらいの方でなければ釣り合いませんよ。きっとあの二人は結ばれます」

心に棘が刺さったような痛みが走った。









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