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第三章≪とまらぬ想い≫
1.半身
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「…あっ、…お兄ちゃん、息が…く、苦しい…よ」
「ごめん、花音。大丈夫?」
兄の唇がわたしの唇から離れて、心配そうな顔でわたしの顔を覗きこんでいる。
指で、唾液を拭うようにわたしの唇に触る。
至近距離過ぎて、キスをしているときより恥ずかしい。
「お、お兄ちゃん、コンタクトしてるの?お父さんもお母さんも、わたしも視力はいいのに」
あまりにじっと顔を見られて、恥ずかしくて、そんなことを言ってしまった。
兄は、「勉強のし過ぎで悪くなったんだよ。花音はあんまり勉強しなかったのかな」なんて、意地悪を言った。
あの夜以来、兄と、ときどき、大人のキス、をしている。
おやすみのキスは毎晩必ずするけど、口の中に舌を入れるキスは、ときどき、だ。
それは、リビングのソファですることもあるし、兄の部屋ですることもある。
今夜は、リビングで一緒に映画を見ていて、それは、はじまった。
映画を見るときは、部屋を少し暗くする。
ヨーロッパの街並みや風景は綺麗だけど、少し退屈な外国の映画だった。
わたしは、横に座る兄の横顔を盗み見ていた。
睫毛が長くて羨ましいな、とか。
顔が小さく見えるのは、首が長いせいかな、とか。
その首筋や、襟ぐりから覗く鎖骨が艶めかしくて、なんだか色っぽい…とか。
見ているだけなのに、胸がどきどきした。
わたしの心臓の音が聞こえてしまったのだろうか。
60インチの液晶画面を向いていた兄が、不意にわたしの方を見たせいで、目があってしまった。
兄は、ふっと、目を細めて甘やかに微笑んで、わたしの頭を片手で引き寄せるように、唇を重ねてきた。
最初はそっと重ねるだけ。
そのあと、わたしの上唇や下唇を、舌で舐めるように。
そして、わたしの口の中を、大きな熱い舌でくすぐるように。
キスの間、兄の手はわたしの髪に触れたり、指で頬に触れたりする。
わたしは、どうやって応えていいかわからない。
ただ、兄に委ねているだけ。
でも、気が付くとわたしの舌も、兄の舌を追いかけるように、兄の口の中に入っていく。
舌と舌を絡めるような激しいキスに夢中になりすぎて、息があがってしまったのだ。
「だいぶ上手くなったけど、花音はまだ、息継ぎが上手に出来ないね」
キスの採点をするようにそんなことを言われて、わたしはちょっとムッとする。
「だって、わたしはお兄ちゃんみたいに、経験豊富じゃありませんから!」
兄は笑いながら、わたしの頭を撫でる。
「いいんだよ、花音はそれで。さあ、もう部屋に戻っておやすみ」
「…うん」
最後にわたしは兄の頬にちゅっと、軽くキスをした。
「お兄ちゃん、おやすみなさい」
「おやすみ」
身体が離れ切るまで、兄とわたしの指は繋がっている。
指先まで離れて「一人」になると、半身を失くしたような寂しい気持ちになった。
離れたくなかった。
もっと側に、もっと近くにいきたい。
でも、これ以上、ここにいたらいけない。
これ以上、兄の側にいたらいけない。
これ以上側にいたら。
きっと、過ちを犯してしまう。
「ごめん、花音。大丈夫?」
兄の唇がわたしの唇から離れて、心配そうな顔でわたしの顔を覗きこんでいる。
指で、唾液を拭うようにわたしの唇に触る。
至近距離過ぎて、キスをしているときより恥ずかしい。
「お、お兄ちゃん、コンタクトしてるの?お父さんもお母さんも、わたしも視力はいいのに」
あまりにじっと顔を見られて、恥ずかしくて、そんなことを言ってしまった。
兄は、「勉強のし過ぎで悪くなったんだよ。花音はあんまり勉強しなかったのかな」なんて、意地悪を言った。
あの夜以来、兄と、ときどき、大人のキス、をしている。
おやすみのキスは毎晩必ずするけど、口の中に舌を入れるキスは、ときどき、だ。
それは、リビングのソファですることもあるし、兄の部屋ですることもある。
今夜は、リビングで一緒に映画を見ていて、それは、はじまった。
映画を見るときは、部屋を少し暗くする。
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わたしは、横に座る兄の横顔を盗み見ていた。
睫毛が長くて羨ましいな、とか。
顔が小さく見えるのは、首が長いせいかな、とか。
その首筋や、襟ぐりから覗く鎖骨が艶めかしくて、なんだか色っぽい…とか。
見ているだけなのに、胸がどきどきした。
わたしの心臓の音が聞こえてしまったのだろうか。
60インチの液晶画面を向いていた兄が、不意にわたしの方を見たせいで、目があってしまった。
兄は、ふっと、目を細めて甘やかに微笑んで、わたしの頭を片手で引き寄せるように、唇を重ねてきた。
最初はそっと重ねるだけ。
そのあと、わたしの上唇や下唇を、舌で舐めるように。
そして、わたしの口の中を、大きな熱い舌でくすぐるように。
キスの間、兄の手はわたしの髪に触れたり、指で頬に触れたりする。
わたしは、どうやって応えていいかわからない。
ただ、兄に委ねているだけ。
でも、気が付くとわたしの舌も、兄の舌を追いかけるように、兄の口の中に入っていく。
舌と舌を絡めるような激しいキスに夢中になりすぎて、息があがってしまったのだ。
「だいぶ上手くなったけど、花音はまだ、息継ぎが上手に出来ないね」
キスの採点をするようにそんなことを言われて、わたしはちょっとムッとする。
「だって、わたしはお兄ちゃんみたいに、経験豊富じゃありませんから!」
兄は笑いながら、わたしの頭を撫でる。
「いいんだよ、花音はそれで。さあ、もう部屋に戻っておやすみ」
「…うん」
最後にわたしは兄の頬にちゅっと、軽くキスをした。
「お兄ちゃん、おやすみなさい」
「おやすみ」
身体が離れ切るまで、兄とわたしの指は繋がっている。
指先まで離れて「一人」になると、半身を失くしたような寂しい気持ちになった。
離れたくなかった。
もっと側に、もっと近くにいきたい。
でも、これ以上、ここにいたらいけない。
これ以上、兄の側にいたらいけない。
これ以上側にいたら。
きっと、過ちを犯してしまう。
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