18 / 62
第二章≪Kiss≫
8.変身
しおりを挟む
たった一度、深いキスをして以来、おやすみのキスは前と同じように軽く触れるだけのキスだった。
前と同じキス、なのに、それを受け取るわたしの身体は、前とは違った。
兄の唇が自分の唇に触れると、胸がドキドキする。
頭がくらくらする。
苦しいような、切ないような気持ちになって、兄の身体にしがみつきたくなる。
でも、しない。
わたしは、気持ちにブレーキをかけている。
兄の唇が離れて、目を見つめ合っていると、兄もそうなのかなって、感じる。
苦しいのは、切ないのは、わたしだけじゃない。
そう思うと、我慢できた。
でも、求め合う気持ちを止められない日が来ることを、本当はわかっていたのだと思う。
***
寝る前のおやすみの時間にはまだ少し早かった。
学校から、保護者のサインを貰ってくるように言われた書類があることを思い出したわたしは、兄の部屋に行った。
ノックをしても返事がなくて、でも、ドアの下の隙間から明かりがもれていた。
「お兄ちゃん、入っていい?」
わたしはそう言いながら、ドアを開けた。
兄はわたしの部屋には決して入らないけれど、わたしは洗濯物を置きに来るので、何度も入ったことがある。
兄の部屋はシンプルでよく片付いていた。
家具はパソコンの乗ったデスクとオーディオセットが置かれたサイドボードに、ベッドくらい。
あとは大きな安楽椅子があった。
兄の姿は部屋の中になかった。
おかしいな、と思ったら、部屋にあるバスルームから、腰にバスタオルを巻いただけの格好の兄が出てきた。
「花音?」
「ご、ごめん、お兄ちゃん、お風呂入ってたんだ。また、後でくるね!」
「いや、いいよ。どうした?」
「あのね、学校で保護者のサインが必要な書類があって」
「わかった、書いておく」
わたしは兄に書類を手渡した。
兄の顔が見られなくて、下を向いたまま。
だって、上半身裸の男の人を間近で見たことないし、ちらっと見た兄の肩幅が思っていたより広くて、胸も、思っていたよりずっと逞しくて。
兄は着痩せするタイプなのかな。
とにかく、男らしくて、わたしには眩し過ぎた。
「花音、どうかした?」
「ど、どうもしないよ。お兄ちゃん、早く、服着ないと風邪ひいちゃう。お、おやすみ」
ドキドキしているのを悟られたくなくて、わたしは兄の横を通り過ぎて、部屋を出ようとした。
「待って、花音」
兄は、わたしの手首を掴んで自分の方に引き寄せた。
勢いで、兄の裸の胸にぶつかったわたしを、兄は抱きしめた。
「そんな、可愛い顔を見せるなよ」
わたしを抱きしめたまま、兄が言った。
「え?」
「また、キスしたくなる」
兄が言うそのキスは、ただのおやすみのキスじゃないって、わかっている。
そしてわたしもそれを期待してる。
「お兄ちゃん…」
顔をあげると、兄と目があった。
いつもの、優しい眼差しではなかった。
激しくて、熱くて、強い眼差しだった。
わたしは、兄の腕の中で、びくんと、身体を震わせた。
いつもと違う兄の表情が、一瞬、怖かったから。
兄は、なにかを諦めたように、口元を緩めて笑った。
「オレが、怖い?」
わたしは、兄の顔を見上げながら、首を振った。
「花音…」
兄の顔が近づいてきて、わたしはぎゅっと目をつむった。
その瞬間に唇に、熱を感じた。
わたしは、口を開いた。
兄の舌が入ってくるのを待ってるように。
兄の熱くて大きな舌が、わたしの口の中を動き回るのを喜んでいるように。
兄の舌が、わたしの口の中に、ある。
舌で、わたしの舌を舐めるみたいに動く。
それから、わたしの舌を優しく吸う。
唾液が、混ざり合う。
わたしと兄の唾液が。
「…んっ…あ、っ…」
息が、出来ない。
溺れそう。
胸が、苦しい。
でも…気持ちいい。
気持ちいい。
兄の身体からは清涼な水の匂いがした。
唇が一瞬離れて、角度を変えて、また、重なる。
一瞬離れるたびに、不安になる。
もっと、して、って。
やめないでって。
この、キスを…終わらせ…ない…で。
「…ふぅ…ん、…んんっ…」
身体から力が抜けていく。
もうなにも、考えられない。
痺れるような、なにかが、身体の中心を、走った。
目を閉じて、口を開いて、兄に、されるがまま身を預けていたわたしは、不意に下半身に異変を感じた。
咄嗟に、兄の腕の中から抜けだした。
「花音?」
「お、お、おやすみ、お兄ちゃん!」
それだけ言って、急いで自分の部屋に戻った。
キスの最中に、股間が濡れた気がした。
もしかしたら、オシッコを漏らしたのかもしれない。
わたしは大きく息をして、ワンピース型の室内着の裾をたぐって、ショーツを脱いだ。
ショーツの股のところはぐっしょり濡れていたけど、オシッコとは違った。
股の間がじんじんする。熱い。
こんなの初めてだ。
わたしの身体はなにか変わりはじめていた。
前と同じキス、なのに、それを受け取るわたしの身体は、前とは違った。
兄の唇が自分の唇に触れると、胸がドキドキする。
頭がくらくらする。
苦しいような、切ないような気持ちになって、兄の身体にしがみつきたくなる。
でも、しない。
わたしは、気持ちにブレーキをかけている。
兄の唇が離れて、目を見つめ合っていると、兄もそうなのかなって、感じる。
苦しいのは、切ないのは、わたしだけじゃない。
そう思うと、我慢できた。
でも、求め合う気持ちを止められない日が来ることを、本当はわかっていたのだと思う。
***
寝る前のおやすみの時間にはまだ少し早かった。
学校から、保護者のサインを貰ってくるように言われた書類があることを思い出したわたしは、兄の部屋に行った。
ノックをしても返事がなくて、でも、ドアの下の隙間から明かりがもれていた。
「お兄ちゃん、入っていい?」
わたしはそう言いながら、ドアを開けた。
兄はわたしの部屋には決して入らないけれど、わたしは洗濯物を置きに来るので、何度も入ったことがある。
兄の部屋はシンプルでよく片付いていた。
家具はパソコンの乗ったデスクとオーディオセットが置かれたサイドボードに、ベッドくらい。
あとは大きな安楽椅子があった。
兄の姿は部屋の中になかった。
おかしいな、と思ったら、部屋にあるバスルームから、腰にバスタオルを巻いただけの格好の兄が出てきた。
「花音?」
「ご、ごめん、お兄ちゃん、お風呂入ってたんだ。また、後でくるね!」
「いや、いいよ。どうした?」
「あのね、学校で保護者のサインが必要な書類があって」
「わかった、書いておく」
わたしは兄に書類を手渡した。
兄の顔が見られなくて、下を向いたまま。
だって、上半身裸の男の人を間近で見たことないし、ちらっと見た兄の肩幅が思っていたより広くて、胸も、思っていたよりずっと逞しくて。
兄は着痩せするタイプなのかな。
とにかく、男らしくて、わたしには眩し過ぎた。
「花音、どうかした?」
「ど、どうもしないよ。お兄ちゃん、早く、服着ないと風邪ひいちゃう。お、おやすみ」
ドキドキしているのを悟られたくなくて、わたしは兄の横を通り過ぎて、部屋を出ようとした。
「待って、花音」
兄は、わたしの手首を掴んで自分の方に引き寄せた。
勢いで、兄の裸の胸にぶつかったわたしを、兄は抱きしめた。
「そんな、可愛い顔を見せるなよ」
わたしを抱きしめたまま、兄が言った。
「え?」
「また、キスしたくなる」
兄が言うそのキスは、ただのおやすみのキスじゃないって、わかっている。
そしてわたしもそれを期待してる。
「お兄ちゃん…」
顔をあげると、兄と目があった。
いつもの、優しい眼差しではなかった。
激しくて、熱くて、強い眼差しだった。
わたしは、兄の腕の中で、びくんと、身体を震わせた。
いつもと違う兄の表情が、一瞬、怖かったから。
兄は、なにかを諦めたように、口元を緩めて笑った。
「オレが、怖い?」
わたしは、兄の顔を見上げながら、首を振った。
「花音…」
兄の顔が近づいてきて、わたしはぎゅっと目をつむった。
その瞬間に唇に、熱を感じた。
わたしは、口を開いた。
兄の舌が入ってくるのを待ってるように。
兄の熱くて大きな舌が、わたしの口の中を動き回るのを喜んでいるように。
兄の舌が、わたしの口の中に、ある。
舌で、わたしの舌を舐めるみたいに動く。
それから、わたしの舌を優しく吸う。
唾液が、混ざり合う。
わたしと兄の唾液が。
「…んっ…あ、っ…」
息が、出来ない。
溺れそう。
胸が、苦しい。
でも…気持ちいい。
気持ちいい。
兄の身体からは清涼な水の匂いがした。
唇が一瞬離れて、角度を変えて、また、重なる。
一瞬離れるたびに、不安になる。
もっと、して、って。
やめないでって。
この、キスを…終わらせ…ない…で。
「…ふぅ…ん、…んんっ…」
身体から力が抜けていく。
もうなにも、考えられない。
痺れるような、なにかが、身体の中心を、走った。
目を閉じて、口を開いて、兄に、されるがまま身を預けていたわたしは、不意に下半身に異変を感じた。
咄嗟に、兄の腕の中から抜けだした。
「花音?」
「お、お、おやすみ、お兄ちゃん!」
それだけ言って、急いで自分の部屋に戻った。
キスの最中に、股間が濡れた気がした。
もしかしたら、オシッコを漏らしたのかもしれない。
わたしは大きく息をして、ワンピース型の室内着の裾をたぐって、ショーツを脱いだ。
ショーツの股のところはぐっしょり濡れていたけど、オシッコとは違った。
股の間がじんじんする。熱い。
こんなの初めてだ。
わたしの身体はなにか変わりはじめていた。
0
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【R18】今夜、私は義父に抱かれる
umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。
一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。
二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。
【共通】
*中世欧州風ファンタジー。
*立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。
*女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。
*一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。
*ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。
※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25
【完結】堕ちた令嬢
マー子
恋愛
・R18・無理矢理?・監禁×孕ませ
・ハピエン
※レイプや陵辱などの表現があります!苦手な方は御遠慮下さい。
〜ストーリー〜
裕福ではないが、父と母と私の三人平凡で幸せな日々を過ごしていた。
素敵な婚約者もいて、学園を卒業したらすぐに結婚するはずだった。
それなのに、どうしてこんな事になってしまったんだろう⋯?
◇人物の表現が『彼』『彼女』『ヤツ』などで、殆ど名前が出てきません。なるべく表現する人は統一してますが、途中分からなくても多分コイツだろう?と温かい目で見守って下さい。
◇後半やっと彼の目的が分かります。
◇切ないけれど、ハッピーエンドを目指しました。
◇全8話+その後で完結
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
絶倫彼は私を離さない~あぁ、私は貴方の虜で快楽に堕ちる~
一ノ瀬 彩音
恋愛
私の彼氏は絶倫で、毎日愛されていく私は、すっかり彼の虜になってしまうのですが
そんな彼が大好きなのです。
今日も可愛がられている私は、意地悪な彼氏に愛され続けていき、
次第に染め上げられてしまうのですが……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる