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番外編 妃
皇太子妃レイラ
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レイラはジェラルドによって、マクレンジー帝国に連れ去られ、3ヶ月後結婚式という異例の早さで正式な結婚式をすることになった。
デュバル公爵夫妻は娘の後を追うようにマクレンジー帝国に来ていた。
「お父様、お母様。」
公爵夫人とレイラが抱き合うのを、楽しくない思いで見ているのはジェラルドだ。
レイラが国に帰りたい、と言うのではないかと不安だが、帰したりはしない。
「レイラ、ちょっとの間に綺麗になって。」
夫人の言葉にレイラがはにかむ。
「ジェラルドが。」
「まあ、幸せなのね、安心したわ。」
安心していないのはフェルナンデスだ。
「皇太子殿下、婚約は認めましたが、すぐに連れ去るとは短絡すぎます。」
早く公爵夫妻をセルジオ王国に帰したいジェラルドは機嫌が悪い。
レイラをマクレンジー帝国に連れ帰ってから、レイラに嫌がらせが続いているのだ。
レイラから止められているものの、ジェラルドは犯人達を処分したくて仕方ない。
そこに両親の面会がきた、レイラの気が変わるのではないかと不安がつのる。
「公爵、父達が間もなく来ると思います。
母がお会いしたがっていましたから。」
その言葉も終わらぬうちに、侍従が皇帝と皇妃の到着を告げる。
「お兄様、お義姉様、お久しぶりでございます。」
久しぶりというより、フェルナンデスの結婚式以来というのが正しい。
シーリアが兄に挨拶をすると、リヒトールも早く帰したいようだ。
「そんなイヤな顔するなよ、大事な娘なんだから。」
フェルナンデスは慣れたものでびくともしないが、夫人は違うらしい。
フェルナンデス、シーリア、レイラとデュバル公爵家のシルバーブロンドが並ぶ。
「これは、見事というしかないな。」
リヒトールの言葉にジェラルドも認めざるを得ない。
皇妃の姪という後ろ盾がなかったら、レイラへのいじめはもっと過激になっていたかもしれない。
翌日、公爵夫妻は帰って行ったが、事件はその日の午後に起こった。
レイラはサーシャ、シーリアとお茶をしていたのだ。
それは毎日の日課のようになっていて、すでに3人の楽しみになっていた。
毎日、3人の部屋を周り、今日はレイラの部屋でお茶会である。
カタンと小さな物音に気付いたのは侍女だ。
そっと扉を開けると足元に小さな箱があった、もちろん侍女は開けたりしないが、箱の方が開いていたのだ。
扉の僅かな隙間から入ってきたのは蛇だ。
「きゃああああ!」
訓練された侍女によって事なきを得たが、リヒトール、ジェラルドを激怒させるには十分だった。
「ワグナー伯爵家ですね。」
「以前から、娘を婚約者にと打診があったのを放置してあったのだ。」
婚約者など無駄だろう、何故にわからない。
シーリアが蛇に噛まれたかもしれないのだ、リヒトールが自分で処理すると言わんばかりだ。
「他にもありますよ、ネズミの死骸はチェルシー伯爵家かデートル子爵家。」
ジェラルドはレイラからの報告だけでなく警備の報告も受けている。
「最初は僕が女を連れ込んだと思ったようでしたから、レイラに直接嫌味を言った娘もいました。」
リヒトールとジェラルドの会話は報復のためのものだ。
「そこまで分かっていて、何故に潰さない。」
リヒトールが遅いとばかりにジェラルドに聞く。
「レイラが手を出すな、と言うのです。
大人しいだけの娘ではありません、妃教育も受けていますし。」
「そうであったな、セルジオ王国王太子の婚約者であったな。」
「父上と同じです。」
まったくだ、とニヤリと笑うリヒトール。
横で聞いている側近達はすでに名の出た貴族の資料を出して、領地の地図を探している。
ケインズに至っては、取りつぶしの後の手配までしている。
部屋では3人がお茶の続きをしていた、蛇が始末された部屋である、頼もしい限りだ。
「美味しい、これもレイラお義姉様が作られたの?」
「ありがとうございます、サーシャ様。孤児院に持って行くお土産として、お菓子を作り始めたの。」
クッキーを頬張るサーシャにレイラが答えている。
「お兄様激怒しているわよ、もちろんお父様も大事なお母様が危険だったのですもの。」
どうするんだろう、とサーシャが言う。
「手を出さないように、お願いしたの。」
「ええ、お義姉様どうして。」
「女の戦いですもの、私がします。」
あらあら、とシーリアが横で聞いている。
「この部屋までたどり着くには女性でないと警備が通さないはず。
ならば、女の戦いでしょ?」
「お義姉様かっこいい、そんな風には見えなかったわ。後学の為に私も是非教えて。」
サーシャもハリンストン王国に嫁げば、味方はディビットと連れて来た伴の者だけになる。
ディビットを狙う女は巨万といるだろう。
「セルジオ王国でも嫌がらせはあったの。
なんたって、あっちは随分年下の王太子、魔屈だったわよ。」
デュバル公爵家だから手をだせないけど、それでもいろいろあったわ、とレイラが笑いながら言う。
「しかも王太子は子供でしょ、ジェラルドみたいに好いてくれてるわけでもない。
全然頼りにならないもの。」
サーシャがそれで、それで、と話を聞いている。
「それがね、ネズミって簡単に捕まらないのね、あの方達はすごいわ。」
「レイラお義姉様、いったい何するおつもり!?」
それからほどなく、レイラのお披露目の為の園遊会が行われ、茶会の席が設けられていた。
たくさんのテーブルに着飾った令嬢や夫人が席に付き、レイラがテーブルを周っていた。
テーブルは花や菓子でコーディネイトされ、公爵令嬢の手腕を見せていた。
その中でも真ん中に位置するテーブルには若い令嬢が集められていた。
そのテーブルだけ皿には銀の蓋クロッシュがかけられていた。
令嬢達はお互いに顔を見合わせて、青ざめているようである。
レイラに嫌がらせをしていた令嬢が集められていたからだ。
レイラがテーブルに来て微笑むと、
「お待たせしました、ご挨拶するところが多くって。」
まるで何もないかのように穏やかに言う。
「皆さまはご自分が食するから私にプレゼントしてくださったのでしょう。
ご用意しましたので、お召し上がりください。」
さあ、クロッシュをお取りになって、とレイラが言うのを周りのテーブルの客達も興味津津で見ている。
そういえばクロッシュの中からカタカタ皿の揺れる音がする、中で生きている。
令嬢たちは震えあがるばかりだ、自分達は生きている蛇やネズミの死骸や虫をレイラの部屋の前に置いたのだ。
皇太子が連れ込んだ女と思い、遊び女、と罵った者もいる、王宮に連れ込むなどあり得ないのにだ。
「どうされました、鮮度が落ちるのでお早くお召しください。」
レイラの表情はかわいい令嬢のものだ。
「遠慮なさらないで、それとも皇太子妃命令で開けなさい、と言えばいいのかしら。」
令嬢達が震える手でクロッシュの柄の部分に手をかけ、少しあけると。
「きゃあああああ!」
わき目も振らず逃げる者、卒倒する者、泣き崩れる者や意識を失っている令嬢もいる。
うふふ、とレイラが笑って皆に聞こえるように言った。
「貴方がたのプレゼントと同じ物は用意できなかったの、それでいいかしら。」
クロッシュから飛び出してきたのはカエルだった。
私は逃げ出したりしない、クスッとレイラが笑う。
令嬢達のしたことは周知のこととなり、皇太子妃に害意のある家は爵位を取り上げられ没落となる。
もちろん、リヒトールとジェラルドが園遊会程度では許さなかったからである。
急遽行われた結婚式であるが、外国からもたくさんの王族がかけつけ、マクレンジー帝国の国力が窺い知れた。
ジェラルドは隣のレイラに見とれるばかりである。
自分用に仕立てたウェディングドレスを着るレイラは輝くように美しい。
「綺麗だ、永遠の愛を君だけに。」
ジェラルドの言葉はレイラをさらに美しくする。
弱いように見えるがレイラは妃なのだ、貶めることなど許されないし、許しはしない。
デュバル公爵夫妻は娘の後を追うようにマクレンジー帝国に来ていた。
「お父様、お母様。」
公爵夫人とレイラが抱き合うのを、楽しくない思いで見ているのはジェラルドだ。
レイラが国に帰りたい、と言うのではないかと不安だが、帰したりはしない。
「レイラ、ちょっとの間に綺麗になって。」
夫人の言葉にレイラがはにかむ。
「ジェラルドが。」
「まあ、幸せなのね、安心したわ。」
安心していないのはフェルナンデスだ。
「皇太子殿下、婚約は認めましたが、すぐに連れ去るとは短絡すぎます。」
早く公爵夫妻をセルジオ王国に帰したいジェラルドは機嫌が悪い。
レイラをマクレンジー帝国に連れ帰ってから、レイラに嫌がらせが続いているのだ。
レイラから止められているものの、ジェラルドは犯人達を処分したくて仕方ない。
そこに両親の面会がきた、レイラの気が変わるのではないかと不安がつのる。
「公爵、父達が間もなく来ると思います。
母がお会いしたがっていましたから。」
その言葉も終わらぬうちに、侍従が皇帝と皇妃の到着を告げる。
「お兄様、お義姉様、お久しぶりでございます。」
久しぶりというより、フェルナンデスの結婚式以来というのが正しい。
シーリアが兄に挨拶をすると、リヒトールも早く帰したいようだ。
「そんなイヤな顔するなよ、大事な娘なんだから。」
フェルナンデスは慣れたものでびくともしないが、夫人は違うらしい。
フェルナンデス、シーリア、レイラとデュバル公爵家のシルバーブロンドが並ぶ。
「これは、見事というしかないな。」
リヒトールの言葉にジェラルドも認めざるを得ない。
皇妃の姪という後ろ盾がなかったら、レイラへのいじめはもっと過激になっていたかもしれない。
翌日、公爵夫妻は帰って行ったが、事件はその日の午後に起こった。
レイラはサーシャ、シーリアとお茶をしていたのだ。
それは毎日の日課のようになっていて、すでに3人の楽しみになっていた。
毎日、3人の部屋を周り、今日はレイラの部屋でお茶会である。
カタンと小さな物音に気付いたのは侍女だ。
そっと扉を開けると足元に小さな箱があった、もちろん侍女は開けたりしないが、箱の方が開いていたのだ。
扉の僅かな隙間から入ってきたのは蛇だ。
「きゃああああ!」
訓練された侍女によって事なきを得たが、リヒトール、ジェラルドを激怒させるには十分だった。
「ワグナー伯爵家ですね。」
「以前から、娘を婚約者にと打診があったのを放置してあったのだ。」
婚約者など無駄だろう、何故にわからない。
シーリアが蛇に噛まれたかもしれないのだ、リヒトールが自分で処理すると言わんばかりだ。
「他にもありますよ、ネズミの死骸はチェルシー伯爵家かデートル子爵家。」
ジェラルドはレイラからの報告だけでなく警備の報告も受けている。
「最初は僕が女を連れ込んだと思ったようでしたから、レイラに直接嫌味を言った娘もいました。」
リヒトールとジェラルドの会話は報復のためのものだ。
「そこまで分かっていて、何故に潰さない。」
リヒトールが遅いとばかりにジェラルドに聞く。
「レイラが手を出すな、と言うのです。
大人しいだけの娘ではありません、妃教育も受けていますし。」
「そうであったな、セルジオ王国王太子の婚約者であったな。」
「父上と同じです。」
まったくだ、とニヤリと笑うリヒトール。
横で聞いている側近達はすでに名の出た貴族の資料を出して、領地の地図を探している。
ケインズに至っては、取りつぶしの後の手配までしている。
部屋では3人がお茶の続きをしていた、蛇が始末された部屋である、頼もしい限りだ。
「美味しい、これもレイラお義姉様が作られたの?」
「ありがとうございます、サーシャ様。孤児院に持って行くお土産として、お菓子を作り始めたの。」
クッキーを頬張るサーシャにレイラが答えている。
「お兄様激怒しているわよ、もちろんお父様も大事なお母様が危険だったのですもの。」
どうするんだろう、とサーシャが言う。
「手を出さないように、お願いしたの。」
「ええ、お義姉様どうして。」
「女の戦いですもの、私がします。」
あらあら、とシーリアが横で聞いている。
「この部屋までたどり着くには女性でないと警備が通さないはず。
ならば、女の戦いでしょ?」
「お義姉様かっこいい、そんな風には見えなかったわ。後学の為に私も是非教えて。」
サーシャもハリンストン王国に嫁げば、味方はディビットと連れて来た伴の者だけになる。
ディビットを狙う女は巨万といるだろう。
「セルジオ王国でも嫌がらせはあったの。
なんたって、あっちは随分年下の王太子、魔屈だったわよ。」
デュバル公爵家だから手をだせないけど、それでもいろいろあったわ、とレイラが笑いながら言う。
「しかも王太子は子供でしょ、ジェラルドみたいに好いてくれてるわけでもない。
全然頼りにならないもの。」
サーシャがそれで、それで、と話を聞いている。
「それがね、ネズミって簡単に捕まらないのね、あの方達はすごいわ。」
「レイラお義姉様、いったい何するおつもり!?」
それからほどなく、レイラのお披露目の為の園遊会が行われ、茶会の席が設けられていた。
たくさんのテーブルに着飾った令嬢や夫人が席に付き、レイラがテーブルを周っていた。
テーブルは花や菓子でコーディネイトされ、公爵令嬢の手腕を見せていた。
その中でも真ん中に位置するテーブルには若い令嬢が集められていた。
そのテーブルだけ皿には銀の蓋クロッシュがかけられていた。
令嬢達はお互いに顔を見合わせて、青ざめているようである。
レイラに嫌がらせをしていた令嬢が集められていたからだ。
レイラがテーブルに来て微笑むと、
「お待たせしました、ご挨拶するところが多くって。」
まるで何もないかのように穏やかに言う。
「皆さまはご自分が食するから私にプレゼントしてくださったのでしょう。
ご用意しましたので、お召し上がりください。」
さあ、クロッシュをお取りになって、とレイラが言うのを周りのテーブルの客達も興味津津で見ている。
そういえばクロッシュの中からカタカタ皿の揺れる音がする、中で生きている。
令嬢たちは震えあがるばかりだ、自分達は生きている蛇やネズミの死骸や虫をレイラの部屋の前に置いたのだ。
皇太子が連れ込んだ女と思い、遊び女、と罵った者もいる、王宮に連れ込むなどあり得ないのにだ。
「どうされました、鮮度が落ちるのでお早くお召しください。」
レイラの表情はかわいい令嬢のものだ。
「遠慮なさらないで、それとも皇太子妃命令で開けなさい、と言えばいいのかしら。」
令嬢達が震える手でクロッシュの柄の部分に手をかけ、少しあけると。
「きゃあああああ!」
わき目も振らず逃げる者、卒倒する者、泣き崩れる者や意識を失っている令嬢もいる。
うふふ、とレイラが笑って皆に聞こえるように言った。
「貴方がたのプレゼントと同じ物は用意できなかったの、それでいいかしら。」
クロッシュから飛び出してきたのはカエルだった。
私は逃げ出したりしない、クスッとレイラが笑う。
令嬢達のしたことは周知のこととなり、皇太子妃に害意のある家は爵位を取り上げられ没落となる。
もちろん、リヒトールとジェラルドが園遊会程度では許さなかったからである。
急遽行われた結婚式であるが、外国からもたくさんの王族がかけつけ、マクレンジー帝国の国力が窺い知れた。
ジェラルドは隣のレイラに見とれるばかりである。
自分用に仕立てたウェディングドレスを着るレイラは輝くように美しい。
「綺麗だ、永遠の愛を君だけに。」
ジェラルドの言葉はレイラをさらに美しくする。
弱いように見えるがレイラは妃なのだ、貶めることなど許されないし、許しはしない。
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