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番外編 ガサフィ
華燭の典
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「絶対にウェディングドレスが着たい!」
譲らないリデルにガサフィが折れた。
「マクレンジー帝国でお披露目の式をして、極東首長国で結婚式を挙げよう。
それならば、帝国でウェディングドレスを着れるだろう。」
それから2年、とうとう結婚式当日になった。
マクレンジー帝国にガサフィは1週間前から滞在して、もう滅多に会えなくなったディビットと交流している。
次女サーシャの婚約者としてハリンストン国王ディビットが参列する。
まだ王位を簒奪して半年程だ、忙しすぎる状態である。
5日間の帝国滞在をやっとひねり出して来た。
式の翌日サーシャは11歳になる、ディビットがその翌日に予定を入れてないのが恐ろしい、サーシャの部屋に籠るつもりでいるらしい。
帝国でリデルは家族と側近達家族と友人の少人数で結婚式を挙げ、その後ガサフィと極東首長国に移動し、首長国で結婚式をする。
首長国の結婚式にはリヒトールとシーリアのみが出席する。
結婚に合わせ、ガサフィが王位を継ぐ、すでに実務はガサフィが継いでいるので戴冠式ということだ。
戴冠式の後、すぐに結婚式となる。
極東首長国では宗教が違うので、リデルは改宗と同時に結婚式となる。
花嫁衣装は帝国と趣が違うが、王妃の衣装ということで贅を尽くしたドレスである。
マクレンジー帝国では、花嫁の控室に家族が揃っていた。
前もって用意されたシーリア、リデル、サーシャ3人が揃った絵がお披露目されていた。
「リデル、これを持って行きなさい。」
「ありがとうございます。お父様。」
もちろん複製が作られ、シーリアとサーシャが持つことになる。
「父上、絵も素晴らしいが本人達には遠く及びません。」
シスコンジェラルドが感嘆しながら言う。
「リデルの花嫁姿の美しい事といったら、この世の花が全て集まったようです。」
あの番犬にはもったいなさすぎる、絶対大事にしろよ、と心の中で呪いの言葉を吐きながら。
ジェラルドにとってリデルは永遠の憧れだ、生れた時から側にいた女神である。
シーリア、リデル、サーシャ、それぞれが着飾り、リデルはウェディングドレスだ、これ以上の美の共演はないだろう。
やって来たガサフィとディビットも見とれている。
シーリアはリヒトール、リデルはガサフィ、サーシャはディビットに手をひかれ聖堂に向かう。
別れ行く道を歩み始めたお妃さま達。
極東首長国に向かう馬車の中でリデルはガサフィに抱かれて泣いていた。
何度も極東首長国には行ったが、今度は帰り道はない。
ガサフィは好きだが、家族との別れは悲しい。
反対にリデルを抱き締めるガサフィは待ち続けた結婚式がやっとで喜びを隠せない。
「ガサフィのバカー!
嬉しそうにするなんて、ひどい。」
「今度は二人の新しい家族をつくろう、ね、リデル。」
涙目でリデルがガサフィを見上げる。
もうガサフィの理性は風前の灯である、式が終わったら、と頭の中で繰り返している。
同じように、後ろの馬車ではリヒトールが泣くシーリアを抱き締めていた。
「リデルがお嫁に行くと寂しい。」
「そのうち、ジェラルドの妃ができたら、その子を娘にすればいい、ずっと一緒だ。」
ずっと妃など出来なくてもいいと思いながら、リヒトールはシーリアをなだめる。
「ずっと私がいるだろう。」
「そうね、リヒト様がいれば何もいらないわ。」
穏やかな旅は突然の襲撃に終わりを告げる。
極東首長国に入ってすぐに、民衆の襲撃を受けた。
口々に女神様と叫んでいる。
銀の髪と紫の瞳のリデルがやっと自分達の国の者になると、興奮した人々が押し寄せてきたのだ。
どこから集まったのか、数千の人々がリデルの乗った馬車を取り囲む。
彼等に悪意はないが、集団になってやっかいだ。女神を一目見ようと集まったらしい。
ガサフィにとっては宗教を侵略の大義名分にしており、女神は民の希望である。安易な対策をするわけにはいかないが、リデルの安全が最優先である。
警備の兵達も今までと勝手が違い、討伐するわけにもいかない。
マクレンジー兵にとって民衆を蹴散らすなど造作もないことだが、そうも出来ない。
騎乗で付いているスコット・アスドロがリデルの乗った馬車に民衆が触ることを防いでいる。
後ろの馬車にいるリヒトールとシーリアも状況を察していた。
シュバルツ達がリヒトールの馬車に民衆が近づくのを防いでいた。
「リヒト様、私を守ってね。」
そう言うとシーリアが馬車の扉を開けたのだ。
リヒトールが先に馬車を降りるとシーリアの手を取った。
民衆は後ろの馬車から降りてきたシーリアに釘付けになる。
銀の髪、紫の瞳の女神だ。
「道を開けなさい。」
シーリアの声が響く、こんな大声を出したのは初めてだろう。
「私の娘をこの国に与えましょう。
王都に続く聖なる道を開けなさい。」
リデルの馬車から人々が離れ始めた。
扉を開けて降りてきたガサフィに続きリデルが降りた。
「お母様!」
リデルが駆け寄るとシーリアが胸に抱いた。
銀の髪が風になびく様は一つの宗教画のごとくである。
女神信仰の強い国において、女神の降臨であった。
二人の男に守られた母と娘の女神。
駆け寄ろうとするものは兵達に阻止されるが、それ以上に人々がお互いを牽制した。
この地に降りた女神を天に戻すまい、逆鱗に触れる事を恐れたのだ。
シーリアは女神ではないが、母なのだ、娘を守る為に行動する。
人はその姿に女神をみるのだろう。
2台の馬車の後を巡礼者の列のように人々が続く。
それは増え続け、王都に着く頃には数万の大群になっていた。
金糸で縁取られた艶やかな赤い模様織の花嫁衣装は、リデルを美しく飾りあげた。
王となったガサフィに手を取られ、リヒトールとシーリアが見守る中を進む。
リデルの周りから溜息が洩れる、初めてリデルを見る人々の感嘆のため息だ。
王宮のテラスにガサフィとリデルが現れた時には人々の興奮は最高になり、歓声で王都が揺れた。
女神の美しい娘が砂漠の地に降り立ち、皇女リデルは王妃リデルになった。
譲らないリデルにガサフィが折れた。
「マクレンジー帝国でお披露目の式をして、極東首長国で結婚式を挙げよう。
それならば、帝国でウェディングドレスを着れるだろう。」
それから2年、とうとう結婚式当日になった。
マクレンジー帝国にガサフィは1週間前から滞在して、もう滅多に会えなくなったディビットと交流している。
次女サーシャの婚約者としてハリンストン国王ディビットが参列する。
まだ王位を簒奪して半年程だ、忙しすぎる状態である。
5日間の帝国滞在をやっとひねり出して来た。
式の翌日サーシャは11歳になる、ディビットがその翌日に予定を入れてないのが恐ろしい、サーシャの部屋に籠るつもりでいるらしい。
帝国でリデルは家族と側近達家族と友人の少人数で結婚式を挙げ、その後ガサフィと極東首長国に移動し、首長国で結婚式をする。
首長国の結婚式にはリヒトールとシーリアのみが出席する。
結婚に合わせ、ガサフィが王位を継ぐ、すでに実務はガサフィが継いでいるので戴冠式ということだ。
戴冠式の後、すぐに結婚式となる。
極東首長国では宗教が違うので、リデルは改宗と同時に結婚式となる。
花嫁衣装は帝国と趣が違うが、王妃の衣装ということで贅を尽くしたドレスである。
マクレンジー帝国では、花嫁の控室に家族が揃っていた。
前もって用意されたシーリア、リデル、サーシャ3人が揃った絵がお披露目されていた。
「リデル、これを持って行きなさい。」
「ありがとうございます。お父様。」
もちろん複製が作られ、シーリアとサーシャが持つことになる。
「父上、絵も素晴らしいが本人達には遠く及びません。」
シスコンジェラルドが感嘆しながら言う。
「リデルの花嫁姿の美しい事といったら、この世の花が全て集まったようです。」
あの番犬にはもったいなさすぎる、絶対大事にしろよ、と心の中で呪いの言葉を吐きながら。
ジェラルドにとってリデルは永遠の憧れだ、生れた時から側にいた女神である。
シーリア、リデル、サーシャ、それぞれが着飾り、リデルはウェディングドレスだ、これ以上の美の共演はないだろう。
やって来たガサフィとディビットも見とれている。
シーリアはリヒトール、リデルはガサフィ、サーシャはディビットに手をひかれ聖堂に向かう。
別れ行く道を歩み始めたお妃さま達。
極東首長国に向かう馬車の中でリデルはガサフィに抱かれて泣いていた。
何度も極東首長国には行ったが、今度は帰り道はない。
ガサフィは好きだが、家族との別れは悲しい。
反対にリデルを抱き締めるガサフィは待ち続けた結婚式がやっとで喜びを隠せない。
「ガサフィのバカー!
嬉しそうにするなんて、ひどい。」
「今度は二人の新しい家族をつくろう、ね、リデル。」
涙目でリデルがガサフィを見上げる。
もうガサフィの理性は風前の灯である、式が終わったら、と頭の中で繰り返している。
同じように、後ろの馬車ではリヒトールが泣くシーリアを抱き締めていた。
「リデルがお嫁に行くと寂しい。」
「そのうち、ジェラルドの妃ができたら、その子を娘にすればいい、ずっと一緒だ。」
ずっと妃など出来なくてもいいと思いながら、リヒトールはシーリアをなだめる。
「ずっと私がいるだろう。」
「そうね、リヒト様がいれば何もいらないわ。」
穏やかな旅は突然の襲撃に終わりを告げる。
極東首長国に入ってすぐに、民衆の襲撃を受けた。
口々に女神様と叫んでいる。
銀の髪と紫の瞳のリデルがやっと自分達の国の者になると、興奮した人々が押し寄せてきたのだ。
どこから集まったのか、数千の人々がリデルの乗った馬車を取り囲む。
彼等に悪意はないが、集団になってやっかいだ。女神を一目見ようと集まったらしい。
ガサフィにとっては宗教を侵略の大義名分にしており、女神は民の希望である。安易な対策をするわけにはいかないが、リデルの安全が最優先である。
警備の兵達も今までと勝手が違い、討伐するわけにもいかない。
マクレンジー兵にとって民衆を蹴散らすなど造作もないことだが、そうも出来ない。
騎乗で付いているスコット・アスドロがリデルの乗った馬車に民衆が触ることを防いでいる。
後ろの馬車にいるリヒトールとシーリアも状況を察していた。
シュバルツ達がリヒトールの馬車に民衆が近づくのを防いでいた。
「リヒト様、私を守ってね。」
そう言うとシーリアが馬車の扉を開けたのだ。
リヒトールが先に馬車を降りるとシーリアの手を取った。
民衆は後ろの馬車から降りてきたシーリアに釘付けになる。
銀の髪、紫の瞳の女神だ。
「道を開けなさい。」
シーリアの声が響く、こんな大声を出したのは初めてだろう。
「私の娘をこの国に与えましょう。
王都に続く聖なる道を開けなさい。」
リデルの馬車から人々が離れ始めた。
扉を開けて降りてきたガサフィに続きリデルが降りた。
「お母様!」
リデルが駆け寄るとシーリアが胸に抱いた。
銀の髪が風になびく様は一つの宗教画のごとくである。
女神信仰の強い国において、女神の降臨であった。
二人の男に守られた母と娘の女神。
駆け寄ろうとするものは兵達に阻止されるが、それ以上に人々がお互いを牽制した。
この地に降りた女神を天に戻すまい、逆鱗に触れる事を恐れたのだ。
シーリアは女神ではないが、母なのだ、娘を守る為に行動する。
人はその姿に女神をみるのだろう。
2台の馬車の後を巡礼者の列のように人々が続く。
それは増え続け、王都に着く頃には数万の大群になっていた。
金糸で縁取られた艶やかな赤い模様織の花嫁衣装は、リデルを美しく飾りあげた。
王となったガサフィに手を取られ、リヒトールとシーリアが見守る中を進む。
リデルの周りから溜息が洩れる、初めてリデルを見る人々の感嘆のため息だ。
王宮のテラスにガサフィとリデルが現れた時には人々の興奮は最高になり、歓声で王都が揺れた。
女神の美しい娘が砂漠の地に降り立ち、皇女リデルは王妃リデルになった。
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