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本編
ルクティリア帝国の王子
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リヒトールが今までと違う、確証などないが、そんな気がする。
我が国、ルクティリア帝国にリヒトール・マクレンジーが留学してきて、年の近い僕と兄の二人の学友となって以来の付き合いで、リヒトールの側近でいるケインズも学友だ。
そんなこともあり、第1王子の兄スティーブと第2王子の僕カミーユが外交大使に選ばれ、マクレンジー帝国にやって来た。
王子と商人から、王子と皇帝へと立場が逆転した。
昔から、リヒトールは平民の商人とはいえ、ふてぶてしい奴で、僕らが留学国の王子だからと、躊躇う奴ではなかった。僕達に群がる女は多く、みんなで回して遊んでた。当時の僕達には女とはそういう者だった。
今、リヒトールの横には皇妃と呼ばれる女がいる。
とんでもない美貌だ、無表情のリヒトールの横で微笑んでる姿はまるで女神のようにさえ見える。
リヒトールが美貌だけで女を選ぶ男とは思ってなかったが、思い出してみると、リヒトールに女の好みはなかった。気が向けば適当に抱いて、後は僕らに回すか、周りに回すか棄ててお仕舞いだった。
リヒトールが、どこかの王女を抱いたとの話は数知れない。どこの国もマクレンジー商会を取り込みたく、王女を差し出していたが、朝までいたという話もきかない。相変わらず性処理するだけの扱いであるようだった。
それどころか、リヒトールに執心の王女を配下に回した話さえ聞く。
今夜は懇親会なので皇妃も出席しているが、明日の会議ではリヒトールだけだから、いろいろ聞けるだろう。おとなしそうな妃だな、ほとんどしゃべらない。
兄が眼の色変えているのがわかる、ずいぶん気に入ったようだ、それはやばいだろう。
僕が気づくということは、ケインズもリヒトールも気づいてるはずだ、悪い予感がする、気づけよバカ兄。
そして嵐は翌日の会議の時にきた。会議の為にリヒトールが入って来た途端、兄が言ったのだ。
「リヒトール、昨夜待ってたんだぞ、それとも俺が皇妃の部屋に行けばよかったのか、それはどこだ?」
ガターーーン!!!!
兄が吹き飛んだ。
「王子の身分に救われたな、首を切ってるとこだ。」
リヒトールが兄を殴り倒して言った。
「今から、切ってやろう、ケインズ刀を持て。」
「リヒトール様、大事な皇妃様を侮辱されたとはいえ、ここではまずいです。」
こんな怒り心頭なリヒトール見たことない、いつも我関せずであったのに。
鼻血を押さえて侍従に抱き起こされた兄にケインズが、爆弾を落とした。
「スティーブ様、命がおしくば即刻ルクティリア帝国にお帰り下さい。
外交使節が皇妃を侮辱したことで開戦になります。
リヒトール様が長年恋焦がれて手に入れた皇妃様です、何よりも大事な皇妃様を夜這いに寄越せとはよくも言えましたね。
ここよりもルクティリア帝国の方が生き残る可能性はあります。」
「待ってくれ、これは外交使節の総意ではない、第一王子一人の事だ、国民を巻き込まないでくれ。」
僕が間に入ろうとするも止められるものではなかった。
静かにリヒトールが信じられないことを言う。
「国を代表して来たんだろう。
私にとってシーリアは国より重い、取り返しのつく言葉ではない。」
会議室は騒然としているが、慌てているのはルクティリア帝国の外交団だけで、マクレンジー帝国の出席者は誰も止めるものなく当然と受け止めている。
兄はやっと自分の言葉の重さがわかったようだ。たかが女ではなかったことを。
皇妃なのだ、一国の妃を侮辱したのだ、リヒトールでなくてもそうなるだろう。
どこかの国の姫と言われてもおかしくない美貌の妃だ、そうなれば妃の国とマクレンジー帝国の2国に攻められる。
使節団の一人が父王に報告すべく、部屋を飛び出した。それを横目で見ながら、事態の収拾を考える。
「リヒトール、兄が申し訳ない。
今、陛下に報告が走った。兄の首だけで済ませて欲しい。」
兄がぎょっとして、こちらを見たが仕方あるまい、開戦して勝てる相手ではない。
「リヒトール、悪かった、悪かったよ。軽い気持ちだったんだ。」
もう口を開くなバカ兄。
「兄上、即時帰国して、陛下に報告と裁可を仰ぎましょう。」
「開戦は3日後、夜明けとともに進軍する。」
リヒトールの声が響き、会議は始まる前に決別した。
1日の強行軍で帰国した僕達は陛下に報告したが、兄は皇太子だ、おいそれと差し出せない。
父はリヒトールに対して判断があまいようだ、今までのリヒトールの印象が強すぎる。
「マクレンジー帝国に接してる渓谷を差し出そう。」
父もリヒトールが昔のように女を扱ってると思ってる。違う、あの妃は違うんだと言っても信じない。
マクレンジー帝国からは領土譲渡に対する拒否の返事がきた。開戦は避けれない。
そこで、やっとわかったようだ、リヒトールが真剣であると。
夜の海を進軍してきたマクレンジー海軍は、3日目の夜明けとともに我が国の領海内に現れ、大砲を撃った。
その破壊力はとんでもなくて、数発で港町が崩壊した。
住民の多くが被災して、死亡者を含む被害は甚大なものとなった。
父は兄に毒盃を命じ、帝位を退き、渓谷と森林地帯を含む領土を差し出した。
わずか1日で我が国の敗戦が確定したが、この選択肢しかなかった。
僕が帝位を継ぐこととなった。
そしてもう一度、今度は終戦の調印にマクレンジー帝国に来ている。
1週間前は一緒に来ていた兄は、もういない。
「カミーユ様。」
皇妃が話しかけてきた。戦争までしたんだ、彼女が知らない訳がないだろう。
「皇妃として、申し上げることはありません。
ただ、家族をなくした方としてお悔やみ申し上げます。」
あぁ、浅はかな兄だったけど、仲の良い兄だったんだ。兄の治世を僕は支えていくはずだったんだ。
我が国、ルクティリア帝国にリヒトール・マクレンジーが留学してきて、年の近い僕と兄の二人の学友となって以来の付き合いで、リヒトールの側近でいるケインズも学友だ。
そんなこともあり、第1王子の兄スティーブと第2王子の僕カミーユが外交大使に選ばれ、マクレンジー帝国にやって来た。
王子と商人から、王子と皇帝へと立場が逆転した。
昔から、リヒトールは平民の商人とはいえ、ふてぶてしい奴で、僕らが留学国の王子だからと、躊躇う奴ではなかった。僕達に群がる女は多く、みんなで回して遊んでた。当時の僕達には女とはそういう者だった。
今、リヒトールの横には皇妃と呼ばれる女がいる。
とんでもない美貌だ、無表情のリヒトールの横で微笑んでる姿はまるで女神のようにさえ見える。
リヒトールが美貌だけで女を選ぶ男とは思ってなかったが、思い出してみると、リヒトールに女の好みはなかった。気が向けば適当に抱いて、後は僕らに回すか、周りに回すか棄ててお仕舞いだった。
リヒトールが、どこかの王女を抱いたとの話は数知れない。どこの国もマクレンジー商会を取り込みたく、王女を差し出していたが、朝までいたという話もきかない。相変わらず性処理するだけの扱いであるようだった。
それどころか、リヒトールに執心の王女を配下に回した話さえ聞く。
今夜は懇親会なので皇妃も出席しているが、明日の会議ではリヒトールだけだから、いろいろ聞けるだろう。おとなしそうな妃だな、ほとんどしゃべらない。
兄が眼の色変えているのがわかる、ずいぶん気に入ったようだ、それはやばいだろう。
僕が気づくということは、ケインズもリヒトールも気づいてるはずだ、悪い予感がする、気づけよバカ兄。
そして嵐は翌日の会議の時にきた。会議の為にリヒトールが入って来た途端、兄が言ったのだ。
「リヒトール、昨夜待ってたんだぞ、それとも俺が皇妃の部屋に行けばよかったのか、それはどこだ?」
ガターーーン!!!!
兄が吹き飛んだ。
「王子の身分に救われたな、首を切ってるとこだ。」
リヒトールが兄を殴り倒して言った。
「今から、切ってやろう、ケインズ刀を持て。」
「リヒトール様、大事な皇妃様を侮辱されたとはいえ、ここではまずいです。」
こんな怒り心頭なリヒトール見たことない、いつも我関せずであったのに。
鼻血を押さえて侍従に抱き起こされた兄にケインズが、爆弾を落とした。
「スティーブ様、命がおしくば即刻ルクティリア帝国にお帰り下さい。
外交使節が皇妃を侮辱したことで開戦になります。
リヒトール様が長年恋焦がれて手に入れた皇妃様です、何よりも大事な皇妃様を夜這いに寄越せとはよくも言えましたね。
ここよりもルクティリア帝国の方が生き残る可能性はあります。」
「待ってくれ、これは外交使節の総意ではない、第一王子一人の事だ、国民を巻き込まないでくれ。」
僕が間に入ろうとするも止められるものではなかった。
静かにリヒトールが信じられないことを言う。
「国を代表して来たんだろう。
私にとってシーリアは国より重い、取り返しのつく言葉ではない。」
会議室は騒然としているが、慌てているのはルクティリア帝国の外交団だけで、マクレンジー帝国の出席者は誰も止めるものなく当然と受け止めている。
兄はやっと自分の言葉の重さがわかったようだ。たかが女ではなかったことを。
皇妃なのだ、一国の妃を侮辱したのだ、リヒトールでなくてもそうなるだろう。
どこかの国の姫と言われてもおかしくない美貌の妃だ、そうなれば妃の国とマクレンジー帝国の2国に攻められる。
使節団の一人が父王に報告すべく、部屋を飛び出した。それを横目で見ながら、事態の収拾を考える。
「リヒトール、兄が申し訳ない。
今、陛下に報告が走った。兄の首だけで済ませて欲しい。」
兄がぎょっとして、こちらを見たが仕方あるまい、開戦して勝てる相手ではない。
「リヒトール、悪かった、悪かったよ。軽い気持ちだったんだ。」
もう口を開くなバカ兄。
「兄上、即時帰国して、陛下に報告と裁可を仰ぎましょう。」
「開戦は3日後、夜明けとともに進軍する。」
リヒトールの声が響き、会議は始まる前に決別した。
1日の強行軍で帰国した僕達は陛下に報告したが、兄は皇太子だ、おいそれと差し出せない。
父はリヒトールに対して判断があまいようだ、今までのリヒトールの印象が強すぎる。
「マクレンジー帝国に接してる渓谷を差し出そう。」
父もリヒトールが昔のように女を扱ってると思ってる。違う、あの妃は違うんだと言っても信じない。
マクレンジー帝国からは領土譲渡に対する拒否の返事がきた。開戦は避けれない。
そこで、やっとわかったようだ、リヒトールが真剣であると。
夜の海を進軍してきたマクレンジー海軍は、3日目の夜明けとともに我が国の領海内に現れ、大砲を撃った。
その破壊力はとんでもなくて、数発で港町が崩壊した。
住民の多くが被災して、死亡者を含む被害は甚大なものとなった。
父は兄に毒盃を命じ、帝位を退き、渓谷と森林地帯を含む領土を差し出した。
わずか1日で我が国の敗戦が確定したが、この選択肢しかなかった。
僕が帝位を継ぐこととなった。
そしてもう一度、今度は終戦の調印にマクレンジー帝国に来ている。
1週間前は一緒に来ていた兄は、もういない。
「カミーユ様。」
皇妃が話しかけてきた。戦争までしたんだ、彼女が知らない訳がないだろう。
「皇妃として、申し上げることはありません。
ただ、家族をなくした方としてお悔やみ申し上げます。」
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