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都に帰る男

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船に乗り、都へと向かう。
俺は爺の部屋で、エドワードから当時の状況の聞き取りをしていた。

カテリーナ王女も同席している。

「カレンさんには母さんの治療費など援助してもらっていたので、討伐における手柄を彼女のものにするのはちょくちょくとしていました。カテリーナはそれで有名になりたかったみたいです」
「金持ちの家だろ? 十分に有名じゃないのか?」

俺の問いに、エドワードは「そうじゃない」と呟き、説明を続ける。

「彼女の家は有名です。でも彼女が有名なわけじゃなかった。カレンは三女で、長女は有名な歌手、侍女はすごい女優、彼女は有名な家の、有名な姉たちの妹でした」

彼は水を飲み、また話し始める。

「そんな彼女は魔法を使えた。そこは姉たちよりも才能があった。だから先生に弟子入りしたけど、先生の弟子には彼女よりも才能豊かな人が他にいた」
「お前のことだな?」
「俺だけじゃない。そこでも彼女は自己顕示欲を満たされず、承認欲求も満たされず、それでも金で部下を雇ってチームを組めば魔王を倒して有名になれると企んだ」
「でも、いく先々でエドワード殿が手柄を先回りしてとってしまっていたと」

カテリーナの指摘に、エドワードはうなずく。

「俺は報酬が欲しくて、家に仕送りしたいから……そんな時に彼女から持ちかけられたんですよ」
「やはりお前は俺の同胞を殺していたのだ。これは確定だな?」

俺が言うと、彼は神妙な顔でうなずく。

「そこは事実だ。しかし、魔族が人を襲わなければ――」
「お前たちがオレタチノ住みかを破壊したのが始まりだ」

やつの発言を遮った。

可愛いビーグルの姿をしていてもが怒りのうなり声は怖いぞ?

くーくーくー……

カテリーナに撫でられる……。

ともかく、魔族が人を攻撃したのは住みかを奪われたことに始まっている!

「お前らが、宝石が採掘できると川を俺たちから奪い、鉄や銅をとるからと山を奪った。道を通すからと森を切り開き、食べられないほどに魚、鳥をとり、畜産のために環境を激変させ……魔族でも戦おうとするものたちが増えるのは仕方ないことだ」
「だが、環境保護を訴える人間もいるわ」
「王女さんよ。だとしたらそいつは何を食べる? 野菜を食べているから環境に優しいとぼざくなら笑うぞ。野生のものを必要なだけ頂いているのなら認めるがそうではない。農業で栽培したもの、加工したものだろう? それをお前らは五十歩百歩というのではないか?」

俺たち魔物からすれば、人間のやること、いうことは差はあれど同じである。また、恵まれた環境の中で生きるからこそ言える甘い夢想に、殺された同胞が付き合う道理はないのだ。

「爺、王女、エドワード、とにかくカレン・フォルトネラーの件が片付くまでは共闘だ」

それまでは、生かしてやる。

それにしても、カレンという偽勇者は己の欲望を満たすために全世界に嘘をついている。

そこまでふっきれたほうが、逆にあっぱれだと思うが、俺を倒したという物語の嘘は許せん。

ばっちりと、けじめをつけてもらおう。
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