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22 桜並木の攻防2
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蹲る男の後頭部目掛けて天国の拳を振り下ろそうとしたその時、里香さんの悲鳴がした。慌ててその方向を見ると大男が彼女の腕を掴んでいる。それは喫茶店で見た黒タンクトップのスキンヘッド大男だった。
まだ、矛は一回、盾は三回残っている、俺は全力疾走で里香さんのもとへ戻るとそのままの勢いで男に殴りかかろうとしたが、そいつは慌てて彼女を盾にした。
「参った、参った、降参だ。強いねえ、君。このまま俺達を見逃してくれたら彼女には何もしないからさ」
男はヘラヘラ笑いながら里香さんの腕を掴んだままで言った。人質にされた里香さんに怯えた表情はなく、案外冷静な顔でこちらを見ているので、俺も慌てふためかずにいられた。
「兎に角、彼女を放してくれ」
「向こうの二人が逃げ終わってからだ」
大男が倒れた二人組の方を見ながら俺に言った。今なら普通にこいつを一発殴る事も出来そうだが、万が一、里香さんが怪我をするような事態になる事を避けるために我慢した。
二人組の方を見ると、長髪の一人が小刻みに震えながらも、気絶している金髪の男をなんとか起き上がらせようとしているのが判った。
あいつらを待っていたら、日が暮れてしまう。
「おい、あんたも一緒に助けてやった方が良いんじゃないのか? 俺がやっておいて言うのもなんだけど、あのプルプル震えてる奴相当苦しそうだぞ」
俺が大男に言うと、里香さんが吹き出して笑った。
この状況の中、笑えるなんて度胸があるなと感心した瞬間、大男は彼女を俺に目掛けて突き飛ばして逃げた。
彼女を両手で受け止めた後、一度ギュッと抱きしめようか迷ったが、拒絶されると二度と立ち直れそうにないので、止めておいた。
「怪我は無さそうだね。しかしあの状況でもよく落ち着いていられたね」
「ハルくんが冷静だったから、絶対助けてくれると思って。フフ、あれ? ホッとしたら急に怖くなって」
里香さんは震えてしゃがみ込んだ。しゃがみこんだ彼女のつむじを見ていると、あの男を地獄で一発殴りたい衝動に駆られた。
俺の足なら今からでも余裕であの男に追いつく事が出来るだろう。が、里香さんをこのままおいて行くわけにもいかない。それに里香さんのアパートに戻る方向で、やっと気絶から目を覚まし痛みに悶えている金髪とまだ痛みに苦しんでいる長髪がいる。
男達のもとに行き免許証を取り上げた。次に、男達の携帯を取り上げ電話番号を確認して返した。
その間、男達は怯えた眼をしてうめき声も出さずに完全無抵抗を貫いた。余程地獄が身に沁みたのだろう。
結局、彼らの狙いは判らなかったが里香さんを守る事は出来た。それに大男たちから免許証と携帯番号を奪う事にも成功した。
橋を渡り、里香さんのアパートに帰り着くと、最後に念願の彼女と携帯番号を交換した。
長かった、本当に長い道のりだった。やっと、遂に里香さんの携帯番号を手に入れた俺は感無量になった。
「何かあったら電話してよ。直ぐに駆けつけるよ。二十四時間、年中無休だから、ハハハ」
俺は少しおどけて言った。
「何も無かっても、掛けたりして、フフ」
彼女が悪戯っぽく笑った。
瞬間、俺の中にビッグバンが起こった。彼女の笑顔は冷静に見つめるには可愛い過ぎた。危うくその勢いで抱きしめて告白しそうになったが、何とか理性を取り戻し踏みとどまった。ストーカー退治に来たのに痴漢で捕まっている場合ではない。
明日、大学に行く時間に遅れないよう、迎えに来る事を約束して、名残惜しいが笑顔で別れた。
まだ、矛は一回、盾は三回残っている、俺は全力疾走で里香さんのもとへ戻るとそのままの勢いで男に殴りかかろうとしたが、そいつは慌てて彼女を盾にした。
「参った、参った、降参だ。強いねえ、君。このまま俺達を見逃してくれたら彼女には何もしないからさ」
男はヘラヘラ笑いながら里香さんの腕を掴んだままで言った。人質にされた里香さんに怯えた表情はなく、案外冷静な顔でこちらを見ているので、俺も慌てふためかずにいられた。
「兎に角、彼女を放してくれ」
「向こうの二人が逃げ終わってからだ」
大男が倒れた二人組の方を見ながら俺に言った。今なら普通にこいつを一発殴る事も出来そうだが、万が一、里香さんが怪我をするような事態になる事を避けるために我慢した。
二人組の方を見ると、長髪の一人が小刻みに震えながらも、気絶している金髪の男をなんとか起き上がらせようとしているのが判った。
あいつらを待っていたら、日が暮れてしまう。
「おい、あんたも一緒に助けてやった方が良いんじゃないのか? 俺がやっておいて言うのもなんだけど、あのプルプル震えてる奴相当苦しそうだぞ」
俺が大男に言うと、里香さんが吹き出して笑った。
この状況の中、笑えるなんて度胸があるなと感心した瞬間、大男は彼女を俺に目掛けて突き飛ばして逃げた。
彼女を両手で受け止めた後、一度ギュッと抱きしめようか迷ったが、拒絶されると二度と立ち直れそうにないので、止めておいた。
「怪我は無さそうだね。しかしあの状況でもよく落ち着いていられたね」
「ハルくんが冷静だったから、絶対助けてくれると思って。フフ、あれ? ホッとしたら急に怖くなって」
里香さんは震えてしゃがみ込んだ。しゃがみこんだ彼女のつむじを見ていると、あの男を地獄で一発殴りたい衝動に駆られた。
俺の足なら今からでも余裕であの男に追いつく事が出来るだろう。が、里香さんをこのままおいて行くわけにもいかない。それに里香さんのアパートに戻る方向で、やっと気絶から目を覚まし痛みに悶えている金髪とまだ痛みに苦しんでいる長髪がいる。
男達のもとに行き免許証を取り上げた。次に、男達の携帯を取り上げ電話番号を確認して返した。
その間、男達は怯えた眼をしてうめき声も出さずに完全無抵抗を貫いた。余程地獄が身に沁みたのだろう。
結局、彼らの狙いは判らなかったが里香さんを守る事は出来た。それに大男たちから免許証と携帯番号を奪う事にも成功した。
橋を渡り、里香さんのアパートに帰り着くと、最後に念願の彼女と携帯番号を交換した。
長かった、本当に長い道のりだった。やっと、遂に里香さんの携帯番号を手に入れた俺は感無量になった。
「何かあったら電話してよ。直ぐに駆けつけるよ。二十四時間、年中無休だから、ハハハ」
俺は少しおどけて言った。
「何も無かっても、掛けたりして、フフ」
彼女が悪戯っぽく笑った。
瞬間、俺の中にビッグバンが起こった。彼女の笑顔は冷静に見つめるには可愛い過ぎた。危うくその勢いで抱きしめて告白しそうになったが、何とか理性を取り戻し踏みとどまった。ストーカー退治に来たのに痴漢で捕まっている場合ではない。
明日、大学に行く時間に遅れないよう、迎えに来る事を約束して、名残惜しいが笑顔で別れた。
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