僕はストーカー

天音スピカ

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アオイと僕

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アイドルは正義だ―。みんなを虜にしてくれる、天使のような存在。
それが、僕の初恋の相手だった。名前は、「アオイ」。入ったばかりの子で、
ダンスも歌もまだ未熟だけど、何とも言えない魅力があり、そこに魅せられた僕は、
彼女のファンとなったのだった。「こんにちは」まずは軽く会釈する。「こんにちは!」
彼女は笑顔で返す。「初めまして・・」「初めまして!私はここに入ったばかりで、
緊張してて・・。なのでファンの方が応援してくださっているので励みになるんです♪」
アオイは快活に笑う。「これからも頑張ってください」「はい!」一人1分程度の会話。
短い時間だけれど、これはアイドルとファンが直接話せる貴重なものだった。
・・また来よう。僕は胸にそう誓うと、足早に会場を出た。その次の週、そのまた次の週も通い、
ついにはプレゼントもあげた。僕は恋をしていたのである。初恋なもので、どう愛を表現すればよいか
わからなかったが、モノやら金やら彼女に必要なものはできるだけ用意した。気に入ってもらうために―。
ある日、僕はアオイに告白した。服は清潔にして母の香水も借りたし、髪の毛だって整えた。彼女に見合った
彼氏じゃないと駄目だと思ったからだ―。彼女は僕の一生懸命さにひかれ、無事OKをしてくれた。それからは楽しかった。僕みたいなイケメンでもない男がアイドルと付き合えるなんて夢みたいだった。マネージャーにばれないよう撮影が終わった後や時間が余った時、僕らはこそこそと会うのだった。そして、僕らは真の恋人になった―。しかし、とある日の月曜日。アオイの家を出た僕は、目の前のカメラを持った人に写真を撮られた。「ヤバい!ばれたかもしれない・・」けれど言い出せなかった。言ったら愛が壊れそうで。彼女との関係を保ちたくて―。
次の日、やはりニュースには僕が映っていた。ツイッターでは、「熱愛」とあざ笑うものや僕に怒るものや、中にはアオイを責め立てるものがあった。僕は泣きだしたくなった。僕のことならいくらでも言っていいのに彼女まで迷惑をかけてしまうなんて・・。やっぱり僕らは恋人でいたらだめなのか―?すると、彼女から電話がかかってきた。
「・・たっくん?」「・・アオイ!」彼女の声は冷たかった。「ごめん、謝るからもう一度―」「交際やめよう」彼女はぽつりと言った。「・・え?」「そりゃたっくんといるのは楽しかったけど―。もう一度なんてチャンスはない。私はアイドルを続けたい。どんなにたたかれてもね。しばらく、連絡とるのやめるから。いい?」そう言って彼女は消えていった―。その後、彼女は別の俳優と結婚したそうだ。僕はどうかっていうと―諦められるわけがないじゃないか。だって、僕と君は恋人だろ?かつて恋人のしるしとしてあげた指輪。彼女が海に捨てているところを目撃しても、僕はあきらめきれない。だからさ、アオイ。今、君の、―家の押し入れの中にいるよ。僕のモノになるには、ちょっと痛いけど我慢してね。銀色の刃で君の体に刻んで、僕のモノにするから。ね?―アオイ。
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