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第十九章
第二話 お前、その腕はどうした!
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「どうやら来たみたいだな。入ってくれ」
王様が入るように促す。すると、ツーブロックの赤髪の男と、紫色の髪の女が入ってくる。
「げっ、シロウ」
男は俺を見るなり顔を引き攣らせ、視線を逸らす。
「レオ、エリナ」
部屋の中に入って来たのは、赤いバラを結成していた頃、共に行動していたレオとエリナだった。
「親父! これはどう言うことだ! どうしてシロウがいやがる!」
「どうしても何も、今回の戦争はシロウなしでは勝てない。彼の実力は、お前が一番知っているだろう?」
「クッ」
レオは不満気な表情をすると、俺を睨む。
まぁ、レオの人生が落ちぶれ出したのは、ある意味俺が原因でもあるからな。恨まれても当然か。
「レオ、いい加減に過去のことは水に流せ。そして仲直りをしろ」
「わ、わかったよ」
父親には逆らえないのだろう。レオは不機嫌オーラを放ちながら俺に近づく。
「あのときは迷惑をかけた。すまない。お前が許してくれるのなら、過去のことは水に流してくれないか」
レオが手を差し出した。
全く、レオも素直じゃないな。こいつと仲違いをしたままでは、俺たちの戦いにほんの小さな支障が起きてしまう。仕方がないから許すとしよう。
俺も反対の手を出してレオの手を握る。その瞬間、手に痛みが走った。
痛い。こいつ、全然仲直りをする気がないじゃないか。しかもこの力、スキルを使って握力を上げているな。
うーん、ここで俺も魔法を使って反撃してもいいのだけど、それでは精神年齢がこいつと同じになってしまう。
大人なら、ここは寛容であるべきだ。
そんなことを思っていると、レオの表情が変わる。
とても屈辱そうな顔をしており、敗北に満ちた表情をしていた。
どうやら、俺がわざと反撃しないことに気づいたようだな。
「くそう、面白くない。いいか! 戦争になったら、俺がお前よりも多くの敵を倒す! 勝負だ!」
握手を止めると、レオは俺に指を向けて勝負を申し込む。
いや、戦争をするのだから、倒した兵士の数なんかで競おうとするなよ。別に多くの敵兵を倒したやつが英雄になれるわけではないんだぞ。
はぁー、本当にお前は困ったやつだよ。
哀れむ眼差しを送りながらレオの肩に手を置く。
「そんなに敵兵を倒したいのなら、俺が全力でサポートをしてやるよ。お前が活躍してくれるのなら、プルタルコスも喜ぶだろうさ」
「ぐぬぬぬ! くそう! やっぱりお前なんかと仲直りなんかできるか!」
恥辱に塗れた表情をしながら、レオは叫ぶ。
せっかく俺が活躍させてあげようとしているのに、どうしてこいつは機嫌を悪くする?
俺たちの様子を見て、プルタルコスは手を額に置く。
プルタルコス、なんだか済まない。お前が気を利かせてくれたのに、上手く接して上げることができなかった。
「ゴホン。まぁ、とりあえず我が国の主力メンバーは揃った。あとはデンバー王たちが来るのを待つだけなのだが……」
トントン。
王様の言葉を遮るように、再び扉がノックされる。
「噂をしたら何とやらだな。入って来てくれ」
王様が廊下側にいる人物に声をかける。
扉が開かれると、王冠を被った男性と付き人と思われる男性が入ってきた。
「デンバー王、お久しぶりです。そちらの方は?」
「コーウ! お前、その腕はどうしたんだ!」
デンバー王に訊ねると、レオが声を上げて俺の知らない男性に近寄る。
どうやらレオの知り合いのようだな。
「ああ、こいつか? こいつは義手だ。模擬戦でお前に両腕を斬られたあとに作った。こいつは魔力で俺の意思どおり動く。それだけではない。ちょと見てくれ」
注目するようにコーウが言うと、レオは義手を見つめる。
「はあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
気合いを入れているのか、コーウは声高らかに叫ぶ。すると彼の義手から刃が現れた。
「使用する魔力量を上げれば、いくらでも刃を増やすことができる。今は追加で二本生やすことしかできないがな。これで俺は、使い方によっては四刀流だ。この義手があれば、次は俺が勝つだろうよ」
コーウと呼ばれた彼は、俺を見るとゆっくりとこちらに向かってきた。
「お前が英雄シロウか。御前試合のときは会うことができず、申し訳ない。俺の名はコーウだ。よろしく」
「ああ、よろしく」
彼が握手を求めていたので、俺は彼の手を握る。
この男、そこそこ強いな。レオから両腕を斬られたとか言っていたけど、当時のレオは、ミミック型の魔物であるティルヴィングに、肉体を操られていたからな。
多分、今のレオと戦ったら、普通にコーウが勝つんじゃないか?
レオの知り合いだから一応警戒していたけど、彼は軽く握手をするだけに止めた。
「ゴホン。それではメンバーも揃ったことだし、これからセイランに向かうとしよう」
王様が出発することを告げると、俺たちは会議室から出て行く。
王様が入るように促す。すると、ツーブロックの赤髪の男と、紫色の髪の女が入ってくる。
「げっ、シロウ」
男は俺を見るなり顔を引き攣らせ、視線を逸らす。
「レオ、エリナ」
部屋の中に入って来たのは、赤いバラを結成していた頃、共に行動していたレオとエリナだった。
「親父! これはどう言うことだ! どうしてシロウがいやがる!」
「どうしても何も、今回の戦争はシロウなしでは勝てない。彼の実力は、お前が一番知っているだろう?」
「クッ」
レオは不満気な表情をすると、俺を睨む。
まぁ、レオの人生が落ちぶれ出したのは、ある意味俺が原因でもあるからな。恨まれても当然か。
「レオ、いい加減に過去のことは水に流せ。そして仲直りをしろ」
「わ、わかったよ」
父親には逆らえないのだろう。レオは不機嫌オーラを放ちながら俺に近づく。
「あのときは迷惑をかけた。すまない。お前が許してくれるのなら、過去のことは水に流してくれないか」
レオが手を差し出した。
全く、レオも素直じゃないな。こいつと仲違いをしたままでは、俺たちの戦いにほんの小さな支障が起きてしまう。仕方がないから許すとしよう。
俺も反対の手を出してレオの手を握る。その瞬間、手に痛みが走った。
痛い。こいつ、全然仲直りをする気がないじゃないか。しかもこの力、スキルを使って握力を上げているな。
うーん、ここで俺も魔法を使って反撃してもいいのだけど、それでは精神年齢がこいつと同じになってしまう。
大人なら、ここは寛容であるべきだ。
そんなことを思っていると、レオの表情が変わる。
とても屈辱そうな顔をしており、敗北に満ちた表情をしていた。
どうやら、俺がわざと反撃しないことに気づいたようだな。
「くそう、面白くない。いいか! 戦争になったら、俺がお前よりも多くの敵を倒す! 勝負だ!」
握手を止めると、レオは俺に指を向けて勝負を申し込む。
いや、戦争をするのだから、倒した兵士の数なんかで競おうとするなよ。別に多くの敵兵を倒したやつが英雄になれるわけではないんだぞ。
はぁー、本当にお前は困ったやつだよ。
哀れむ眼差しを送りながらレオの肩に手を置く。
「そんなに敵兵を倒したいのなら、俺が全力でサポートをしてやるよ。お前が活躍してくれるのなら、プルタルコスも喜ぶだろうさ」
「ぐぬぬぬ! くそう! やっぱりお前なんかと仲直りなんかできるか!」
恥辱に塗れた表情をしながら、レオは叫ぶ。
せっかく俺が活躍させてあげようとしているのに、どうしてこいつは機嫌を悪くする?
俺たちの様子を見て、プルタルコスは手を額に置く。
プルタルコス、なんだか済まない。お前が気を利かせてくれたのに、上手く接して上げることができなかった。
「ゴホン。まぁ、とりあえず我が国の主力メンバーは揃った。あとはデンバー王たちが来るのを待つだけなのだが……」
トントン。
王様の言葉を遮るように、再び扉がノックされる。
「噂をしたら何とやらだな。入って来てくれ」
王様が廊下側にいる人物に声をかける。
扉が開かれると、王冠を被った男性と付き人と思われる男性が入ってきた。
「デンバー王、お久しぶりです。そちらの方は?」
「コーウ! お前、その腕はどうしたんだ!」
デンバー王に訊ねると、レオが声を上げて俺の知らない男性に近寄る。
どうやらレオの知り合いのようだな。
「ああ、こいつか? こいつは義手だ。模擬戦でお前に両腕を斬られたあとに作った。こいつは魔力で俺の意思どおり動く。それだけではない。ちょと見てくれ」
注目するようにコーウが言うと、レオは義手を見つめる。
「はあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
気合いを入れているのか、コーウは声高らかに叫ぶ。すると彼の義手から刃が現れた。
「使用する魔力量を上げれば、いくらでも刃を増やすことができる。今は追加で二本生やすことしかできないがな。これで俺は、使い方によっては四刀流だ。この義手があれば、次は俺が勝つだろうよ」
コーウと呼ばれた彼は、俺を見るとゆっくりとこちらに向かってきた。
「お前が英雄シロウか。御前試合のときは会うことができず、申し訳ない。俺の名はコーウだ。よろしく」
「ああ、よろしく」
彼が握手を求めていたので、俺は彼の手を握る。
この男、そこそこ強いな。レオから両腕を斬られたとか言っていたけど、当時のレオは、ミミック型の魔物であるティルヴィングに、肉体を操られていたからな。
多分、今のレオと戦ったら、普通にコーウが勝つんじゃないか?
レオの知り合いだから一応警戒していたけど、彼は軽く握手をするだけに止めた。
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