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第十八章
第六話 シロウお兄ちゃん籠絡大作戦
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~ミーリア視点~
わたしことミーリアは、シロウお兄ちゃんの背後から二人組の男が忍び寄り、剣を振り下ろそうとしていることに気付いた。
わたしは必死に声を出して、彼らを止めようとする。でも、どんなに頑張っても声が出せない。
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
彼らは同時に剣を振り下ろす。その瞬間、シロウお兄ちゃんは一瞬で消えてしまった。
「こいつら、君のバーサーカーだったよな?」
背後からシロウお兄ちゃんの声が聞こえてくる。どうやら一瞬で移動したみたい。凄い!
って、シロウお兄ちゃんを褒めている場合じゃない。
声が出せないわたしは、両手を広げてシロウお兄ちゃんを守る体勢をとる。
きっとクレースとヘラは、わたしがシロウお兄ちゃんから何かをされたと勘違いをしているはず。二人はわたしを守ろうとしてくれている。それなら彼を庇いさえすれば、誤解していたことに気づくはず。
お願い。気付いて!
『ぐおおおおおおお』
『があああああああ』
クレースとヘラは剣を鞘に仕舞う。
よかった。どうにか誤解だと言うことに気付いたみたい。
「ありがとう。お陰で無意味な戦いをせずに済んだ」
シロウお兄ちゃんは背後からお礼を言うと、わたしは振り返る。
「ど……し……て……」
「パースペクティブ……喉の部分には異常はないな。となると、恐怖とショックで、精神的ストレスを感じたのか。交感神経が乱れて声が出せなくなっていると考えるしかないな」
シロウお兄ちゃんは、呪文のようなものを唱えると、意味の分からない言葉でぶつぶつと言葉を漏らしています。
「それなら、リラックス効果を高める呪文を試してみるか。スタビライティースピリット」
シロウお兄ちゃんは、再びわたしに魔法をかけました。
「どうだ? 声は出るか? 一応強制的にリラックスをさせたけど」
「え? いきなりそんなことを言われても? あれ? 声が元に戻っている!」
「よかった。君の声が出なくなった原因はストレスだと分かった。だから二つの神経の乱れを整えて、幸せホルモンを分泌させてみたけど、上手くいって安心したよ……って、子どもにこんなことを言っても理解できないよな」
シロウお兄ちゃんの言うとおり、何を言っているのかさっぱり分からない。だけど、出せなくなった声を一瞬で元に戻す魔法を使えるなんて凄すぎる。
女王メイ様が彼を求める理由が、何となくわかったような気がする。
「護衛のバーサーカーも来たみたいだし、君を攫おうとする変態も近づかないだろう。それじゃあ、俺はこれで。交渉が決裂した以上、次の手を打たないといけないからな」
「待って!」
わたしから離れて行こうとするシロウお兄ちゃんを呼び止める。
どうにかして、彼をこの場に留めなければ。
「まだ何か用があるのか?」
「わたしって可愛い?」
って、何を訊いているの! わたし! いくら次の言葉が出なかったからと言って、今日知り合ったばかりの人に訊ねるような内容じゃないでしょうが!
もう、わたしのバカ、バカ、バカ!
「うん、ミーリアは可愛いよ。綺麗なクリーム色の髪はサラサラだし、時々漂ってくる香りが、何だか安心感を与えてくれる。もし、俺に君みたいな妹がいたのなら、きっと自慢の妹だろうな」
シロウお兄ちゃんは、わたしの突拍子な質問にも嫌な顔ひとつしないで答えてくれた。しかも、お世辞ではない。ちゃんとわたしを見て、彼がいいと思ったところをひとつひとつ語ってくれた。
うう、あまりにもピンポイントすぎて、訊いたわたしのほうが恥ずかしくなるよ。膨らみかけている胸がどくどくしている。わたし、どうしちゃったのだろう。
と、とにかく。シロウお兄ちゃんを女王メイ様のところに行きたくなるようにしないと。
わたしの武器っていったい何なの?
わたしはバカなりに頭を使ってみる。すると、先ほどの超不潔男が言っていた言葉を思い出す。
その瞬間、鳥肌が立ってしまったけれど、この際は仕方がない。
「シロウお兄ちゃん!」
「何?」
言うのよ、わたし! 恥ずかしいけれど、きっとこれがわたしの武器に違いないのだから!
「もし、女王メイ様のところに行ってくれるって約束をしてくれるのなら、わたしの脱ぎ立てパンツをあげるから!」
意を決して、シロウお兄ちゃんに告げる。
さっきから心臓がバクバクしている。きっとわたしの顔は真っ赤になっていると思う。
シロウお兄ちゃんはわたしに近づくと、身体をかがめて同じ目線になった。そして肩に触れる。
超不潔男のときとは違い、全然不快感を覚えない。寧ろ触れられているだけで心臓が早くなってくる。
このままわたしは、死んでしまうの? と思いたくなるほどだ。
「ミーリア、君は女王メイの使者として、自分の仕事を成功させようと努力をしている。そこはとても評価できるよ。だけど、自分を犠牲にするようなことはしてはいけない。だから、俺にパンツをあげるから、女王メイのところに来てくれなんてことは、二度と言わないでくれ」
シロウお兄ちゃんは、優しい声音で言います。だけど彼の目は悲しげでした。
シロウお兄ちゃんを悲しませてしまった。そう思うと、胸がチクチク痛みます。
この方法ではダメ、だったらどうすればいいの?
「それじゃあ元気でね。可能な限り戦争を回避するように努力はするけれど、もし戦争になってしまったときは、バーサーカーに守ってもらうんだ。そして遠くに逃げてくれ。君のような小さい子を、戦争に巻き込みたくはないから」
シロウお兄ちゃんがわたしの頭に手を置き、優しい手つきで撫でます。
頭を撫でられたことなんて殆ど記憶にない。頭を撫でられるのって、こんなに気持ちよくって、嬉しいことだったんだ。
わたしの頭を撫で終わると、シロウお兄ちゃんは立ち上がって背を向けます。
このままではシロウお兄ちゃんが行ってしまう。
嫌だ。もっと一緒にいたい。
「えい!」
そう思ったわたしは、咄嗟にシロウお兄ちゃんの腕に抱きつきました。
わたしことミーリアは、シロウお兄ちゃんの背後から二人組の男が忍び寄り、剣を振り下ろそうとしていることに気付いた。
わたしは必死に声を出して、彼らを止めようとする。でも、どんなに頑張っても声が出せない。
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
彼らは同時に剣を振り下ろす。その瞬間、シロウお兄ちゃんは一瞬で消えてしまった。
「こいつら、君のバーサーカーだったよな?」
背後からシロウお兄ちゃんの声が聞こえてくる。どうやら一瞬で移動したみたい。凄い!
って、シロウお兄ちゃんを褒めている場合じゃない。
声が出せないわたしは、両手を広げてシロウお兄ちゃんを守る体勢をとる。
きっとクレースとヘラは、わたしがシロウお兄ちゃんから何かをされたと勘違いをしているはず。二人はわたしを守ろうとしてくれている。それなら彼を庇いさえすれば、誤解していたことに気づくはず。
お願い。気付いて!
『ぐおおおおおおお』
『があああああああ』
クレースとヘラは剣を鞘に仕舞う。
よかった。どうにか誤解だと言うことに気付いたみたい。
「ありがとう。お陰で無意味な戦いをせずに済んだ」
シロウお兄ちゃんは背後からお礼を言うと、わたしは振り返る。
「ど……し……て……」
「パースペクティブ……喉の部分には異常はないな。となると、恐怖とショックで、精神的ストレスを感じたのか。交感神経が乱れて声が出せなくなっていると考えるしかないな」
シロウお兄ちゃんは、呪文のようなものを唱えると、意味の分からない言葉でぶつぶつと言葉を漏らしています。
「それなら、リラックス効果を高める呪文を試してみるか。スタビライティースピリット」
シロウお兄ちゃんは、再びわたしに魔法をかけました。
「どうだ? 声は出るか? 一応強制的にリラックスをさせたけど」
「え? いきなりそんなことを言われても? あれ? 声が元に戻っている!」
「よかった。君の声が出なくなった原因はストレスだと分かった。だから二つの神経の乱れを整えて、幸せホルモンを分泌させてみたけど、上手くいって安心したよ……って、子どもにこんなことを言っても理解できないよな」
シロウお兄ちゃんの言うとおり、何を言っているのかさっぱり分からない。だけど、出せなくなった声を一瞬で元に戻す魔法を使えるなんて凄すぎる。
女王メイ様が彼を求める理由が、何となくわかったような気がする。
「護衛のバーサーカーも来たみたいだし、君を攫おうとする変態も近づかないだろう。それじゃあ、俺はこれで。交渉が決裂した以上、次の手を打たないといけないからな」
「待って!」
わたしから離れて行こうとするシロウお兄ちゃんを呼び止める。
どうにかして、彼をこの場に留めなければ。
「まだ何か用があるのか?」
「わたしって可愛い?」
って、何を訊いているの! わたし! いくら次の言葉が出なかったからと言って、今日知り合ったばかりの人に訊ねるような内容じゃないでしょうが!
もう、わたしのバカ、バカ、バカ!
「うん、ミーリアは可愛いよ。綺麗なクリーム色の髪はサラサラだし、時々漂ってくる香りが、何だか安心感を与えてくれる。もし、俺に君みたいな妹がいたのなら、きっと自慢の妹だろうな」
シロウお兄ちゃんは、わたしの突拍子な質問にも嫌な顔ひとつしないで答えてくれた。しかも、お世辞ではない。ちゃんとわたしを見て、彼がいいと思ったところをひとつひとつ語ってくれた。
うう、あまりにもピンポイントすぎて、訊いたわたしのほうが恥ずかしくなるよ。膨らみかけている胸がどくどくしている。わたし、どうしちゃったのだろう。
と、とにかく。シロウお兄ちゃんを女王メイ様のところに行きたくなるようにしないと。
わたしの武器っていったい何なの?
わたしはバカなりに頭を使ってみる。すると、先ほどの超不潔男が言っていた言葉を思い出す。
その瞬間、鳥肌が立ってしまったけれど、この際は仕方がない。
「シロウお兄ちゃん!」
「何?」
言うのよ、わたし! 恥ずかしいけれど、きっとこれがわたしの武器に違いないのだから!
「もし、女王メイ様のところに行ってくれるって約束をしてくれるのなら、わたしの脱ぎ立てパンツをあげるから!」
意を決して、シロウお兄ちゃんに告げる。
さっきから心臓がバクバクしている。きっとわたしの顔は真っ赤になっていると思う。
シロウお兄ちゃんはわたしに近づくと、身体をかがめて同じ目線になった。そして肩に触れる。
超不潔男のときとは違い、全然不快感を覚えない。寧ろ触れられているだけで心臓が早くなってくる。
このままわたしは、死んでしまうの? と思いたくなるほどだ。
「ミーリア、君は女王メイの使者として、自分の仕事を成功させようと努力をしている。そこはとても評価できるよ。だけど、自分を犠牲にするようなことはしてはいけない。だから、俺にパンツをあげるから、女王メイのところに来てくれなんてことは、二度と言わないでくれ」
シロウお兄ちゃんは、優しい声音で言います。だけど彼の目は悲しげでした。
シロウお兄ちゃんを悲しませてしまった。そう思うと、胸がチクチク痛みます。
この方法ではダメ、だったらどうすればいいの?
「それじゃあ元気でね。可能な限り戦争を回避するように努力はするけれど、もし戦争になってしまったときは、バーサーカーに守ってもらうんだ。そして遠くに逃げてくれ。君のような小さい子を、戦争に巻き込みたくはないから」
シロウお兄ちゃんがわたしの頭に手を置き、優しい手つきで撫でます。
頭を撫でられたことなんて殆ど記憶にない。頭を撫でられるのって、こんなに気持ちよくって、嬉しいことだったんだ。
わたしの頭を撫で終わると、シロウお兄ちゃんは立ち上がって背を向けます。
このままではシロウお兄ちゃんが行ってしまう。
嫌だ。もっと一緒にいたい。
「えい!」
そう思ったわたしは、咄嗟にシロウお兄ちゃんの腕に抱きつきました。
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