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第十八章

第五話 この男、超キモイ

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 ~ミーリア視点~



 わたしことミーリアは、とぼとぼとした足取りで町の中を歩いていた。

 はぁー、どうしよう。どうすればシロウお兄ちゃんを、女王メイ様のところに行きたいと思わせることができるの?

 メッフィーはわたしの武器を使えば、シロウお兄ちゃんを女王メイ様のところに連れていくことができると言っていた。だけどわたしの武器と言えるものは、バーサーカーとなったヘラとクレースに、指示を出して従わせること。

 だけど、シロウお兄ちゃんはとても強い。一瞬にしてわたしの前に現れて、テーブルの破片から守ってくれるなんて芸当、普通の人なら到底できない。

 武力では勝てない。だけど、メッフィーが言う以上は、武力以外でわたしの武器になるものがあるはず。

「わたしの武器っていったい何なの?」

 小さくため息を吐きながら、顔を俯かせて歩く。

「あたっ!」

 足元を見ながら歩いていたせいで、わたしは何かにぶつかってしまった。固くはなかったので、建物ではなく人にでもぶつかってしまったのだろう。

「ごめんなさい」

 直ぐに謝ると、ぶつかった人が振り返る。

 わたしがぶつかった人は、太った男の人だった。髪はボサボサで顔はニキビだらけ、着ている服はボロボロであり、彼からは異臭が漂っていた。

 彼を一言で表現するなら、超不潔男だ。

「だ、大丈夫かい……お、お嬢ちゃん……ハァーハァー」

 超不潔男がわたしを見た瞬間、急に息を荒くした。

「お、お嬢ちゃん、ハァー、ハァー、可愛いいね。迷子かな? ハァー、ハァー」

 続いて男が迷子なのかと訊ねた瞬間、わたしは背筋が寒くなった。

 この男、かなり気持ち悪い。

「ま、迷子だよね……ハァー、ハァー……な、なら……ぼ、ぼくが連れて行ってあげるよ」

「い、いえ……けっこうです」

 彼に断りを入れ、その場から直ぐに逃げようとする。

「ま、待ってよ。え、遠慮することなんてないだろう。ハァー、ハァー」

 足を動かした瞬間、超不潔男は察したようで、逃げられないように腕を掴んできた。

 彼の手は湿っており、手汗がわたしの腕に付着する。その瞬間、腕に鳥肌が立って不快感に包まれた。

 キモイ、キモイ、キモイ。何なのこの男。

「離してよ」

「べ、別にいいじゃないか。君、迷子何だろう。君のお父さんとお母さんを探してあげるよ。そ、その代わりにき、君のパンツをちょうだい。もちろん今履いているものを」

 この男、変態だ!

「離してよ。どうして手を離してくれないの! 私は迷子じゃないし、あなたのお世話になるつもりは全然ないのだから!」

「ツ、ツンデレキター! いい! お兄さん興奮しちゃう! もう……ダメだ。この気持ちを抑えきれない。君はぼくのものだ」

 超不潔男は無理やりわたしを引っ張ると、どこかに連れて行こうとする。

「き、君が悪いのだからね。ハァー、ハァー、君が天使のように可愛いのがいけないんだ。だ、大丈夫だから、痛いことはしないから安心してね」

 この男の言葉、全然信用できない。とにかく、助けを求めないと。

「た……た……!」

 うそ? どうして! 声が出せない。

 魔法を受けた感覚はない。恐怖で声が出せなくなっている。このまま助けを求めることができないの!

 こ、怖い、怖い、怖い。助けてバーサーカー。

「その子から手を離せ! ブレインイリュージョン!」

「痛っ!」

 恐怖を感じていると、どこからか男の人の声が聞こえてきた。その瞬間、超不潔男は私から手を離す。

 彼から離れると男の人が私の前に立った。

 黒髪で長身の男性だった。

「大丈夫か? ケガとかはしていないか?」

 声の出せないわたしは、頷いて男性の問いに答える。

「急に手が痛くなって、手を離してしまった。き、貴様何をした!」

 超不潔男が声を荒げて訪ねると、男性は困った表情をする。

「うーん。別に教えてあげてもいいけど、理解できるかな? まぁいいや。一応教えてあげるよ。人は痛みを感じると、神経を通して脳にその情報が送られる。俺の使った魔法はその逆だ。痛みがあると脳を錯覚させ、その情報を神経に送る。それにより条件反射で手を離してしまったと言うわけだ」

 男性が魔法の説明をしているけれど、わたしには全然理解できなかった。でも、すごい魔法だと言うことは、何となく分かる。

「おのれ! ぼくの天使を返せええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「この子はお前のではないだろうが。まぁ、天使のように可愛いと言うことは認めるけどな。ウォーター」

 男性が呪文を唱えると、水が現れて地面に水溜まりができる。

 超不潔男は突然できた水溜まりの上に足を置き、滑ってその場に転倒してしまう。

「ぐえ!」

 男は身体中泥だらけとなり、汚さが倍増した。

「こんなことは言いたくないけど、お前からは生ゴミ臭い匂いがぷんぷんする。近づかないでくれ」

「お、おのれ、よくもやってくれたな!」

「はぁー、頼むからこれ以上反抗をしないでくれ。面倒臭い。これ以上歯向かうのなら、死んだほうがマシと思うくらいの苦痛を味わうことになるけどいいのか?」

「くそう。覚えておけよおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 超不潔男は涙を流しながら走り去って行きました。

「覚えてほしいのなら、名前くらい言っておけよ」

 男性は苦笑いを浮かべます。

「あ……あ……り……あり……」

 ありがとう。そうお礼を言いたいのに、わたしは声がでません。

 どうにかして声を出そうとすると、彼の後ろから二人組の男が現れました。
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