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第十八章
第三話 よろしい。ならば戦争だ
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「すみません。あなたたちが女王メイからの使者ですね」
最後に降りてきた二人組に、俺は声をかける。
「おやおや? 私たちの素性を知っているとは驚きです。見た感じは、兵士ではなさそうですね?」
声をかけると、男は驚くような素振りを見せずに淡々とした口調で、質問を質問で返してくる。
「はい、俺はチームエグザイルドのリーダーシロウです」
「く、くく、くくくく、あーはははは!」
俺が素性を明かすと、道化の格好をしている男は急に笑い出した。
「ヒヒヒ、久しぶりに笑ってしまいました。連れて来ることになっている本人が、まさか出迎えてくれるとは思ってもいませんでしたよ。これは一本取られましたね」
俺が出迎えたことが、ツボに嵌まってしまったようだ。彼はお腹を抑え、目尻から涙を流している。
バシッ!
しばらく様子を見ていると、俺の後ろで様子を見ていたマリーが鞭を放つ。
鞭のリーチを考えていたのか、ギリギリ彼には当たらなかった。
「いったー! 鼻を掠った!」
訂正しよう。当たらないように見えたが、実際には当たっていたようだ。
「何をしやがる!」
彼女の牽制が、彼の心に火を付けたようだ。道化の男は声音を強め、ドスの効いた低い声で問うてくる。
「シロウを笑った罰ですわ。今回はこれくらいで勘弁してあげますが、次笑ったのなら、海に沈めますわよ」
道化の男は、一度マリーを睨むと深呼吸を始めた。
「スー、ハー、スー、ハー。これはすみませんね。意表を突かれてしまったので、つい感情が抑えきれませんでした」
男は落ち着いたようで、話し方を元に戻す。
「申し遅れました。私はメッフィーと言います。こちらは連れのミーリア」
「よろしく……お願いします」
「よろしく! ミーリアちゃん」
ミーリアと呼ばれた少女が挨拶をすると、クロエが元気な声で挨拶をする。すると、ミーリアは顔を俯かせて視線を逸らした。
「すみませんね。ミーリアは人見知りなところがあるんです」
「いえ、クロエは別に気にしてはいないと思いますよ。それよりも、場所を移して話しましょう」
「おやおや? メイ女王様のところに行く気になったのではないのですか? そう言えば、要求したようにラッピングされていませんね」
「俺は交渉人として来ただけです。場所を用意していますので、俺に付いて来てください」
使者の二人を食堂に連れて行くと、俺たちは対面に座る。
「それでは、交渉を始めましょう。俺たちは戦争をすることを望んではいない。だけど俺も女王メイのところに行く気はない。そもそも、どうして女王メイは俺を要求しているのですか」
彼に問うと、メッフィーは胸の前で腕を組み、両の瞼を閉じる。
「そうですねえ、女王様の趣味としか言いようがないです。彼女は強い男を調教して下僕にする。その過程を楽しむことが女王メイ様の生きがいなのですよ。たまたまあなたの噂を耳にしましたので、あなたに白羽の矢が立ったと言うわけです」
そんなくだらないことで、この国は戦争の危機にさらされているのか。
あまりにも身勝手な理由を聞かされ、テーブルの下で拳を握る。
「まぁ、あなたが断るのであれば、それでもいいです。ですが、その場合はこの国に攻め込み、多くの民が血を流すことになるでしょう。ですが、おすすめはしません。我が国とブリタニアでは兵力に差があります。我々の勝ちは揺るぎません。あなた一人の犠牲で、多くの命が救われることになるのですよ。別に命を取られる訳ではないのです。こちらの要求を呑む方が、死人は出ない」
「俺は戦争をしないし、変態女王のところには行かない!」
強めの口調で答えると、メッフィーはやれやれと言いたげに肩を竦める。
「分かりました。ミーリア、プランBに移行しますよ」
「わかり……ました。来て……バーサーカー」
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
ミーリアがポツリと言葉を漏らした瞬間、天井が破壊されて屈強な体付きの二人の男が現れる。
「シロウが交渉人として来てくれて助かりました。あなたを生け捕りにして、城に連れて行きます」
「やっちゃって……バーサーカー」
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
再びミーリアがポツリと言葉を漏らす。すると、天井から現れた屈強な男たちは雄叫びを上げた。
あの女の子、こいつらのことをバーサーカーと言ったか? だけどなんか変だ。魔物のバーサーカーとは全然違う。理性を失っているが、どう見たって普通の人間だ。
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
二人の男は、帯刀している鞘から剣を抜くと、雄叫びを上げながら切り掛かってくる。
敵の軌道を見極め、少ない動きで躱していく。
攻撃が大振りなお陰で、避けることは容易い。
さてと、どうやってこいつらを鎮めようか。理性を失っている原因を探さないと、こいつらはずっとこのままだ。
「エンハンスドボディー」
肉体強化の呪文を唱え、一番近い男を殴った。
普段使っている肉体強化の呪文。これは攻撃の際に、瞬間的に神経による運動制御の抑制を外し、自分の筋肉の限界に近い力を発揮させている。
鋭い一撃を受けた男は吹き飛ばされ、テーブルを壊しながら壁に激突した。
「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
女の子の悲鳴が聞こえ、声がした方を見る。破壊されたテーブルの破片が、ミーリアに突き刺さろうとしていた。
「スピードスター」
俊敏の魔法を唱え、筋肉の収縮速度を上げた。これにより、素早く走ることができる。
彼女の前に走り、素早くお姫様抱っこをするとその場から離れる。
ミーリアがいた場所を見ると、床には破片が突き刺さっていた。
「大丈夫か」
「あ……はい」
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
彼女にケガはないか尋ねると、もう一人のバーサーカーが俺に斬りかかろうとして来る。
「止めてクレース」
『グオ?』
ミーリアが攻撃を止めるように言うと、男の動きがピタリと止まる。
「お願いします。下ろしてください」
「あ、ああ」
言われたように彼女を下ろすと、ミーリアは店から出て行く。
「ここは一旦出直すとしましょう。ですが、ちゃんと考えておいてください。どちらが犠牲を少なくできるのかをね」
捨て台詞を吐くと、メッフィーも店を出て行く。残ったバーサーカーは、俺の一撃を受けて気を失っている男を抱き抱え、彼を追いかけて行った。
最後に降りてきた二人組に、俺は声をかける。
「おやおや? 私たちの素性を知っているとは驚きです。見た感じは、兵士ではなさそうですね?」
声をかけると、男は驚くような素振りを見せずに淡々とした口調で、質問を質問で返してくる。
「はい、俺はチームエグザイルドのリーダーシロウです」
「く、くく、くくくく、あーはははは!」
俺が素性を明かすと、道化の格好をしている男は急に笑い出した。
「ヒヒヒ、久しぶりに笑ってしまいました。連れて来ることになっている本人が、まさか出迎えてくれるとは思ってもいませんでしたよ。これは一本取られましたね」
俺が出迎えたことが、ツボに嵌まってしまったようだ。彼はお腹を抑え、目尻から涙を流している。
バシッ!
しばらく様子を見ていると、俺の後ろで様子を見ていたマリーが鞭を放つ。
鞭のリーチを考えていたのか、ギリギリ彼には当たらなかった。
「いったー! 鼻を掠った!」
訂正しよう。当たらないように見えたが、実際には当たっていたようだ。
「何をしやがる!」
彼女の牽制が、彼の心に火を付けたようだ。道化の男は声音を強め、ドスの効いた低い声で問うてくる。
「シロウを笑った罰ですわ。今回はこれくらいで勘弁してあげますが、次笑ったのなら、海に沈めますわよ」
道化の男は、一度マリーを睨むと深呼吸を始めた。
「スー、ハー、スー、ハー。これはすみませんね。意表を突かれてしまったので、つい感情が抑えきれませんでした」
男は落ち着いたようで、話し方を元に戻す。
「申し遅れました。私はメッフィーと言います。こちらは連れのミーリア」
「よろしく……お願いします」
「よろしく! ミーリアちゃん」
ミーリアと呼ばれた少女が挨拶をすると、クロエが元気な声で挨拶をする。すると、ミーリアは顔を俯かせて視線を逸らした。
「すみませんね。ミーリアは人見知りなところがあるんです」
「いえ、クロエは別に気にしてはいないと思いますよ。それよりも、場所を移して話しましょう」
「おやおや? メイ女王様のところに行く気になったのではないのですか? そう言えば、要求したようにラッピングされていませんね」
「俺は交渉人として来ただけです。場所を用意していますので、俺に付いて来てください」
使者の二人を食堂に連れて行くと、俺たちは対面に座る。
「それでは、交渉を始めましょう。俺たちは戦争をすることを望んではいない。だけど俺も女王メイのところに行く気はない。そもそも、どうして女王メイは俺を要求しているのですか」
彼に問うと、メッフィーは胸の前で腕を組み、両の瞼を閉じる。
「そうですねえ、女王様の趣味としか言いようがないです。彼女は強い男を調教して下僕にする。その過程を楽しむことが女王メイ様の生きがいなのですよ。たまたまあなたの噂を耳にしましたので、あなたに白羽の矢が立ったと言うわけです」
そんなくだらないことで、この国は戦争の危機にさらされているのか。
あまりにも身勝手な理由を聞かされ、テーブルの下で拳を握る。
「まぁ、あなたが断るのであれば、それでもいいです。ですが、その場合はこの国に攻め込み、多くの民が血を流すことになるでしょう。ですが、おすすめはしません。我が国とブリタニアでは兵力に差があります。我々の勝ちは揺るぎません。あなた一人の犠牲で、多くの命が救われることになるのですよ。別に命を取られる訳ではないのです。こちらの要求を呑む方が、死人は出ない」
「俺は戦争をしないし、変態女王のところには行かない!」
強めの口調で答えると、メッフィーはやれやれと言いたげに肩を竦める。
「分かりました。ミーリア、プランBに移行しますよ」
「わかり……ました。来て……バーサーカー」
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
ミーリアがポツリと言葉を漏らした瞬間、天井が破壊されて屈強な体付きの二人の男が現れる。
「シロウが交渉人として来てくれて助かりました。あなたを生け捕りにして、城に連れて行きます」
「やっちゃって……バーサーカー」
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
再びミーリアがポツリと言葉を漏らす。すると、天井から現れた屈強な男たちは雄叫びを上げた。
あの女の子、こいつらのことをバーサーカーと言ったか? だけどなんか変だ。魔物のバーサーカーとは全然違う。理性を失っているが、どう見たって普通の人間だ。
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
『がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
二人の男は、帯刀している鞘から剣を抜くと、雄叫びを上げながら切り掛かってくる。
敵の軌道を見極め、少ない動きで躱していく。
攻撃が大振りなお陰で、避けることは容易い。
さてと、どうやってこいつらを鎮めようか。理性を失っている原因を探さないと、こいつらはずっとこのままだ。
「エンハンスドボディー」
肉体強化の呪文を唱え、一番近い男を殴った。
普段使っている肉体強化の呪文。これは攻撃の際に、瞬間的に神経による運動制御の抑制を外し、自分の筋肉の限界に近い力を発揮させている。
鋭い一撃を受けた男は吹き飛ばされ、テーブルを壊しながら壁に激突した。
「きゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
女の子の悲鳴が聞こえ、声がした方を見る。破壊されたテーブルの破片が、ミーリアに突き刺さろうとしていた。
「スピードスター」
俊敏の魔法を唱え、筋肉の収縮速度を上げた。これにより、素早く走ることができる。
彼女の前に走り、素早くお姫様抱っこをするとその場から離れる。
ミーリアがいた場所を見ると、床には破片が突き刺さっていた。
「大丈夫か」
「あ……はい」
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
彼女にケガはないか尋ねると、もう一人のバーサーカーが俺に斬りかかろうとして来る。
「止めてクレース」
『グオ?』
ミーリアが攻撃を止めるように言うと、男の動きがピタリと止まる。
「お願いします。下ろしてください」
「あ、ああ」
言われたように彼女を下ろすと、ミーリアは店から出て行く。
「ここは一旦出直すとしましょう。ですが、ちゃんと考えておいてください。どちらが犠牲を少なくできるのかをね」
捨て台詞を吐くと、メッフィーも店を出て行く。残ったバーサーカーは、俺の一撃を受けて気を失っている男を抱き抱え、彼を追いかけて行った。
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