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第十四章

第二話 狙われた宝玉

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 俺はケモノ族の巫女であるスカーヤさんとコヤンさんに、ケモノ族の町に来た理由を話す。

「なるほど、そう言うことでしたか」

「スカーヤ、この人の話しは信じるに値すると思います。現にわたくしたちの身に起きていることが一致しますもの」

「そうですわね。ワタクシもそう思いましたわ。コヤン」

 双子の巫女の会話を聞き、ホッとする。

 よかった。どうにか信じてもらえて。でも、彼女たちの身に起きていることって何だ? 門番たちの態度を見ても、何かトラブルが起きているのは確実だ。

「あのう。宜しければケモノ族の町に何が起きているのか教えてもらえないでしょうか?」

 よければ事情を聞かせてほしいと頼むと、彼女たちは顔を見合わせる。そして無言で頷いた。

「そうですわね。良いでしょう。あなたの目的は宝玉の防衛。ワタクシたちの使命と一致しております」

「わたくしたちに着いて来てください。社に行きますので」

 二人が立ち上がり、彼女たちに続いて俺も立ち上がる。

 彼女たちの住まいから出ると、真正面にある社の前に来た。

「今、コヤンが鍵を開けますので少々お待ちください」

 扉の鍵を開けてもらい、俺たちは社の中に通される。

「社の中はこんな感じになっておりますのね」

「教会とは全然違うね。大人数では入れそうもないよ」

「私たち全員がどうにか入れそうなぐらいだね」

「皆さん、狭いことを理由に、シロウさんと密着しようだなんて考えないでください」

『ワウーン』

 それぞれが感想を漏らす中、俺は正面にある紫色の透き通った水晶に釘付けになる。

 ガーベラが奪ったものと同じだ。やっぱり、ここにもあったんだ。

「皆様はこの水晶について、どれだけご存知でしょうか?」

「ワタクシは代々家に伝えられてある家宝としか聞いておりませんわ」

「私もお父さんが大事にしている物、と言う認識しかないよ」

 俺の代わりにマリーとクロエが答えてくれる。

「そうですか。では、ワタクシたちが知っている範囲で教えましょう。この水晶には、大昔に倒された魔王の魂の欠片が封印されているのです」

「魔王の魂!」

 スカーヤの口から出た言葉に、俺は驚きの声をあげる。

「ええ、人々が魔王軍と戦っていたころ、魔王を倒して封印することに成功した三騎士がおりました」

 俺が驚くと、今度はコヤンが話しの続きを語る。

 どうやら交互に話すようだな。

「三騎士は、それぞれ得意な得物があり、一人は剣の達人、もう一人は弓の達人、そしてもう一人は――」

「槍の達人だね!」

 答えが分かったかのようにクロエが大きめの声音で言う。

「いえ、最後は魔術の達人です」

 スカーヤが正解を言うと、答えを間違えたクロエは赤面して俺の後ろに隠れた。

「あう、勘違いをして恥ずかしいよ」

「いや、普通三騎士なんて言われたら、剣と弓と槍が一番に思い浮かぶって」

 小声で彼女をフォローするも、ほとんど効果はなかったようだ。クロエは俺の後ろに隠れたまま、顔を出そうとはしない。

「それでは話しを戻しましょう。三騎士は魔王の魂を三分割にすると、持っていた宝玉に封じ込め、二度と復活をしないようにそれぞれが厳重に管理をすることになったのです」

「その内の一つがこの社に奉納され、魔術の達人の末裔であるワタクシたちが、管理をして今日まで守っていたというわけです」

「そうだったのですね。お父様からご先祖様のことは何も聞かされてはいなかったのですが、おそらく、ワタクシは剣の達人の末裔」

「私が弓の達人の末裔かぁ。何だか実感がないな」

「親戚になるわたしも、一応剣の達人の末裔に入るのでしょうか?」

 マリーとクロエ、それにエリーザが言葉を漏らす中、拳を強く握る。

 この宝玉だけは絶対に死守しなければならない。あいつらは、既に二つの宝玉を持っている。これが奴らの手に渡ってしまっては、魔王が復活してしまう。

「そして先日、この宝玉を狙って一人の賊が現れました。どうにか町のみんなで守り抜くことができましたが、またいつ来るのかわかりません」

「わかりました。その防衛に俺たちも参加します。すでにあいつらの手には二つの宝玉がある。絶対に死守しなければいけませんので」

「何ですって!」

「それは本当なのですか!」

 既に二つの宝玉が魔族の手に渡っていることを漏らすと、二人は驚いて顔色を変える。

「ごめんなさい。そんなに重要なものだとは知りませんでしたわ」

「知っていたら、もっと必死になって取り返そうとしたのに」

 重要なものを奪われてしまったことを知り、マリーとクロエが罪悪感を覚えたのか、表情が暗くなり、今にも泣き出しそうだ。

 このままでは暗い雰囲気のままだな。とりあえずは今の空気を変えないと。

「大丈夫だって。この町に俺が来たんだ。今度こそ社の宝玉を守り抜いてみせる」

「シロウさんの言うとおりですわ! これまで何度も魔族と戦ってその度に退けて来ましたもの。シロウさんが居れば、余裕で守り抜いてくれますわね」

「シロウの実力は本物だ。先日現れた賊が何者であろうと、簡単に追い払ってくれるさ」

『ワン、ワン、ワン!』

 俺のやろうとしていることを直感的に感じ取ってくれたようだ。エリーザに続いて、ミラーカとキャッツが大丈夫だと落ち込んでいる四人に言う。

「そうですわね。ワタクシのシロウがいるのですもの。賊なんかには負けませんわ」

「そうだよね。シロウさんは私の神様だもの。守ってくれるに決まっている」

 俺たちの言葉に、マリーとクロエは元気付けられた。

「確かにあなたたちの言うとおりですわね」

「まだ諦めるには早い。わたくしたちが全力で守れば良いだけですもの」

 続いてスカーヤさんとコヤンさんが顔上げ、表情を引き締める。

「巫女様大変です!」

 みんなでやる気を引き出している最中、社の中に男のケモノ族が入ってくる。

「どうしたのですか?」

「あの男が現れました! 町の男たちで食い止めていますが、長く持たないかと思います。なので、巫女様たちはお逃げください」

「わかりました。ですが、ケモノ族を代表する巫女たるもの、尻尾を巻いて逃げるわけには行きません。ワタクシも戦いますわ」

「いえ、その男は俺たちに任せてください。スカーヤさんとコヤンさんは、社の中で宝玉の守りをお願いします。みんな行くぞ!」

 仲間たちに声をかけ、俺は町の出入り口の方に走って行く。
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