Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

文字の大きさ
上 下
123 / 191
第十三章

第八話 キャスパーク対キャット

しおりを挟む
 巨大化したキャスパークは、鋭利な牙を剥き出しにしながら俺たちを睨みつける。

 何倍にも大きくなったモフモフの動物を見た瞬間、海で戦ったイカの魔物、スプラッシュスクイッドを思い出す。

「巨大化した動物を見ると、スプラッシュスクイッドを思い出すな」

「んんん~ん。ジルドーレの研究もたまには役に立ちますね。まさか使う日が来ようとは思いませんでした。今度お礼に人食い植物でも送りましょう。さぁ、キャスパーク。あの男を倒しなさい。キャッツは傷つけてはいけませんよ」

『ボォウ、ボォウ、ボォウ』

 キャスパークが叩くように前足を横に振る。その瞬間、キャッツを抱き抱えると後方に跳躍した。

『ワン、ワン、ワワーン!』

 敵の攻撃を回避したタイミングで、キャッツが口を開けて火の玉を出す。

 火球は巨大化したキャスパークに当たったけれど、ダメージを受けていないように見えるな。

「んんん~ん。ムダですよ。巨大化したキャスパークは、小さい火球では苦しみません」

 なるほどなぁ。つまり火球が大きくなれば、ダメージが入ると言うわけか。

「キャッツ、もう一度火球をあいつに放ってくれ」

『ワン!』

 返事をすると、キャッツはもう一度口を開けて火球を放つ。

「エアー」

 魔法を発動させて酸素を送り込み、キャッツの火球を何倍にも大きくさせる。

『ボォウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!』

 大きくなった火球が当たると、キャスパークはバランスを崩してその場に転倒した。

 よし、キャッツの火球を大きくさせれば勝てる。

「キャッツ、火球で文字を作ったときみたいに複数出してくれ」

『ワン!』

 指示に従い、キャッツは口から複数の火球を吐き出す。放出された炎に風を送り、酸素を取り入れて大きく膨れ上げさせる。

「これならどうだ!」

 複数の巨大化した火球をキャスパークに当てると、動物は倒れる。

「んんん~ん。中々の威力ですね。ですが、僕のキャスパークはまだまだ戦えますよ」

 トーマンがニヤリと口角を上げる。転倒した巨大動物は立ち上がり、肢体で大地を踏んだ。

 これでも倒せないか。こうなったら別の方法を考えるしかないな。

 あの動物は巨大化したことで普段以上の力を手に入れている。どうにかして元のサイズに戻すことができれば、この戦いに終止符を打つことができるはずだ。

 俺にはユニークスキル【魔学者】の副産物により得た異世界の知識がある。これを使えば何か突破口が開くはずだ。

 何か、何かないか……あった! これだ!

「セルリワインド」

 魔法を唱えた瞬間、巨大化したキャスパークがみるみる小さくなる。

「そんなバカな!」

 元のサイズに戻る動物を見て、トーマンは驚く。だが、一番驚いていたのは俺自身だ。

 まさか本当に上手くいくとは思わなかった。異世界の知識を利用してオリジナルの魔法を作ってみたが、俺の想像どおりになるとはな。

「あなた、いったい何をしたのですか! いくらジルドーレの研究が欠陥とは言え、巨大化した生物を元に戻すことはできない」

「まぁ、そうだろうな。そのジルドーレと言うやつが何者なのかは知らないが、ここが違うんだ」

 トーマンを見ながら自分の頭を指差す。

「巨大化を別の表現で考えてみたら、成長につながった。成長は細胞の分裂で行われる。だから分裂した細胞を元に戻すように促す魔法をかけてみたんだ。そしたら思ったとおりに元の愛くるしいサイズに戻ったと言うわけだ」

 あの男が理解できているかわからないが、一応説明してあげた。

「んんん~ん! んんん~ん! んんん~ん!」

 俺の説明を受け、屈辱を受けたのだろう。トーマンは唇を噛んで顔を歪める。

「おのれ、おのれ! キャスコは絶対に返してもらう!」

 トーマンは声を荒げながらこちらに近づく。

 怖い顔で近づくなよ。キャッツが怯えたらどうしてくれるんだ。

「グラビティープラス」

「がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 重力の魔法を唱えた瞬間、トーマンはその場で転倒して無様にも地面に這いつくばる。

「動こうとしてもムダだ。今のお前は体重の数倍の重力で大地に吸い寄せられている。指一本動かすことができない」

「くそう。くそう!」

 トーマンはどうにかして身体を動かそうとしている。

「止めておけ、ムリに動かそうとすると、身体のほうがもたないぞ」

 何もしないで大人しくするように言う。

 すると、キャッツが身をよじって俺の腕から抜けるとトーマンに近づいた。

「キャスコ……お前」

 キャッツが近づいたことで彼の表情は和らぐ。しかし、彼は直ぐに驚愕した。

「や、止めなさい! 僕に引っかけるな!」

 キャッツの行動にドン引きしてしまった。

 トーマンの頭の上に登ると、排泄を始めたのだ。

 キャッツよ、いくらトーマンのことが嫌いでも、あれはやりすぎなのではないのか。

 排泄を終えたキャッツは、スッキリした表情で俺のところに戻ってくる。

「トーマン、お前を拘束する」

「なんだこいつ! 臭いぞ」

「誰か、こいつに縄を掛けろ」

 彼との決着が付くと衛兵が駆け寄る。そして身柄を拘束しようとした。だが、異臭を放つトーマンを生理的に嫌悪して、中々捉えようとはしなかった。

 結局彼が捉えられるまで体感で五分はかかったが、どうにか連行されて行った。

「んんん~ん! 絶対にキャスコは返してもらいますよ!」

「無駄口を叩かないでさっさと歩け! 署に着いたらしっかりと話を聞かせてもらうからな」

 遠ざかって行きながら、トーマンは声を荒げる。

 もう、お前とは二度と関わり合いたくない。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う

ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。 そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。 だけどその条件がなかなか厄介だった。 何故ならその条件というのが────

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...