Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十二章

第五話 喧嘩が終わったらもう防衛戦になりました

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「お前、俺を倒しちまうなんてなかなかやるじゃないか! 見直したぞ」

 勝利したその日の夜、俺はベオと酒を飲んでいた。

「なぁ、俺たち一応歪みあっていたんじゃないのか? どうして一緒に酒を飲んでいる」

「まぁ、まぁ、細かいことは気にするな。喧嘩をすれば相手の力量が分かる。俺はお前の実力を認めた。なら、あとは仲直りの飲み会をするだけだ」

 まぁ、ベオが敗北を気にしていないのなら、別にいいのだけどなぁ。

「だけど、まだ俺は完全に敗北したとは思っていないからな。今度はどっちが多くの酒を飲めるか勝負だ! お前に拒否権はないからな。おーい、ねえちゃん。酒の追加だ! 樽ごと持って来い」

 はは、今度は酒で勝負かよ。まぁ、こっちでも負けるつもりはないけれどな。

 俺はベオと盃を交し、一晩飲み合った。





「あー、頭が痛い。ベオのせいで、二日酔いじゃないか」

 翌日、頭を抑えながら、町中を歩く。

 防衛の依頼を受けた以上は、しっかりと仕事をしなければな。取り敢えず町の外壁に沿って警備をするか。

 町の出入り口にたどり着き、今から周辺を巡廻しようとしたときだ。

 土煙が上がり、何かがこちらに近づいて来ていた。

「まさか!」

 目を凝らして遠くを見る。すると仮面を被った部族風の集団が、こちらに向かって猛スピードで走って来ていた。

「やっぱりシャーマン! ライトウォール」

 呪文を唱えて町全体を光の壁で覆う。

 これだけ広範囲の防御壁は初めてだ。おそらく強度は低い。時間稼ぎにしかならないだろうな。

「今の内に襲撃を知らせないと」

 マリーたちなら、俺の魔法を見て気付いてくれるかもしれないけど、ピンポイントで教えないとここに来るまでに時間がかかってしまう。

「エコイングボイス」

 反響魔法を唱えると、大きく息を吸い、声を上げる。

「シロウだ! 現在シャーマンが町の出入り口に向かっている。俺の防御壁で時間を稼いでいるが、応援を頼む」

 声を出すと、音が反響して何度も繰り返される。

 さて、戦闘を開始しますか。

 シャーマンたちは俺に気付くと走るのを止め、一定の距離を置く。そして弓を構えると矢を放ってきた。

 しかし、全ての攻撃は光の壁に阻まれて当たることはない。

「攻撃とはこうするんだ! ウエポンカーニバル&ウエポンアロー!」

 呪文を唱え、複数の得物を防御壁の外に展開させると一斉に放つ。

『ぎゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 敵の多くは剣や槍などが突き刺さり、地面に倒れる。

 それなりの数を倒したはずなのに、全然数が減っていないじゃないか。次々と敵の援軍がやって来やがる。

「シロウ、待たせたな! 援軍に来たぞ! お前ら、自警団の意地を見せやがれ!」

「おおー!」

 ベオが救援にやってくると、彼は部下たちを引き連れてシャーマンたちに突っ込もうとする。

「ベオ待て」

「おおお……ぶへっ」

 彼を制止させようと声をかけるも遅かった。ベオは防御壁に顔面から突っ込み、反動で地面に倒れる。

「こいつはいったい?」

「すまない。シャーマンの進行を食い止めるために防御壁を張っていた。今すぐ解除する」

 町を覆っていた防御壁がなくなると、ベオは飛び出し、シャーマンたちに拳を叩き込む。

「オラ!」

「アニキに続け!」

 自警団の団長であるベオに続き、雪崩れ込むように彼の部下が魔物を攻撃していく。

「シロウ、お待たせしましたわ」

「遅くなってごめんね」

「町の人から回復系のポーションをもらっていたんだ」

「わたしはミラーカさんのレシピを使ってこの回復ポーションを上級のものにしておきますわ」

『ワン、ワン、ワン』

 自警団の活躍を見守っていると、マリーたちが合流した。

「みんな! 相手は強くないけれど、油断するな! 倒しても次々と増援がやってきて切りがない」

「わかりましたわ。皆さん、気合いを入れて行きますわよ」

 マリーが返事をすると、彼女は鞭を振り回す。

 数が多い以上は、俺一人でこいつらを片付けるのは面倒臭い。ここはあの時の魔物の襲撃と同じようにするか。

「エンハンスドボディー、スピードスター、サルコペニア!」

 仲間たちに肉体強化、俊足の魔法をかけ、シャーマンには攻撃力、防御力、素早さがの三つが激減する弱体化の魔法をかける。

 マリーの放った鞭が魔物に当たると、シャーマンは勢いよく吹き飛ばされ、後続を巻き込む。

 数の差は能力で埋めるしかない。一人、一人が超一流の戦士になれば、みんなで無双できるはずだ。

 俺のサポートにより、敵の数はどんどん減って行く。地面には多くの魔物の死体が倒れている状況だ。

 これなら、何とか防衛成功できそうだな。うん? あのシャーマンは何だ? 一人だけ離れたところにいやがる。

 攻めて来ているシャーマンから離れ、一人だけ戦闘に参加していないシャーマンを見つけた。

 やつは握っている杖を掲げると紫色の禍々しい光を放った。

「おい! こいつはいったいどういうことだ!」

「魔物共が生き返りやがった!」

 自警団の人たちが驚きの声を上げた。

 まさか! あのシャーマンはプリーストクラスなのか!

 魔物にも職業が存在する場合がある。その職業に就けば、通常とは違う能力を得ることができるのだ。

 プリーストの場合は、死んだ者を生き返らせたり、傷付いた者を癒したりすることがきる。

「そんな! せっかく倒したのに、生き返ってしまうだなんて」

「これじゃあ倒す意味がないよ! どうしよう!」

「生き返るのならまた倒せばいいさ。私が手駒にする」

 マリーとクロエが戸惑っていると、ミラーカが倒したシャーマンに液体の入った瓶を投げつける。

 すると、シャーマンの肉が爛れて骨だけとなり、ボーンシャーマンとなった。

「これで、私の指揮下に入った。さぁ、同士討ちをしろ……何! どうして私を攻撃する!」

 不思議なことに、ミラーカが骸化させた魔物は、彼女を攻撃してきた。

「ミラーカ危ない! ゼイレゾナンス・バイブレーション」

 音の魔法を発動した瞬間、ボーンシャーマンの骨が砕け、地面に落ちる。

 ボーンシャーマンと同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、骨を疲労破壊させた。

「操る権利を奪われてしまった! これはいったい」

 ミラーカが驚きの声を上げるが、俺は瞬時に気付く。

 敵軍にはネクロマンサークラスのシャーマンもいやがるのか。

 ネクロマンサーの職について居れば、死体や骨を操ることができる。見つけることができないが、きっとどこかにいるのだろう。

 こうなったら、ネクロマンサーなんか関係なく全滅させるだけだ。

「ショック!」

 見えている範囲の魔物に失神魔法をかける。意識を失った魔物たちは、次々と倒れ出した。

 これだけの数を地面に這つくばせれば、ネクロマンサーも巻き込んでいるはず。

「みんな今のうちこいつらを倒していてくれ! 俺は魔物の大量発生の原因を突き止めてくる」

 仲間たちに声をかけ、原因を探るべく、一人で突っ走る。
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