上 下
77 / 191
第九章

第九章 第一話 レオニダスの結末

しおりを挟む
 俺はレオが最初に着てきたローブを掴むと、気を失っている彼の上に被せた。

 魔神木の肉塊が下半身を隠しているが、彼は裸の状態だ。

 彼の恥ずかしい格好をマリーたちに見せるわけにはいかないからな。

 複数の足跡が聞こえ、振り返る。

 マリーたちだけではなく、ブリタニア王やデンバー王たちもこちらに向かっていた。

 デンバー王は一度レオに視線を送り、今度は俺を見る。

 彼と顔を合わせるのは二回目だけど、最初の印象であまりいいイメージは持たなかったんだよな。

 そんなことを思っていると、デンバー王が俺の肩に手を置く。

「さすがブリタニアの英雄と言われるだけのことはある。貴殿には助けられた。先日の非礼を詫びさせてくれ」

 デンバー王は片膝を付いて頭を垂れる。まるで兵士が君主にするかのような振る舞いに、俺は唖然とさせられた。

「デ、デンバー王、どうしたのですか急に? そのようなことをせずに頭を上げてください」

 戸惑ってしまった俺は、急いで立ち上がるように彼に言う。

「いや、こうでもしなければ余の気が済まない。レオの命令とは言え、王の立場を利用して、国民に貴殿を邪険に扱うように命令したのだ」

「それはどういうことですかデンバー王! 愚息が貴方様に失礼なことをしたと言うのですか!」

 俺の代わりにプルタルコスが尋ねる。

 確かに彼の言葉には聞き捨てならないところがある。

 レオがデンバー王に命令を出していた? それはいったいどう言うことなんだ?

「最初余はレオを侮っておった。ブリタニア国出身の者はたいしたことはない。デンバーの戦士に比べれば弱い人間だと思っておった。しかし、我が国で一番強い戦士と戦わせ、レオが勝利した。その時点でデンバー国自体が敗北したのだ。武力で支配された余は、やつに逆らうことができずに言われるままに動くしかなかった」

「なんと、愚かな。このようなことをして申し訳ない。もし、デンバー王が許してくれるのであれば、俺と愚息の首を差し上げよう」

 今度はプルタルコスの言葉に驚かされる。

 いくら身内が悪行の数々を行なっていたとはいえ、プルタルコスが死ぬ必要はないだろう!

「プルタルコス! さすがにそれは言い過ぎだ」

「言い過ぎな訳があるか! 王に恥辱を味合わせたのだぞ! そんなやつに育ててしまった責任が親にはある。子の罪は親の罪だ」

「それは極端すぎるって! デンバー王、俺からお願いがある。彼の処罰は俺に任せてくれないか?」

 感情が昂っていたからか、俺は王様に対して敬語を使うのを忘れていた。

「この国を救ってくれた救世主殿の頼みだ。貴殿の好きにするがいい」

 レオの処遇を決める権利を譲ると言うと、デンバー王は立ち上がる。

 ふぅ、どうにか血みどろな展開にならずにすみそうだ。でも、どうしようか? レオは確かに非道なことをした。だけどその裏には魔族が関与しており、いいように利用されたにすぎない。弱い心に付け込まれた彼にも非があるが、本当の悪は魔族たちだ。

「わかった。ではこうしよう。レオはデンバーに残り、ただ働きで闘技場の修復作業に当たらせる。その後は腐った根性を叩き直すために、プルタルコスがもう一度騎士道というものを叩き込んでくれ。それが親であるプルタルコスの罪滅ぼしだ」

「わかった。謹んでお受けしよう」

 どうやらプルタルコスも納得してくれたようだ。人によっては甘いなんて思うかもしれないけれど、知り合いが死ぬような場面は見たくはないからな。これも俺が優しすぎるのがいけない。

「うーん? 俺はどうしちまったんだ? 途中から記憶が抜けていやがる」

「レオ、目が覚めたか?」

「レオ! お前というやつは、どれだけ親を心配させれば気が済むんだ! この親不孝ものが!」

 目が覚めた彼に視線を向けた瞬間、プルタルコスが飛び出し、レオに拳を叩き込む。

「ぼ、ぼやじ、いっだいどうじだんだ! どうじておべをなぶる?」

 間髪入れずにプルタルコスはレオを殴り続ける。

 状況を理解していない彼は、説明するように言っているのだと思う。だけど、殴られているせいで上手く発音できないのか、聞き取るのが難しい。

「プ、プルタルコス? 気持ちは分からなくもないけど、それぐらいにしてやってくれないか? それ以上やってしまうと死んでしまう」

 サンドバックのように殴られたレオは、痣ができて顔がパンパンに腫れ上がっていた。

「こんな恥知らずな息子はこれぐらいしなければ、自分がした罪の重さを認識できないからな! 既にスパルタ教育は始まっている!」

「あはは」

 彼の言葉に、俺は思わず苦笑いを浮かべる。まぁ、死ななければ俺が回復魔法で治してやればいいか。親子の問題に部外者が首を突っ込むわけにはいかないものな。

「いいか! お前は本来死刑になるところを、シロウが穏便に済ますようにデンバー王に話をしてくれたのだぞ! シロウは命の恩人だ。今後は、シロウのために働き、シロウのために死ぬような心構えができるように、一から教育をし直してやる! わかったのなら返事をしろ!」

「ふ、ふぁい」

 うーん、やっぱりプルタルコスの義理の息子にはなりたくはないな。もし、彼が養子をもらって俺と婚約させようとしてきたのなら、全力で断ろう。









最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...