Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第五章

第五話 これが俺のもう一つのスキル! これならシロウに勝てる! リベンジマッチといこうじゃないか

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 ~レオ視点~



 翌日、俺はエリナと一緒にギルドの前に来ていた。

「あの男、ここで会おうと言っておきながらまだ来やがらねぇ」

 中々現れない男に、俺は次第に苛立ちを覚えていく。

 いったいいつまで待たせる気だ。俺たちがギルドに到着して、そろそろ一時間にならないか。

 胸の前で腕を組みながら、右手人差し指を動かす。

 この俺を待たせやがって。現れたら文句を言ってやる。

「ねぇ、もしかして私たち騙されたとか?」

「騙されただと?」

「だって、これだけ待っても姿を見せないなんておかしいわよ。いくら時間にルーズな人間であっても、一時間も待たせるなんてことはしないわ」

 エリナの言葉に、俺はイラつきを覚える。

 くそう、あの野郎! 俺に変な期待をさせておいて、おちょくって楽しんでいただけなのかよ! 絶対に許さねぇ。

「今度見かけたらあの男をぶん殴ってやる!」

「それは怖いですね。遅刻してしまったのは申し訳ないと思っておりますが、できればそのような感情は抑えてほしいですよ」

 横からあの男の声が聞こえ、顔を向ける。そこには遅刻したのにも関わらず、笑みを浮かべているやつがいた。

「お前! いつまで待たせやがる!」

「すみません。少々準備のほうに手間取ってしまいまして。ここでは話すことができませんので、場所を変えましょう」

 そう告げると、男は俺に背を向けて歩き始めた。

 男の後を歩くと、やつが連れてきた場所はダンジョンだった。

「ここなら、そう簡単には人はやってこないでしょうし、話しをするのであれば最適でしょう」

「おいおい、ダンジョン内で話すのかよ。許可もなく入ってしまえば、罰金が発生してしまうぞ」

「ご心配なく、ギルドで許可はもらっております。依頼の内容はこのダンジョンに住み着いたというゴブリン十体の討伐です」

 既に許可を得ていることを知り、俺は内心ホッとする。さすがに同じてつを踏まないようにしなければならないからな。

「では、ダンジョン内に入るとしますか」

 男が先に入り、俺たちもやつに続く。

「昨夜の話の続きをしましょう。あなたが二重保持者デュアルであることはお伝えしましたが、もうひとつのスキル、それは【強剣依存】強い剣を使用すればそれだけで強くなれると言うものです」

「そんなスキル聞いたことがねぇぞ」

「それはそうでしょう。何せ表には発表されていない、裏社会のスキルなのですから」

 俄かに信じられないが、もし、それが事実であれば、俺が弱いのは、これまで使っていた武器がクソだからと言うことになる。

 確かにこれまで使っていた剣は、親父のおさがりだ。綺麗に手入れはしてあったが、年季は入っている。シロウとの勝負のあとに砕けたが、そのあとに使った剣も、武器屋の安物にすぎない。

 一応俺が強くない理由としては、辻褄が合う。だけどそれだけではまだ信用するに値しない。

「なら、その証拠を見せろよ! 俺の強さが剣に依存するって言うのが本当なら、それ相応の代物を持参しているのだろうな!」

「ええ、もちろんですよ。標的が現れたときにお見せします」

「焦らすんじゃねぇ! さっさと俺に見せやがれ!」

 この男の言っていることが真実なのかを確かめたい一心で、声音を強める。

 俺には時間をムダにできるような立場ではない。詐欺なんかに構っている場合ではないんだ。

「わかりました。そんなに怖い顔をされては、僕はビビッてチビってしまいそうです」

 男は言葉とは裏腹に、全然怖がっていない様子で淡々と言葉を連ねる。そして腰に帯刀させていた剣を、鞘ごと取り出すと俺に手渡した。

「これこそがティルヴィング。現時点で僕の知っている最高の剣です。これを君に譲りましょう」

 ティルヴィングと呼ばれた剣を受け取り、鞘から剣を抜く。その瞬間、俺は言葉を失った。

 なんとも言葉では表しきれないほどの怪しくも美しい刀身に、俺は目を奪われていた。

 こんな武器は今まで見たことがない。この剣は本物だ。武器屋で売っているようなゴミとは段違いであることが伝わってくる。

「どうです? 気に入っていただけましたか?」

 やつの言葉に、口角を上げる。

「ああ、最高のプレゼントだ。これならどんなやつが相手でも、叩きのめるだろう」

 腰に帯刀させていた剣を地面に捨て、代わりにティルヴィングを腰に差す。

「今ので八割はお前の話を信じよう。あとは――」

「ええ、あとはあなたのスキルですよね。それはもうすぐ証明されますよ。ほら、見てください。グッドタイミングです」

 男が前方を指差し、俺は前を見る。そこには討伐対象のゴブリンたちがいた。

「へっ、本当にいいタイミングだなぁ。今直ぐこいつの切れ味を確かめたくってうずうずしていたんだ」

 鞘から剣を抜き、構える。

「痛っ!」

 痛みを覚え、咄嗟に自身の手を見る。十字鍔であるキヨンから、一本の触手のようなものが飛び差し、俺の右手首に突き刺していた。

「な、何なんだこの剣は!」

 思わず叫び声を上げてしまった。

「ちょっと、いったいレオに何をしたのよ!」

「ご安心ください。あれはあくまでも、使用者との強い結びつきを行うために必須なんです。痛いのは最初だけですので、ご安心を」

 男が剣の説明を口にする。

 正直、そういうのは最初に言っておけよ。思わず驚いて声を上げてしまったじゃないか。

 仕様であれば仕方がないことだ。それに剣の一部が手に刺さっているのに、気持ち悪さなどは何も感じない。寧ろ何とも言えない高揚感に包まれている。

「この剣の威力がどんなものなのか、試させてもらうぞ!」

 剣を水平に構え、地を蹴ってゴブリンに接近する。

「食らえ! 一閃突き!」

 技を放った瞬間、気がつくと俺はゴブリンたちを通り過ぎていた。踵を返して後ろを見ると、そこには多くの血を流しながら地面に倒れているゴブリンたちがいた。

 一瞬のできごとであったが、俺の手には、魔物たちを貫いた感触が残っている。

「さすがです。まさかぶっつけ本番でここまでティルヴィングを使いこなすとは思ってもいませんでしたよ」

 男が拍手を送りながら、俺に称賛の言葉を送る。

 やつの言葉に、俺は口角を上げた。

 あの男が言ったことはすべて事実だったのだ。俺が弱かったのは、武器に依存するスキルのせいだった。強い武器さえ手に入れば、俺は最強になれる器だ。

「クハハハハ。俺はこの剣のお陰で強くなった!」

 思わず笑い声が出てしまったが、こればかりは仕方がない。我慢しようにも、この感情は抑えきれないのだから。

「素敵なプレゼントをありがとう。だが、ひとつ腑に落ちない点がある。お前はどうして俺を強くしようと思った? 俺に何をやらせたい?」

 そう、さすがにその件に関しては聞いておかないといけないだろう。さすがに無償というわけにはいかないはず。

「さすがレオ君です。話が早くて助かります。僕のお願いごとはただ一つ。そのティルヴィングでシロウを倒してください。彼には少々計画を邪魔された怨みがあるので」

 男の言葉に、俺は口角を上げる。

 何だ、こいつも俺と同じでシロウに怨みを持つ者なのかよ。そういうことなら俺たちは同じ敵を倒すという同士だ。その願い、聞き入れないと男が廃るというものだ。

「そんなことならお安い御用だ。それに元々、シロウには仕返しをしてやるつもりだったからよう。この力でやつを叩き潰してやる」

「ありがとうございます。さすが僕が見込んだ男だ。では、あとのことは僕に任せてもらおう。必ず戦いの舞台を君に提供してみせる」

「ああ、頼んだぜ」

 俺は男と握手を交わす。

 さぁ、シロウ。首を洗って待っていろ。もう一度リベンジマッチといこうじゃないか。今度は俺が相手をしてやるよ。










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