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第三章
第一話 俺しか頼めない依頼って言ったじゃないか! 何でおっさんと合同で依頼を受けないといけない! まぁ、エルフがいるからよしとしよう。
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「シロウ。今日もお前にお願いしたい依頼があるのだが、引き受けてくれないか」
ギルドの中で本日受ける依頼を見ていると、声をかけられる。
振り返ると、揉み上げと顎髭がつながっているジャンボジュニアの髭を生やした六十代の筋肉マッチョがいた。
彼は魔物の爪で引っかかれたかのような三本の傷がある目で俺を見る。
「どうしたオルテガ? 依頼なら断るぞ」
「そうか、そうか、引き受けてはくれないか。それは困った……って、断るのかよ!」
どうやら彼は、俺が引き受けてくれると思い込んでいたようだ。気持ちのいいぐらいのノリツッコミをしてくれた。
「だってギルドマスターのお前が、直々に俺に依頼を持ってくるってことは、どうせギルドの依頼なのだろう。どうせ報奨金も少ないのだから、やる気が起きない」
「まぁ、待て。確かに前回はお前の期待に応えられないのは悪かった。だけど今回は違う。まずはこの依頼に目を通すだけでもしてくれないか。見もしないで断るのは俺的にはお勧めしない」
「まぁ、目を通すぐらいなら」
オルテガから依頼の紙を受け取り、書かれてある内容を黙読する。
依頼主はオルテガからだ。内容はこう書かれてある。
『最近新しいダンジョンが発見された。その調査をシロウ・オルダーに任せたい。これはここのギルドで最強の冒険者であるシロウにしかできないことだ。頼む、優秀な冒険者シロウ。報酬はダンジョン内で見つかったアイテムすべてだ』
たく、調子のいいことを書きやがって。
「わかったよ。この依頼引き受けてやる。新しいダンジョンって言うのも気になるし」
「そうか、引き受けてくれるか。さすがは俺が見込んだ冒険者だ。と言う訳で、さっそく現地に向ってもらいたい。他の冒険者は既に向かっている。手続きは俺が代わりにしてやろう」
俺の持っている依頼書を奪い取ると、オルテガは受付のほうに向っていた。
「え? 他の冒険者って」
数十分後、俺はマリーと一緒に、新たに発見されたダンジョン付近を歩いていた。
「あれではないですの? ギルドマスターが言っていた他の冒険者って言うのは?」
隣を歩いているマリーが前方を指差す。
新たに発見されたダンジョンの入り口に、数人の人が集まっているのが見えた。
「何がギルドで最強の冒険者である俺にしかできないだよ。あの筋肉マッチョ、俺を依頼に参加させるために調子のいいことしか書きやがらねぇ」
俺は独り言のように言葉を洩らす。
「あら? ギルドマスターは本当のことしか書いていないと思いますわ。シロウはこの町のギルドの中で一番、いえ、全世界で最強の冒険者ですもの。そんなあなたとパーティーを組めて、ワタクシは光栄ですわ」
ここぞとばかりに、マリーは俺の腕に自身の腕を絡めてくる。
また始まった。マリーは俺のスキルを利用するために、隙があればアプローチをかけて、自分のものにしようとしてくる。
本当に困ったものだ。だけど、最初は戸惑ってしまっていたが、最近は慣れてきてしまい、なんとも思わないようになっている。彼女との触れ合いが、俺の中では日常になりつつあるのだろう。
「お、お前がギルドマスターの言っていたシロウ・オルダーだな」
俺たちが近づくのを見て、スキンヘッドの男が腰をかけている石から立ち上がり、こちらにやってくる。
「ああ、そうだ。一番に話しかけてきたと言うことは、あんたがパーティーのリーダーという認識で間違ってはいないか?」
「おう、宜しく」
男が手を差し伸ばしてきた。向けられた手を握り、互いに握手を交わす。
「それにしても、君のパーティーは美女がお仲間とは羨ましい」
スキンヘッドの男がマリーに視線を向けると、羨ましいと言ってきた。
まぁ、一般的な男性の価値観ではそうなってしまうのだろう。
「美少女とパーティーを組めるからと言って、そんなにいいことばかりじゃないぞ。俺に飯を作って無理やり食べさせられるし、風呂に入れば背中を流すと言うし、落ち着いてゆっくりする暇さえない」
小さく溜息を吐き、彼女とパーティーを組むことで、どんな不遇な目に遭っているのかを男に教える。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ羨ましい! どれだけ尽くされていやがる! 俺のパーティーに欲しいぐらいだ!」
俺的には、どんな不遇な目に遭っているのかを知ってもらいたかった。それなのに、なぜか彼は余計に羨ましがる。
どうして彼はあんな態度を取るんだ? マリーがご飯を用意するせいで、自分が食べたいものを食べることができないし、入浴中にも彼女が乱入してくるせいで、ゆっくり入ることができない。
彼女が仲間になったことがきっかけで、俺の自由は殆ど奪われているのだ。
だけど、共感しろと言うほうがムリな話なのかもしれない。
人間は体験することで始めて相手の境遇を理解する。ただ話を聞いただけでは、他人事にしか聞きとれないのだ。
「お前は自覚と言うものがないようだから、そんな風に捉えてしまうのかもしれないけどよう。美少女をメンバーにしているだけで勝ち組なんだ。男の価値は引き連れている女で決まる。もし、入れ替われるものなら入れ替わりたいぐらいだぜ」
男は持論を熱く語る。
そういうものなのだろうか? 俺にはそうは思えない。
彼のパーティーの女性を見てみる。比較してしまうのはよくはないが、マリーと比べると、肌のきめ細かさや髪の質感が彼女よりも劣っていた。
まぁ、マリーは男爵家の娘なのだから、普段から使用している物が違うだろう。同じ土俵に立っていない以上は、比較するのはよくない。
男と話していると、視界の先に大きなリュックを抱えた女性がやって来るのが見えた。
マリーと同じ長い金髪の間から見える尖った耳、そして控えめな胸の特徴を見る限り、エルフのようだ。
見た目の年齢は、俺やマリーとあまり変わらないような気がする。けれど、エルフは肉体の成長が遅いために、実年齢と見た目の年齢が全然違う。
彼女は俺たちのところに来ると、男の服を引っ張る。
「ごめんなさい。準備に遅れました」
まるで今にも消えそうな弱々しい声で彼女は言う。
「おせーんだよ! このクズ! 相方のチームはもう来ているんだぞ! どれだけ待たせたと思っているんだ!」
男は急に態度を変え、エルフの女性に喚き散らした。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
エルフの女性は小さい声で謝る。
「あー! 小さすぎて聞こえねぇーよ! もっとはっきり物事を言いやがれ!」
怒鳴られた女性は、身体を小刻みに震えさせ、目尻には涙を溜めて今にも零れ落ちそうになっていた。
俺は男の肩を掴む。
「おい、その辺にしてやってくれないか。俺たちも少し前に来たばかりだ。そう怒るまでもないだろう」
「おおう、これはすまなかったな。俺の悪い癖だ。イライラするとつい感情的になってしまう。それじゃあ中に入ろうか」
男は他の仲間を引きつれ、先にダンジョンの中に入って行った。
「ありがとうございます。お陰で助かりました」
エルフの女性は軽く会釈をすると、ダンジョン内に入って行く。
「それじゃあ、俺たちも入るとするか」
「ええ、そうしましょう」
相方のパーティーに続き、最後尾に並んでマリーと一緒に中に入った。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。
【感想】は一言コメントや誤字報告でも大丈夫です。気軽に書いていただけると嬉しいです。
何卒宜しくお願いします。
ギルドの中で本日受ける依頼を見ていると、声をかけられる。
振り返ると、揉み上げと顎髭がつながっているジャンボジュニアの髭を生やした六十代の筋肉マッチョがいた。
彼は魔物の爪で引っかかれたかのような三本の傷がある目で俺を見る。
「どうしたオルテガ? 依頼なら断るぞ」
「そうか、そうか、引き受けてはくれないか。それは困った……って、断るのかよ!」
どうやら彼は、俺が引き受けてくれると思い込んでいたようだ。気持ちのいいぐらいのノリツッコミをしてくれた。
「だってギルドマスターのお前が、直々に俺に依頼を持ってくるってことは、どうせギルドの依頼なのだろう。どうせ報奨金も少ないのだから、やる気が起きない」
「まぁ、待て。確かに前回はお前の期待に応えられないのは悪かった。だけど今回は違う。まずはこの依頼に目を通すだけでもしてくれないか。見もしないで断るのは俺的にはお勧めしない」
「まぁ、目を通すぐらいなら」
オルテガから依頼の紙を受け取り、書かれてある内容を黙読する。
依頼主はオルテガからだ。内容はこう書かれてある。
『最近新しいダンジョンが発見された。その調査をシロウ・オルダーに任せたい。これはここのギルドで最強の冒険者であるシロウにしかできないことだ。頼む、優秀な冒険者シロウ。報酬はダンジョン内で見つかったアイテムすべてだ』
たく、調子のいいことを書きやがって。
「わかったよ。この依頼引き受けてやる。新しいダンジョンって言うのも気になるし」
「そうか、引き受けてくれるか。さすがは俺が見込んだ冒険者だ。と言う訳で、さっそく現地に向ってもらいたい。他の冒険者は既に向かっている。手続きは俺が代わりにしてやろう」
俺の持っている依頼書を奪い取ると、オルテガは受付のほうに向っていた。
「え? 他の冒険者って」
数十分後、俺はマリーと一緒に、新たに発見されたダンジョン付近を歩いていた。
「あれではないですの? ギルドマスターが言っていた他の冒険者って言うのは?」
隣を歩いているマリーが前方を指差す。
新たに発見されたダンジョンの入り口に、数人の人が集まっているのが見えた。
「何がギルドで最強の冒険者である俺にしかできないだよ。あの筋肉マッチョ、俺を依頼に参加させるために調子のいいことしか書きやがらねぇ」
俺は独り言のように言葉を洩らす。
「あら? ギルドマスターは本当のことしか書いていないと思いますわ。シロウはこの町のギルドの中で一番、いえ、全世界で最強の冒険者ですもの。そんなあなたとパーティーを組めて、ワタクシは光栄ですわ」
ここぞとばかりに、マリーは俺の腕に自身の腕を絡めてくる。
また始まった。マリーは俺のスキルを利用するために、隙があればアプローチをかけて、自分のものにしようとしてくる。
本当に困ったものだ。だけど、最初は戸惑ってしまっていたが、最近は慣れてきてしまい、なんとも思わないようになっている。彼女との触れ合いが、俺の中では日常になりつつあるのだろう。
「お、お前がギルドマスターの言っていたシロウ・オルダーだな」
俺たちが近づくのを見て、スキンヘッドの男が腰をかけている石から立ち上がり、こちらにやってくる。
「ああ、そうだ。一番に話しかけてきたと言うことは、あんたがパーティーのリーダーという認識で間違ってはいないか?」
「おう、宜しく」
男が手を差し伸ばしてきた。向けられた手を握り、互いに握手を交わす。
「それにしても、君のパーティーは美女がお仲間とは羨ましい」
スキンヘッドの男がマリーに視線を向けると、羨ましいと言ってきた。
まぁ、一般的な男性の価値観ではそうなってしまうのだろう。
「美少女とパーティーを組めるからと言って、そんなにいいことばかりじゃないぞ。俺に飯を作って無理やり食べさせられるし、風呂に入れば背中を流すと言うし、落ち着いてゆっくりする暇さえない」
小さく溜息を吐き、彼女とパーティーを組むことで、どんな不遇な目に遭っているのかを男に教える。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ羨ましい! どれだけ尽くされていやがる! 俺のパーティーに欲しいぐらいだ!」
俺的には、どんな不遇な目に遭っているのかを知ってもらいたかった。それなのに、なぜか彼は余計に羨ましがる。
どうして彼はあんな態度を取るんだ? マリーがご飯を用意するせいで、自分が食べたいものを食べることができないし、入浴中にも彼女が乱入してくるせいで、ゆっくり入ることができない。
彼女が仲間になったことがきっかけで、俺の自由は殆ど奪われているのだ。
だけど、共感しろと言うほうがムリな話なのかもしれない。
人間は体験することで始めて相手の境遇を理解する。ただ話を聞いただけでは、他人事にしか聞きとれないのだ。
「お前は自覚と言うものがないようだから、そんな風に捉えてしまうのかもしれないけどよう。美少女をメンバーにしているだけで勝ち組なんだ。男の価値は引き連れている女で決まる。もし、入れ替われるものなら入れ替わりたいぐらいだぜ」
男は持論を熱く語る。
そういうものなのだろうか? 俺にはそうは思えない。
彼のパーティーの女性を見てみる。比較してしまうのはよくはないが、マリーと比べると、肌のきめ細かさや髪の質感が彼女よりも劣っていた。
まぁ、マリーは男爵家の娘なのだから、普段から使用している物が違うだろう。同じ土俵に立っていない以上は、比較するのはよくない。
男と話していると、視界の先に大きなリュックを抱えた女性がやって来るのが見えた。
マリーと同じ長い金髪の間から見える尖った耳、そして控えめな胸の特徴を見る限り、エルフのようだ。
見た目の年齢は、俺やマリーとあまり変わらないような気がする。けれど、エルフは肉体の成長が遅いために、実年齢と見た目の年齢が全然違う。
彼女は俺たちのところに来ると、男の服を引っ張る。
「ごめんなさい。準備に遅れました」
まるで今にも消えそうな弱々しい声で彼女は言う。
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男は急に態度を変え、エルフの女性に喚き散らした。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
エルフの女性は小さい声で謝る。
「あー! 小さすぎて聞こえねぇーよ! もっとはっきり物事を言いやがれ!」
怒鳴られた女性は、身体を小刻みに震えさせ、目尻には涙を溜めて今にも零れ落ちそうになっていた。
俺は男の肩を掴む。
「おい、その辺にしてやってくれないか。俺たちも少し前に来たばかりだ。そう怒るまでもないだろう」
「おおう、これはすまなかったな。俺の悪い癖だ。イライラするとつい感情的になってしまう。それじゃあ中に入ろうか」
男は他の仲間を引きつれ、先にダンジョンの中に入って行った。
「ありがとうございます。お陰で助かりました」
エルフの女性は軽く会釈をすると、ダンジョン内に入って行く。
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