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第五章

第六話 メイデスからの招待?

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 クリスタウロスを倒した後、俺はマーペとパーぺの念話を盗み聞きするために、パペット人形の中に手を突っ込んだ。

『おい、今何て言った? 途中でお前の声が聞き取りづらくなったのだが?』

『ごめん、兄ちゃん。またテオのやつが、兄ちゃんの居場所を確認したいからって、僕の中に手を突っ込んでさ。もう、びっくりしちゃったよ』

 2体の会話が聞こえてくる。今回も上手く念話を盗聴することができたみたいだ。

『もう1回言うけど、テオのやつがクリスタウロスを倒してしまったよ』

『そうか』

 おや? 思ったよりもマーペのやつは冷静だな。もっと驚くかと思っていたのだが。

『あれ? 予想以上に冷静だね。もっと驚くかと思ったよ』

 俺の心を代弁するかのように、パーペが訊ねる。

『ああ、メイデス様はクリスタウロスが倒されるパターンも考えられてある。そちらのルートに進むだけさ』

『うわー、さすがメイデス様! あらゆる可能性も考えてある何て凄いや。それで、次はどんな、モンスターと戦わせるの?』

『次の指示は待ってくれ。話しが纏り次第にまた連絡する』

 2体の念話を盗み聞きしていたが、そろそろ怪しまれそうだな。この辺でやめておくとするか。

 パーぺから腕を抜いて籠の中に戻すと、念話が終わったようで彼は顔を向けてくる。

『もう、どうして毎回、断りもなしで僕に手を突っ込むのさ! びっくりしてしまうじゃないか』

「悪いな。俺は簡単にモンスターの言葉を信用しない。だから定期的に確認はさせてもらう」

 パーぺから視線を外して籠を持ち上げると、ルナさんとメリュジーナが俺のところに来る。

「テオ君お待たせ」

ご主人様マスター、早くギルドに報告しに行こうよ」

「ああ、そうだな」

 討伐対象のモンスターを倒し、俺たちは来た道を引き返すと町に戻った。

 討伐の証となるモンスターの残骸を提出し、報酬を受け取ると、再びパーぺの誘導に従って町から出ることになる。





 それから数日が経つと、隣町にたどり着いた。

「うーん! ようやく町のある場所にこられたよ! 早く宿を取ってシャワーを浴びたい!」

 町に着くなり、ルナさんが両腕を上げて背筋を伸ばし、シャワーを浴びたいと言って来た。

 ここ数日は水浴びすらしていなかったからな。俺も早く体の汚れを落としたい。

 首を左右に振って宿屋の看板がある建物を探す。

 すると、すれ違う町民たちがチラリと俺たちを見ると、無言でそのまま歩き去った。

「ねぇ、ご主人様マスター、さっきからわたしたち、町の人から見られていない?」

「やっぱりメリュジーナもそう思ったか。直ぐに視線は逸らされているからあんまり気にしないようにしていたけど」

「テ、テオ君」

 メリュジーナと町民の視線について話していると、ルナさんが俺の腕を引っ張ってくる。

「ルナさん、どうした?」

「あ、あのね。自意識過剰だと思われるかもしれないけど、町の人、私を見ているような気がするの」

 町民がルナさんを見ている?

「分かった。確かめよう。悪いけど、少しだけ先を歩いてくれないか?」

「う、うん。分かった」

 先を歩くように促すと、ルナさんは不安そうな顔をしながら道を歩く。

 俺はその場で立ち止まり、すれ違う町民を観察する。

 確かにルナさんの言う通りだ。俺やメリュジーナには目もくれないが、ルナさんにだけ視線を向けられている。

「ルナばかり見られているね。彼女の自意識過剰ではなかったみたいだよ」

「ああ、なぜかルナさんばかりが見られている。これは何かありそうだな。ルナさん! 戻って来てくれ」

 引き返して来るように言うと、ルナさんは急いでこちらに走って来た。そして俺の腕に自身の腕を絡ませてくる。

「テオ君、私この町怖い」

「だ、大丈夫だって。きっとルナさんが美人だからみんな見惚れているだけだよ」

ご主人様マスター、それフォローになっていないよ。町民たちの視線はそんなものではない」

 どうにかして彼女の不安を和らげようとするも、メリュジーナの言葉でぶち壊しになる。

 彼女の気持ちを考えるのであれば、一刻も早くこの町から立ち去るべきだろう。

 だけどパーぺの導きのもと、道を歩いている現状では、次にいつ町を訪れるか分からない。

 食料の買い出しをする必要がある以上は、1泊くらいはしておくべきだ。

「とにかく、今日は宿屋を探して泊まろう。ルナさんにはメリュジーナや俺がついている。何かあれば俺たちが守ってやるさ」

「う、うん」

 1日だけ我慢してもらい、再び宿屋を探す。

 街中をしばらく歩くと、宿屋の看板がある建物を発見した。

「どうにか宿屋を見つけることができたな」

「は、早く入ろうよ! 私、外に居たくない」

 宿屋の中に入るように促され、扉を開けて建物の中に入る。

「いらっしゃいま……」

 カウンターにいる宿屋の女将と思われる70代くらいの女性が俺たちに気付き、声をかけようとした。しかし直ぐに顔を引き締め、険しい顔をした。

「あんたたち、旅の者かい?」

「あ、はい。さっきこの町に着きました」

「そうかい。なら1泊したらさっさとこの町から出て行きな! 得にその赤髪のお嬢ちゃん」

 女性がルナさんを指差し、声音を強める。

「あのう、どうしてルナさんに対してそんな態度を取るのですか? 町の人も彼女ばかり見ていたのですが?」

「そう言えば、あんたたちはこの町に来たばかりだったね。この町の事情を教えるから、その子は部屋から1歩も出すんじゃないよ。彼女が大切なら尚更ね」

 前置きをしつつ、女将さんと思われる女性は事情を語り出した。
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