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第三章

第十一話 巨大木と化したハナマドウジジイ

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 数多くの枝が触手のように動き、こちらに向けて放たれる。

 しかし目測を誤ったようだ。木の枝は俺には当たらず、周辺の建物に激突する。

『チッ、久しぶりにこの姿になったからか、思うように身体を動かすことができないな。年は取りたくないものだ。だが、それも数分の間に過ぎない。直ぐに馴染ませてくれる』

 どうやらハナマドウジジイは、今の大木のような姿を思うように動かすことができないようだ。なら、やつが満足に身体を動かせない間に畳み掛けるのもありだな。

「ファイヤーアロー!」

 火球を5つ生み出し、それを矢の形にする。その後、間髪を容れずに直ぐに放った。

 炎の矢は全て敵モンスターに直撃し、大木の一部分を燃やす。

『ギャハハハハハ! いくらでも攻撃するが良い! 今のワシは炎など効かぬ!』

 炎が消えると、大木の一部は黒焦げになっていた。しかし、時間が巻き戻ったかのように、やつの身体は元に戻る。

 回復魔法を使ったにしても、やつは余裕がありすぎるな。どうしてあそこまで余裕でいられる?

「おい見ろ! 山の木が枯れて行くぞ」

 町民が山の方を指差し、差し向けられた方を見る。

 肉眼でも分かるほど、山に緑が失われていた。

『ギャハハハハハ! ワシを傷付ければ傷付けるほど、山から養分をいただき、我が血肉に変えている。ワシを攻撃すれば、あの山は死山と化す』

「森に緑がなくなれば、動物が住まなくなるぞ」

「木の実や山菜、それにキノコも採れなくなる。このままでは食糧難に陥ってしまう」

 変貌してしまう山を見て、町民たちが驚きつつも顔色を悪くさせる。

 考えろ。何か方法があるはずだ。あの山を助ける方法が。これまで得た情報から、何か突破口が見つかるはず。

 思考を巡らせて考えると、大木に姿を変える前のハナマドウジジイの言葉を思い出す。

【くそう。こうなったら仕方がない。奥の手を使ってやる! フラワーディジーズよ! 根っ子を経由して森からエネルギーを奪い、ワシに渡せ!】

 そうだ。あのモンスターはフラワーディジーズを使って、ハナマドウジジイに森のエネルギーを送っている。なら、あの花を伐採すれば、森がこれ以上の被害を受けることはなくなるはずだ。

 まさか、ショーンがしようとしていたことが正しかったとはな。

 だけど、俺がこの場を離れる訳にはいかない。

「メリュジーナ、今すぐにフラワーディジーズのところに向かって、あの花を伐採して来てくれ」

「了解した。主の名に従い、その任務を遂行してみせよう」

 俺の命令にメリュジーナが従うと、彼女の背中から妖精の羽が現れる。そして天高く舞い上がった。

『させるか! フラワーディジーズだけは伐採させないぞ!』

「メリュジーナの邪魔はさせるか! グラビティープラス!」

 一定範囲の重力を上げる魔法を使い、メリュジーナに向けて放たれる枝を全て叩き落とす。

 これなら敵にダメージを当てることなく時間稼ぎをすることができるはずだ。

『おのれ! またしても重力による拘束か。だがな、その魔法には穴がある』

「穴だと!」

 大木となったハナマドウジジイの言葉に驚くと、地中から根っ子が現れた。根っ子は枝と同様に触手のように蠢きながらも、メリュジーナを拘束しようと伸びていく。

 しまった。この場で重力魔法を使えば、他のみんなも巻き添えにしてしまう。

 また山の一部を犠牲にすることになるが仕方がない。肉を切らせて骨を絶つ。

「ウエポンカーニバル!」

 呪文を発動して数多くの武器を生み出す。

 この魔法は、武器に必要な物質を集めて得物の形を形成し、そこに質量を持たせるヒッグス粒子を纏わせることにより、本物と同等の切れ味を持つ得物を生み出すことができる。

「放て! ウエポンアロー!」

 刃先を根っ子に向け、剣や槍、斧と言った数々の得物が射出されると、次々と根っ子を切り落とす。

 これでメリュジーナは森に向かうことができる。あとは彼女がフラワーディジーズを伐採してくれるのを待つだけだ。

 さて、彼女は成功してくれるだろうが、俺のほうでも色々と仕掛けを作っておくとしますか。

「さぁ、メリュジーナが森に向かった以上、お前は詰んだようなものだ。諦めて降参することをオススメするぞ」

『誰が降参するか! まだ負けだと決まった訳ではない!』

「そうか。それじゃあ第2ラウンドと行くとするか」
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