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第九章

第三十六話 エコンドル杯③

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 コールドシーフのギミック妨害により、俺の周辺にコンドルたちが集まり、一斉に襲いかかってくる。

 鳥たちに囲まれ、殆ど逃げ道がない中、コンドルたちは一斉に襲いかかってきた。

「キネマテックビジョンイムブルーヴメント!」

 コンドルたちが襲い掛かる中、俺は動体視力を向上させる魔法を発動した。

 動体視力が向上したことで、コンドルの動きを目で捉えることができるようになる。

 見えた! 少しだけど、コンドルの攻撃を躱せるラインを見つけることができた。

 一瞬の内に判断し、素早く動く。

 時にはコンドルの攻撃を躱し、時には体勢を低くする。そしてまたある時は跳躍しつつ、コンドルの攻撃を避けた。

 よし、どうにか全てのコンドルの攻撃を避けることができた。

 前方を見ると、コールドシーフがギミックエリアから出て行こうとするのが視界に入る。

 今なら、ワンチャン間に合うか?

 一か八か。俺は投げつけられたコンドルの餌をコールドシーフに向けて投げ付ける。すると、ギミックとして用意されたコンドルは、一斉にコールドシーフへと向かって突撃を開始した。

 よし、今の内にコンドルの陰に隠れつつ前進だ。

 コンドルたちに気をつけつつ、第一のギミックエリアを突破しようと全力で駆けた。

『コールドシーフ走者が投げ付けた餌を、シャカール走者が投げ返す! しかしコールドシーフ走者は、既にギミックエリアから抜け出したぞ!』

 チッ、間に合わなかったか。

 獲物を逃したコンドルが、再び俺に対して狙いを定めた。しかし、餌のない状態では、コンドルは法則性のある動きしかしないようだ。

 なので、容易に鳥の突撃を躱すことができ、苦労することなく、最初のギミックエリアを突破した。

『ここでシャカール走者が最初のギミックを突破だ! しかしコールドシーフ走者との差は5メートル! 追い付くことができるか!』

 実況担当のアルティメットの声が聞こえたようで、コールドシーフは走りながら振り返り、俺のことを見てくる。

「チッ、もう突破されたか。思っていたよりもやるじゃないか。なら、続いて第2弾! こいつをくらいやがれ!」

 コールドシーフがポケットに手を突っ込むと、何かの物体を取り出した。

 あれは知識としては知っている。異世界に存在すると言われている拳銃と呼ばれる兵器だ。しかし、俺の知っている物とは少し形が違うな。銃弾を打ち出す銃身の部分が、バカでかい。

 普通の拳銃ではないのだろう。油断することができない。

 警戒をしていると、コールドシーフが引き金を引いた。その瞬間、装填されていたものが打ち出されたが、それは銃弾ではなかった。

 先ほどの動体視力を向上する魔法の効果が残っているので、球の軌道や大きさなどを見ることができる。

 球体状の何かが俺のところに飛んで来ると、素早く左に飛ぶ。俺の横を球が通り過ぎると、地面に着弾した。その瞬間、球体の中からネットが飛び出す。

 相手を拘束させるアイテムか。どれくらいの拘束力があるのか不明だが、あんなのに当たってしまっては、時間のロスになってしまう。

「そんなバカな! アタシのお手製ランチャーが躱されてしまうなんて!」

「その程度の妨害、俺には通用しない!」

 少しずつコールドシーフとの距離を縮めると、第2ギミックへと到達する。

 階段を駆け上がると、そこには色鮮やかな床があった。

 先に到達したコールドシーフがギミックの床に足を踏み入れた瞬間、床が消えた。

 落とし穴のギミックか?

『第2のギミックは足場の悪い床です』

『このギミックは一度床を失うと、しばらくの間再生にまで時間がかかります。別名落下床です。』

 実況と解説の言葉が耳に入り、ギミックの内容を理解する。

 なるほど、このコースでは一定時間が経過しない限り、床が再生しないのか。

 後を振り返って後続を確認すると、現在3位となっている走者がここに辿り着くまで、もう少し時間がかかりそうだ。

 ここは、コールドシーフが走り切った後、残った足場を使ってこのギミックに挑んだ方が良さそうだな。

 そのように作戦を立てていると、コールドシーフが第2のギミックを突破する。

 そのまま走り去るだろう。そう思っていたが、彼女は先に進むことなく、振り返る。そしてニヤリと口角を上げた。

「まさか!」

「そのまさかさ! ただの落下するだけのギミックなんて詰まらないだろう? このアタシが面白くしてやるよ!」

「プチブラックホール!」

 コールドシーフが魔法を発動すると、空間に穴が生まれる。その穴は吸引を始めて吸い込まれそうになったが、どうにか踏ん張る。

「安心しな。こいつは直径30センチメートルのものしか飲み込めない。だからお前が呑み込まれることはないさ。さぁ、この吸引力に負けて床に来い! そして下に落下してリタイアしな」

 コールドシーフが足を置いた床は、まだ再生されていない。消えた床から下の状態を確認することができた。

 スライムだ。下には多くのスライムたちが蠢いている。

『消える床の下には、勝負服の繊維を食べるスライムがいます。ですが、ご安心ください。食べるのはあくまでも勝負服のみとなっています。全裸にされることはありません』

『ですが、下着姿を晒すことになってしまいますからね。羞恥心は大きいでしょう。シャカール走者の半裸姿を見たいような見たくないような、複雑な心境ですね』

 なんて言う中途半端なスライムなのだろうか。いや、これは運営側なりの配慮なのだろう。さすがに走者が全裸になるようなことになれば、クレームが殺到することになるだろうな。

 さて、どうやってこのギミックを突破しようか。

 難易度が跳ね上がったギミックの攻略する方法を考えていると、後方から何かが飛んできた。

 その物体が俺の背中に激突すると、バランスを崩した俺は、消える床に足を踏み入れてしまう。その瞬間に床が消え、俺の体は重力に引っ張られる感覚があった。
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