ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第六章

第三話 王子チャプスといるとヘイトが溜まります

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「ギャハハハハ! く、苦しい! 笑死にしそうだ!」

 レンナルト王から俺たちが護衛をすることを紹介してもらったが、冗談だと思い込んだチャプス王子は爆笑するのをやめなかった。

「チャプス! 良い加減にしないか!」

 一向に笑うのをやめないチャプス王子を見て、レンナルト王は声を上げた。

「す、すみません……父上……少々お待ちください」

 チャプス王子は大きく深呼吸をすると、落ち着いたようで下卑た笑いを止める。

「ワタシが言っていることは本当だ。彼らに護衛を頼んでいる」

「そうでしたか。それはすみませんでした。父上」

 レンナルト王にチャプス王子が謝罪の言葉を述べると、彼は俺たちの方に向き直る。そして俺の前に立った。

「お前、名前はなんて言う?」

「リュシアンだ」

「そうか。そうか。リュシアンか」

 チャプス王子は俺の名を聞いて胸の前で腕を組むと、首を縦に二度振った。そしてキッと俺のことを睨み付けてくる。

「平民風情が気安く僕に口を利くんじゃない!」

 突然チャプス王子が声を上げると、彼は拳を握り、俺の顔面に殴りかかろうとしてきた。

 チャプス王子の攻撃遅いな。これなら簡単に回避することができるじゃないか。

 俺はチャプス王子の拳を受け止め、彼の攻撃を交わす。

「平民風情が汚らしい手で僕の拳を受け止めるな!」

 いや、そんなことをしたら殴られるじゃないか。俺は痛いのは嫌だよ。

「良い加減にしないか! チャプス!」

 チャプス王子の態度を見て、彼を止めようとレンナルト王が声を上げる。

「息子が大変ご迷惑をかけた。すまないが、手を離してくれないか」

 レンナルト王様は申し訳ないと言いたげな表情で軽く頭を下げる。

 王様の言葉に背く訳にはいかない。

 俺は手を離すとチャプス王子は一歩下がって睨み付けてくる。

「くそう! 許さないからな! 成人の儀の際、お前をこき使ってやる!」

 チャプス王子が俺に指を向けると、彼は謁見の間から出て行った。

「リュシアンよ。本当に済まない。我が息子ながら王子として相応しくない態度を取ってしまった」

「いえ、別に気にしてはいないので」

 気にしていないと言えば嘘だ。正直あの男に対してヘイトが溜まっている。だけど王様の前にいる以上は、本音を言うことができない。

「そう言ってもらえると助かる。それで詳しい話に移りたいのだが良いかな?」

「はい。詳しい話をお聞かせください」

 答えると、レンナルト王様は一度咳払いをしてから話し始める。

「成人の儀であるが、その内容は王家が管理している山にいるモンスターの捕獲をすることで、次期王として認められるというものだ。リュシアンたちには道中の護衛をしてもらいたい」

 なるほど、それならどうにかできそうだな。問題なのは、あのムカつく王子としばらくの間一緒にいないといけないということだ。

 ヘイトが溜まっていく一方になるが、それまでの間は我慢しなければならない。

「わかりました。道中の護衛はお任せください」

「そうか。では頼んだ。成人の儀は明日執り行うのでな。今日は城下町の宿屋にでも泊まるが良い。この招待状を宿屋の店主に見せれば、タダで泊めてくれる。また明日謁見の間にて会おう」

 懐から小さい封筒を取り出し、俺に手渡す。

「わかりました。お心遣い感謝します」

 レンナルト王様に一礼をすると、俺たちは謁見の間から出て行く。

「何よあのブタ王子! 本当にムカつくわ!」

「そうです! リュシアンさんの手が汚いとかありえません! 寧ろあの王子の手の方が汚いですよ! 心が汚い人間は体も汚いですから! 野盗たちがそれを証明しています!」

 謁見の間から出るなり、二人は口々にチャプス王子の悪口を言い出す。

 二人ともストレスが溜まっていたみたいだな。

「ねぇ、リュシアンピグレット。あのブタ王子が捕獲する時にどさくさに紛れて攻撃をしてもいい? あたしの声なら証拠なんてどこにも残らないわ」

「大ケガをさせて成人の儀に失敗したら、依頼失敗になってしまう。気持ちは分かるけど我慢してくれ」

「分かったわよ。でも、足に引っ掛けて転ばせるくらいなら良いわよね?」

「頼むからそんな小物がするようなこともやめてくれ」

 テレーゼなら俺が目を離した隙に、チャプス王子に嫌がらせをする可能性が高い。

 ここは目を光らせておかないといけないかもしれないな。

 無事に依頼を終えることができるのか不安が拭えないまま、城を出ると城下町に向かう。

 城下町の人に宿屋の場所を訪ね、宿屋のある路地を歩いた。

「リュシアンさん。あれじゃないですか?」

 ユリヤが宿屋を見つけたようで指を向ける。彼女の指先が指し示している場所を見ると、建物に宿屋の看板が取り付けてあった。

「あそこで間違いないみたいだね」

 俺たちは宿屋の前まで歩き、扉を開けて中に入った。

「いらっしゃい。何名様ですか?」

 建物の中に入ると、受付にいた四十代くらいのおばちゃんが声をかけてくる。

「三人です。あのう。これを見せるとタダで泊めてもらえると聞いたのですが?」

 俺は王様からもらった封筒を開け、中に入っている紙をおばちゃんに渡す。

「あら! これって王様からの紹介状じゃない !分かったわ。すぐに一番良い部屋を用意するわね!」

 おばちゃんは慌てた様子でカウンターの引き出しを開け、三つの鍵を俺たちに渡す。

「はい。これがあなたたちが泊まる部屋の鍵ね」

「ありがとうございます」

「王様からの紹介状がもらえるなんて。あなたたち何者なの? もしかして明日行われるチャプス王子の成人の儀の関係者?」

「まぁ、そんなところです」

「やっぱり! それじゃあその後に行われるパレードにも参加するの?」

「パレード?」

 知らない情報を聞かされ、俺は首を傾げた。

「あら? パレードには出席しないの? 成人の儀を終えた後、王子が捕まえたモンスターを民衆に見せるのよ」

「へぇー、パレードなんてあるんですね。それは聞かされていませんでした」

 まぁ、依頼内容は成人の儀までだ。その後のことなど俺たちには関係がない。

 ある程度でおばちゃんとの会話を切り上げ、俺たちは自分が泊まる部屋に向かった。

「それじゃあ俺はこの部屋だから」

「はーい」

「また明日の朝会いましょう」

 自分の部屋の番号を見つけ、鍵穴に鍵を挿してロックを解除すると中に入る。

 おばちゃんが一番良い部屋と言っていただけに、一人部屋にしては中がとても広かった。

 備え付けの家具も高級感のあるデザインをしており、ベッドに腰をかけると柔らかい。

 俺はそのままベッドに横になった。

 明日はまたあのチャプス王子と会わないといけない。正直に言って嫌だが、これも仕事だ。

「明日の成人の儀がうまくいきますように」

 ポツリと言葉を漏らすと、今日一日の疲れが出たのか、睡魔が襲ってきた。

 我慢することができなかった俺は、そのまま寮の瞼を閉じて眠りに就く。










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