ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

文字の大きさ
上 下
24 / 171
第三章

第四話 ロアリングフルート討伐 後編

しおりを挟む
「ロアリングフルート!」

 穴が空いている洞窟の天井から、ゆっくりとコウモリの翼を羽ばたかせて舞い降りている大猿の名を叫んだ。

『キキキキ!』

 やつも俺たちに気付いたようだ。地面に降りた瞬間、手に持っている横笛を口に持って行く。

「させるか!」

 事前に情報を得ている俺は、敵が音波攻撃をする前にやつに近づく。

 鞘から太刀を抜き、やつの腕を斬った。

 斬られた箇所から鮮血が吹き出し、攻撃を受けた大猿は後方に飛んで俺たちから距離を空ける。

『キキキキ!』

 攻撃を中断されて気分を害したのか、ロアリングフルートの顔は真っ赤になった。

 憤怒状態に入ったか。もう怒るとか、どれだけ短気なんだよ。

 一定の距離を空けられた。これでは接近したところで、やつの演奏を妨害することはできない。

 まぁ、憤怒状態になっているから、まともに近づくことはできないけどな。

『キキキキ!』

 ロアリングフルートが横笛を口に持って行くと音を鳴らした。

 モンスターにしては本当に上手く、つい聴き入ってしまいそうだ。

リュシアンピグレット! 横に跳んで!」

 横に跳ぶ? よく分からないけど、とりあえずは言われたようにしよう。

 彼女に言われたとおりに動くと、先ほどまで俺が立っていた地面が砕けた。

「ボーッとしている暇はないわ! あたしが誘導するから、リュシアンピグレットはそのままロアリングフルートに接近して!」

「わかった」

 なぜか分からないが、彼女にはロアリングフルートの音波攻撃が見えている。今はテレーゼのことを信じて突き進むのが一番だ。

 太刀を構えながらモンスターに接近する。

 敵である俺が近付いたことで、ロアリングフルートは再び横笛で音を鳴らした。

「右に跳んで!」

 テレーゼの指示に従い、右に跳躍すると、先ほどと同じように地面が割れる。

 よし、ここまで近づけば、攻撃の間合いに入れる。

 跳躍して太刀を上段に構えると、やつの尻尾に目がけて振り下ろした。

「とりゃあ!」

『キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ!』

 大猿の尻尾は切断され、モンスターは叫び声を上げながら地面に転がった。

 直ぐには起き上がれないようだ。今のうちにダメージを蓄積させる。

 攻撃のチャンスを逃さず、俺は連続でロアリングフルートの肉体を切り裂く。

 やっぱり尻尾のときみたいに一刀両断はできないか。だけど転倒しているうちに、やつの羽をボロボロにした。これで飛行して空中に逃げることはできないはず。

 二つ目の部位破壊を成功したところで、大猿は起き上がる。

 念のために後方に下がると、顔を真っ赤にしたモンスターは俺の方を見た。そして横笛を口に持って行く。

 音色を奏でた瞬間、俺の体に痛みが走った。

 咄嗟のことでテレーゼが反応できなかったのか? まぁ、いい。俺には支給された回復ポーションがある。

 ポーチから緑色の液体が入った瓶を取り出し、中身の液体を飲み干す。すると体の痛みは消えた。

「ごめんなさいリュシアンピグレット、やつの攻撃パターンが変わったわ。さっきまでは物体を破壊する音の波だったのに、今度は人体に与える音の波だった。」

 攻撃パターンが変わった? 俺には同じ音にしか聞こえない。やっぱり、テレーゼにはやつの見えない攻撃が見えているんだ。

「やっぱり、あの横笛を破壊しないと難しいみたいだ」

 俺はロアリングフルートの隙を見つけ、やつの持っている横笛に刃を当てる。だが、金属音が奏でられ、破壊することができなかった。

 あの横笛、思った以上に硬い。俺の持つ太刀は、それなりに切れ味はいい方のはずなのに、ヒビすら入らないなんて。

 一度後方に下がると、テレーゼが俺のところに駆け寄ってくる。

リュシアンピグレット、あたしがあげた耳栓を付けて。そしてロアリングフルートの横笛が壊れた瞬間にやつに攻撃をお願い」

 テレーゼにはあの横笛を破壊する算段を見出したのか? だけどそれと耳栓がどう関係している?

 だけどまぁいいや。ここは彼女を信じて、俺はモンスターを倒すことだけに専念しよう。

 ポーチから耳栓を取り出すと、両方の耳に嵌める。

 その瞬間、全ての音が遮断されて何も聞こえなくなった。

 隣にいるテレーゼが何かを叫んでいるようだけど、それすら聞こえない。

 数秒が経つと、ロアリングフルートの持っている横笛にヒビが入り、そして最後には砕けた。

 これでやつは攻撃手段の殆どを失った。攻撃するなら今だ!

 地を蹴って跳躍すると、思いっきり太刀を振り下ろす。

 刃が大猿の顔面に当たり、鮮血が噴き出すも、致命傷にはいたらなかった。

 次の攻撃に移ろうとすると、ロアリングフルートは急に俺に背を向ける。そして足を引き摺りながらここから離れようとした。

 あっちは八番エリアがある方だ。

「逃すか!」

 逃げようとするロアリングフルートに近づき、先回りをする。そして太刀を構えてやつの胸に突き刺した。

『キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ!』

 モンスターの断末魔の声が洞窟内に響くと、やつは事切れたようで動かなくなる。

「討伐完了だ」

「やったわね! リュシアンピグレット

 テレーゼが駆け寄り、俺に笑顔を向ける。

 そんな彼女に、俺は真剣な表情でテレーゼを見た。

「ど、どうしたのよ。そんなに見つめられると、なんだかテレるわね」

「テレーゼ、訊きたいことがある。君は何者なんだ?」










最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!

など思っていただけましたら、【感想】や【お気に入り登録】をしていただけると、作者のモチベが上がり、更新が早くなります。

【感想】は一言コメントでも大丈夫です。

何卒宜しくお願いします。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

外れスキル【削除&復元】が実は最強でした~色んなものを消して相手に押し付けたり自分のものにしたりする能力を得た少年の成り上がり~

名無し
ファンタジー
 突如パーティーから追放されてしまった主人公のカイン。彼のスキルは【削除&復元】といって、荷物係しかできない無能だと思われていたのだ。独りぼっちとなったカインは、ギルドで仲間を募るも意地悪な男にバカにされてしまうが、それがきっかけで頭痛や相手のスキルさえも削除できる力があると知る。カインは一流冒険者として名を馳せるという夢をかなえるべく、色んなものを削除、復元して自分ものにしていき、またたく間に最強の冒険者へと駆け上がっていくのだった……。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

処理中です...