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第三章

第三話 対抗ユニークスキルの獲得

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「お前が邪魔するんかい!」

 カレンの顔が近付く中、悪いタイミングで俺の魂はカーマに呼び出されてしまった。

 くそう。思わず声を出してツッコミを入れてしまったじゃないか。

「もう、そんなに怖い顔をしないでくださいよ。格好良い顔が台無しですよ」

「なんちゅうタイミングで呼び出すんだよ」

「だって、ちょうどあなたが欲しいユニークスキルに必要なポイントが貯まったんだもん。直ぐに欲しいかなって。カーマちゃん的に気を利かせたつもりだったのだけどなぁ?」

「全力で邪魔しに来ておいて良く言うよ。もう、お前のせいで現実の世界に意識が戻っても、中途半端な気持ちになるじゃないか」

 小さく息を吐き、肩を落とす。

 強制的にこっちの世界に魂を飛ばされたせいで、あっちの世界に戻った時に、カレンの唇が触れてもどんな気持ちでいれば良いのか分からなくなる。

「まぁ、まぁ、あなたの世界とは時間の流れが違うのだから、覚悟を決めてから戻れば良いじゃない。いつまでもワタシの店にいても、カレンの顔は逃げないわよ」

 ニヤリと含みのある笑みを浮かべ、カーマは落ち着いてから戻るように促す。

 まぁ、彼女の言うことにも一理ある。ちゃんとカレンの唇を受け止める覚悟ができてから、あっちの世界に戻ればいい。

「分かった。それじゃあ要件を済ませよう。早く俺にあのユニークスキルをくれ」

「はい、はーい! 【男優アクター】ね」

「そう、そう。このスキルを使って、あのコワイにエロいことを……ってちがーう! なんでよりにもよって【男優アクター】なんだよ!」

「うん、ナイスツッコミ! これを選んだのは、あなたが面白い反応をしてくれるかなって思って。カーマちゃんの願望どおり、気持ちのいいノリツッコミをありがとう」

「どういたしまして」

 礼を言ってきたので取り敢えず返答するが、好い加減に俺の求めているユニークスキルが欲しい。

 まぁ、【男優アクター】も結構使えるユニークスキルなんだよな。

 工具作成のスキルでストップウォッチを作って時間停止させたり、透明人間になって敵に認識されなかったり、透視で建物の中を覗くことだってできる。

「あれ? もしかして【男優アクター】と聞いて、エッチな想像をしちゃったのかな? もしかしてカーマちゃんの貞操のピンチ? いやーん、こわーい!」

「誰が、お前に欲情するかよ!」

 本当に好い加減にして欲しい。だけど、俺が悪いっていうのも理解している。一々カーマの揶揄からかいに反応してしまうから、彼女が面白がってしまうのだ。

 これからは、一々カーマのすることに反応しないようにしよう。そうすれば、彼女は面白くなくなり、普通に接してくれるようになってくれるはず。

「えーん、ユウリがワタシに欲情してくれなーい! ワタシってそんなに女としての魅力がないの」

 カーマが両手を目元に持って来て瞼を閉じているが、完全に嘘泣きだ。絶対に彼女が喜ぶような反応はしないからな。

「嘘泣きってことは分かっている。諦めてちゃんと対応して欲しい」

「はい、はい。分かりました。直ぐに別れたくないから、必死に呼び止めているカーマちゃんの愛が分からないなんて、もう知らない!」

 カーマがふくよかな胸の前で腕を組み、プイッと顔を横に向けながら唇を尖らせる。

 これがカレンだったら、めちゃくちゃ可愛いのだろうけど。カーマには何も思うところがない。

「はい、これでしょう。ユニークスキル【奴隷契約スレーブコントラクト】」

 カーマがパチンっと指を鳴らすと、俺の前に一枚のカードが現れる。

「ああ、これでやつが奴隷にした人たちを解放することができる」

 ユニークスキル【奴隷契約スレーブコントラクト】で奴隷になった人物は、このスキルの所有者にしか解除することができない。

 ゲームでは、俺が勘違いをしていたあの人物と接触して仲間に引き込む。もしくはそのキャラを使って、コワイの【奴隷契約スレーブコントラクト】をコピーする必要がある。

 そうしなければ詰みとなってしまうほど、彼女は強力な神の駒だ。

「コワイって本当に怖いわねぇ、なんちゃって」

 俺の気を引こうと、カーマがダジャレを言い出す。

 はっきり言って、女神の威厳がなくなっていないか? いや、最初から神のような神々しさはなかったな。

 因みに聖神戦争に登場するキャラの殆どが日本人で、漢字に直すこともできる。

 確かコワイは子和衣だったかな。

「もう、カーマちゃんに構ってくれないユウリなんか知らない! 早くあっちの世界に戻っちゃえ!」

「あ、待って! まだ心の準備が!」

 愛の神を無視した天罰なのか、まだカレンとキスをする心の準備ができていない中、一瞬で意識は現実世界へと戻される。

 目の前にカレンの顔が迫るも、俺たちの唇が触れることはなかった。

「ユウリの頭に花びらがついているよ。歩いている間に引っ付いたんだね」

 カレンが俺の頭に付いていたと思われる花びらを見せる。

 は、花びら! キスじゃなかったのかよ!

 心の中で絶叫する中、俺のところに走って来ていたアリサがずっこける。

「あいたた」

「だ、大丈夫! もう、アリサが転ける何て珍しいわね」

「あはは」

 アリサは苦笑いを浮かべて誤魔化しているが、俺には分かる。俺と同じでキスをしようとしていると勘違いしたのだ。阻止しようとして全力で走ったが、実際には顔を近付けて花びらを取っただけだとわかり、気が抜けたことで転倒してしまったのだろう。

「アリサ、膝ケガしているよ」

「あ、本当。どおりで痛いはずだわ。まぁ、こんな傷、スキルを使えば直ぐに治るけどね【自然治癒ネイチャーヒーリング】」

 アリサが自身にスキルを発動させると、彼女の傷が癒えていく。

「これでよし。もう暗くなるけど、どうなったのよ。まさか、まだ強くなっていないって言わないわよね」

「それが――」

 カレンがアリサから視線を離す。

 つい先ほどまで、カレンにはユニークスキルを獲得していないと告げていたからな。まだ持っていないと思い込んでいるのだろう。

「それなら大丈夫だ。確認したが、強くなっている。これもカレンが協力してくれたお陰だ。ありがとう」

「それを聞いて安心したわ。もし、まだ強くなっていないって言い出したら、噴水に投げ飛ばすところだった」

 アリサの言葉に苦笑いを浮かべる。

 どうやら間一髪だったようだ。このことを考えると、あの時カーマが呼び出してくれて助かったかもしれないな。

 そのようなことを思っていると、ドヤ顔でピースしているカーマの姿が脳内に思い浮かんだ。

 想像するだけで少し苛つく。

「無事に俺も強くなったってことで、今日は休んで早朝にグロスの街に向かおう」

 今後の方針を決めると、俺たちは屋敷に帰る。





 早朝、準備を整えた俺たちは、俺の転移スキル【瞬間移動テレポーテーション】でグロスの門の前まで来た。

 転移のために俺の手を握っていた二人が手を離す。

 アリサの方はそこまで思わないが、カレンの手が離れると、正直寂しい。

 門の扉を開けて町の様子を伺うと、町民たちはギラギラとした目付きで何かを探している様子だった。

 この様子を見る限り、グロスの町に住む町民の殆どが、コワイの奴隷となっているのかもしれない。

 この光景を見ただけで、やつのユニークスキルの恐ろしさが分かる。

「町のみんな、様子がおかしいね」

「多分、アタシたちを探しているのよ」

「まずは俺が先陣を切る。安全が確認できたのちに、二人も入ってくれ」

「うん」

「分かったわ」

 二人の返事を聞き、町の門を開ける。そして少し歩くと、俺に気付いた奴隷兵たちは一斉に襲いかかってきた。

「さぁ、今すぐに解放してやろう。スキル発動! 【奴隷契約スレーブコントラクト】」











最後まで読んでいただきありがとうございます。

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