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第三章

最終話 記憶喪失のショタは国のヒーローになる

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 僕の遊びに巻き込まれ、アンブルさんは自分の生み出した魔法に突っ込み、ダメージを受けた。

 王様の煽りも原因のひとつかもしれないけれど、今の彼は凄く怒っている。

「もう許さない! お前は絶対に俺が倒す!」

 握っていた剣を構え、アンブルさんは一気に距離を詰めると、僕に向けて剣を振り下ろす。

 あまり時間がない。短時間で彼の攻撃を回避する遊びを考えないと。

 一生懸命になって頭の中で考えると、とある遊びを思い付く。

 よし、この遊びなら、アンブルさんの動きを止めることができる。

「ダンルマさんが転んだ!」

「何! 俺の体が動かない!」

 声を上げた瞬間、お兄さんの動きが止まる。

「ダンルマさんが転んだは、この言葉を言い終わると対処となる人は動きが止まる。次に僕が始まりの言葉を言わない限りは、あなたはそのまま動くことができないよ」

 どうにかお兄さんの動きを止めることに成功し、安心した。

 さて、これからどうしようか?

「少年、良くやった。あとはワシがこの男を討とう。良くもアルベルトを殺し、ワシを騙しておったな! その首、ワシが貰い受ける!」

 今後のことについて考えていると、王様がアンブルさんから剣を奪い取り、そのまま彼の首に目がけて振り下ろす。しかし刃が首に触れた瞬間、刃にヒビが入ると広がって砕け散った。

「ハハハ! 俺の肉体は剣に切られるほどやわじゃない! 残念だったな! 俺には傷ひとつつけることはできない」

「傷付けることができないって言っているけど、自分の魔法で体はボロボロだよ?」

「うるさい! ガキ! 黙れ!」

 思ったことを言うと、突然アンブルさんは声を荒げた。

 そんなに怒って、カルシウム不足なのかな?

「とにかく、俺の強靭の肉体には、人間の攻撃なんか通用しない」

 勝ち誇ったかのように、アンブルさんは口角を上げる。

 本当に僕たち人間の攻撃は効かないのかな。よし、それじゃあ試してみよう!

「ダンルマさんが転んだはやめて、次はあっち向いてホイをするね。あっち向いてホイ!」

 人差し指を伸ばして他に指を丸め、そのまま右に向ける。すると、アンブルさんの顔が指を向けた方に向く。

「くそう! 反射的に顔が勝手に動きやがる」

「あっち向いてホイは、指を向けられた方とは別の方を向かないとペナルティーが発生する遊び、主導権が僕にある以上は、逃げられないからね。それじゃ、もう一度、あっち向いてホイ、ホイ、ホイ!」

 連続で指を上下左右に動かす。その度にアンブルさんは顔を動かした。だけど4回中3回が、指を向けた方に顔を向けた。

「ペナルティーは3回ね。それじゃ、始めるよ。しっぺ!」

 アンブルさんの腕を掴み、2本の指を伸ばして叩きつける。

「ギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!」

 僕の指が触れた瞬間、彼は断末魔の叫びとも言えるほどの絶叫を上げた。

「あれ? 人間の攻撃は効かないはずだよね? 今の悲鳴は何かな? まぁ、いいや続けていくよ。デコピン!」

 手をアンブルさんの額に近付け、勢い良く弾く。すると、彼は蹴られたボールのように勢い良く吹き飛んだ。

「ま、待て。これはいくらなんでもおかしい。なんだその力は!」

「遊びと言うユニークスキルだよ。遊ぶことで、様々な魔法の効果が発動したり、遊びに関連した現象を生み出したりすることができる。それじゃあ、最後のやつ行くね」

 両手を横に広げ、走ってアンブルさんに近付く。

「く、くるなあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 吹き飛ばされて床に座り込んでいるアンブルさんが近付くなと言う中、彼の言うことを無視して距離を詰め、そのまま右手を上に上げる。

「バ・バ・チョップ!」

 勢い良く上げた腕を振り下ろす。振り下ろされた手刀は、彼の頭に当たるとそのまま勢いよく床に顎をぶつけた。

「あれ? 思ったよりも威力が高かった。おーい、アンブルさん生きている?」

 彼に訪ねた瞬間、アンブルさんの体は灰色の砂になって床に崩れ落ちた。

「これって、倒せたのかな?」

「良くぞ魔族を倒してくれた。若き小さな勇者よ。王として礼を言おう」

 後から声が聞こえ、振り返る。すると王様がゆっくりと近付きながら声をかけていた。

「僕が勇者?」

「そうだ。お主こそ、我が国の未来を守る逸材、勇者の卵に相応しい。その力を、我が国を守るために使ってくれ」

 王様から勇者と呼ばれた瞬間、僕の鼓動が早くなった。

 やった! 僕、憧れの勇者になったんだ!





 王女様の誘拐事件から8年の月日が経った。

 別働隊で動いていたシルヴィアお姉さんが、第一騎士団長と合流して王女様を救出し、僕、いや俺が王様を助けたことで、この国は魔族の脅威が消えた。

「ラル君、起きている? 今日は学園の入学式の日でしょう。ローザちゃん、迎えに来ているわよ」

「ラルス! 何あたしを待たせているのよ! 早く準備をして降りて来なさい!」

 ベッドで横になっていると、ソフィーお姉さんとローザの声が扉越しに聞こえてきた。

「分かっている! 今から準備するから!」

 俺も今年で16歳、あの事件依頼、魔物たちが活発に動くようになった。ちまたでは魔王復活などの噂も出回り、3年ほど前から王様が冒険者育成を目的とした学園を設立した。そして俺は、今日からそこに入学する。

「さて、それじゃ、ぼちぼち行くとしますか。遊び人勇者に俺はなる」

                                     終わり











最後まで読んでいただきありがとうございました。

今回の話しでこの物語は終わりです。

もしかしたら、人によっては急に終わったかのように思われるかと思います。

作者の実力不足と言うこともあり、目標としていたところまで到達することができませんでした。なので、早期完結を目指して途中から予定の前倒しをして完結に結び付かせました。

中には物語に関して消化不良を感じている方もおられるかもしれません。その方には申し訳ありません。

ですが、エタルよりかはマシだと判断しております。

本当に最後までお付き合いいただいたあなたには感謝してもしきれません。あなたが居てくれて本当に良かったです。

おこがましいお願いであることは重々承知しておりますが、宜しければ、完結記念のご祝儀として、エールをして頂けると助かります。

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