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36 性を知らない魔導オートマタと

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「小愛さん、これで依頼は達成です」
「うん、暗くならない内に戻りましょうか」

 小愛は魔導オートマタのメルトと共に依頼のためにダンジョンへと潜っていた。

 メルトの種族である魔導オートマタとはかつて栄えた魔導技術によって作られた人工生命体である。その体は魔力を帯びた特殊な素材を使って作られており、見た目は普通の人間と変わらないもののその性能は一流冒険者に匹敵する。そんなこともあり多くの魔導オートマタは冒険者や傭兵などの人の身では難しいような職に就いている。

 そんな彼女と小愛は依頼を達成し終えたため、ダンジョンから出る道を急いでいた。

「このまま行けば夜までには外に出られそうですね」
「はい。ですが一度夜を明かすことになりそうです」

 二人はダンジョンの外に出てからの事を考えていた。夜暗い中活動を続けることは危険が危ないのだ。月明かりがあるとはいえ、魔物に襲われた際に十分な光源であるとはお世辞にも言い難い。それに仮に一切魔物に出会わないとしても足元が見辛いのは危険だった。森の中には植物が生い茂っているのだ。少しでも足を踏み外したら死あるのみだろう。

 そんな訳で二人は急いでいるのだった。少しでも明るい内に野営の準備を行いたかったのだ。

「良かった。まだ少し明るいですね」

 二人がダンジョンの外に出た時、辛うじてまだ日は沈み切ってはいなかった。テントを張り、焚火のための木を集める位の余裕はあるだろう。それを無駄にしないためにも、二人はすぐに野営の準備を始めたのだった。

「それじゃあ見張りは交代で行いましょうか」
「いえ、その必要はありません」
「……え?」

 小愛は見張りの順番を決めようとメルトに声をかけたが、彼女はそれを制止してテントから少し離れた場所まで歩いて行った。そして詠唱を始めたのだった。

「メルトさん……?」
「パーフェクトウォール……!!」

 突如、メルトを中心にして魔法による障壁が生み出されたのだった。それによってテントと焚火と少しの余裕を持ったくらいの範囲が障壁に囲われた。

「え、これって……」

 メルトの発動した魔法に小愛は心当たりがあるようだった。それもそのはずだ。彼女のプレイしていたゲームにもこの魔法はしっかりと存在していたのだ。邪悪なる者からの完全なる防御。それがこの魔法の持つ能力だった。しかし彼女が驚いたのはそこでは無い。そもそもゲーム内の魔法や魔物が実際に存在するのは既に経験済みであるため、今更驚くものでは無かった。

 では何故彼女が驚いていたのか。それはこの魔法がプレイヤーには使えないものだったからだ。この魔法はゲーム内においてはイベントでNPCが使用するだけの魔法であったのだ。それを一冒険者であるメルトが突然使ったために驚いていたのだった。

「パーフェクトウォール……使えるんですね……」
「はい。私は魔法特化型の魔導オートマタですから」

 メルトはなんてことないかのようにそう答えた。その様子を見た小愛はそれ以上追及してもあまり意味は無さそうだと考え、その話題を続けることは無かった。

 そうして見張りをする必要が無くなった二人はテントで夜を明かすことにしたのだが、小愛の一言を皮切りに流れがおかしくなっていくのだった。

「そう言えばメルトさんは彼氏とかっているんですか?」

 おおよそ初対面の者に対して言うようなものでは無いそれを、小愛は真正面からメルトにぶつけたのだ。

「彼氏……ですか?」
「それだけ可愛くて強かったら引く手あまたじゃないかなと思いまして」

 彼女の言う通りメルトは一般的に言う美少女を遥かに超えているものを持っていた。とは言え魔導オートマタが作り物である以上は特段おかしな話では無いだろう。そんな彼女だが、小愛の問いに対してはきっぱりと答えられずにいた。

「よくわかりません。もちろん、人族の女性が関係性を持つ異性をそう呼んでいるのは知識としては知っています。ですが私には異性が好きと言う感覚がわかりません……。貴方の思うような答えが返せなくて申し訳ない」
「いえそんなっ私の方こそ変なこと聞いてすみません……!」

 軽い気持ちで尋ねた小愛もまさかこんな答えが返って来るとは思っていなかったようだ。そんな小愛が次に取った行動……それは。

「小愛さん……?」

 メルトに抱き着くことだった。

「メルトさんがそうなのか魔導オートマタ自体がそう言ったものなのかはわかりません。ですがこんなに勿体ないことは無いと思うんです」
「な、何を……」

 小愛はメルトに抱き着いたまま押し倒す。そして彼女の服を脱がし始めた。

「嫌だったら言ってください」
「いえ……私としても興味はありますから……」

 小愛はそう言いながらも次々と彼女の服を脱がし、肌を露出させていく。一方でメルトも嫌そうでは無かった。実際のところ彼女も気になってはいたのだ。性愛というものがどういったものなのかを。

「……凄く奇麗」

 一切の服を脱がされ何一つ纏っていないメルトの体はもはや美術品のように美しいものだった。傷一つなくきめ細やかな肌は人のそれと見分けはつかない。サラサラな髪に細く長いしなやかな手足も同様だった。

「その、恥ずかしさとかは……」
「恥ずかしい……ですか?」
「全てを露出するのって……同性相手でも少しこうなんか、抵抗ありませんか……? あ、そうだ」

 小愛はこんな状態だと言うのに全く反応を示さないメルトに対して何かを思いついたようだった。

「確か前に手に入れたような……あった。この記憶吸引を少し応用して……よし」
「……っ!?」

 小愛がメルトのおでこに触れた瞬間、彼女は顔を真っ赤にしながら自身の局部を隠したのだった。

「な、何が……起こって……」

 メルトは自身に何が起こっているのかわからないようで、その視線はひたすらに自分の体と小愛の顔を何度も何度も行ったり来たりしていた。さっきまで裸を見られても一切反応を示さなかった彼女が、今はこうして真っ赤になりながら羞恥を覚えている。まず間違いなく小愛が何かしたのだろう。

「私の記憶を少し、貴方の中に入れてみたんです」
「記憶を……? ひゃぅっ!?」
「効果あったみたいですね。ふふっ、真っ赤になっているメルトさん……凄く可愛いです」

 小愛はメルトの耳元でそう囁き、彼女の手足を動かしていく。

「ぁっ……」
「大丈夫です。すぐに気持ちよーくしてあげますから。んちゅ……」

 恥ずかしがるメルトの局部ををほぼ無理やりに露出させた小愛は、そのまま彼女の胸の先で小さいながらもしっかり主張している突起に吸いついた。

「んぁっ……な、何……これ……。ふぅっんぅっ……ぅぁっぁ♡」
「ぬちゅ……ちゅぷ……」

 小愛による容赦のない責めがメルトを襲う。舌によるねっとりとした愛撫が、歯で優しく挟みそのままコリコリと弄んだ刺激が、快楽の信号を彼女の魔導コンピュータへと届ける。そしてその信号が小愛の埋め込んだ記憶と反応し、彼女にまるで人間のような快楽を感じさせていくのだった。

「知らないですこんなのっ……んぁあっぁ」
「ぷはっ……。どうですか? ダメそうならもうやめますけど……」
「や、やめないで……ください……」

 唾液に濡れ大きく膨らんだ自身の乳首を見ながら、メルトはさらなる快楽を求めて小愛へとお願いをする。もう彼女は自分で自分を止められる状態では無かった。

「わかりました。それなら次はもっと凄いですよ」
「……ゴクッ」

 次はどんなものが来るのかと、メルトは生唾を飲み込むほどに期待していた。

「この辺りかな……?」
「んぃっ!?」

 生み出されてから今の今まで体感することの無かった初めての刺激が彼女の体を駆け巡る。

「良かった、ここであってそうですね。痛くは無いですか?」
「だ、だいじょうぶ……です……んぁっぁあぁ!?」

 メルトの中へと指を入れた小愛は彼女の性感帯を的確に刺激した。その甘くも激しい快楽にメルトはひたすらに腰を跳ねさせながら嬌声を漏らす。

「ぉっ……おっぉ゛ぉ゛っ♡ ダ、ダメ……あたま溶けひゃぅ……♡」
「本当に頭蕩けちゃうくらい凄く気持ち良いですよね♡ 私の記憶と混ざって、もう完全にメルトさんは女の子になってますよ♡ なので、次は彼氏さんとこうやって気持ちよくなるのも良いと思うんです。……まあその、私にはそう言った相手はその、いないんですけどね……」

 自分のことを考えた小愛は急に言葉に詰まる。だが元より小愛がこのような行動に出た理由がそれであったため、避けては通れない道だっただろう。

「でもでもメルトさんならきっと良い人を見つけてもっと凄い事も出来ると思いますよ……! あの……メルトさん……? メルトさん!?」

 小愛が気付いた時にはもう既にメルトの意識は落ちていた。あまりにも刺激が強すぎたために魔導コンピュータが熱暴走してしまっていたようだ。そして次の日以降、彼女は小愛に執着するようになっていた。

 小愛は重要なことを忘れていたのだ。自分の記憶を元にメルトを女の子にしたという事は、彼女の性事情も小愛と同じようになるという事なのだ。その結果、メルトは性欲の化け物と化してしまっていた。

「私は小愛さんのことが好きなようです♡」
「お、思ってたのと違うなぁ……」

 自分の取った軽率な行動を珍しく反省する小愛なのだった。
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