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EP3 新生魔王軍との戦い
53 エレナの覚悟
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エレナは剣を抜きディアウスへと歩いていく。
「ほう。魔術師の身でありながら、このディアウスに向かってくるか」
「近づかなきゃ、この剣で斬れませんからね」
「しかし、其方の身体能力でどう戦う気だ?」
ディアウスの言う通り、エレナの身体能力では到底渡り合うことなど不可能だ。しかしそれでもエレナは歩みを進める。恐らくアリサの言っていた『アレ』が関係しているのだろう。
「貴方を倒すために、すべてを賭けてやりますよ。……ロストザモク!」
刹那、エレナの内側から先ほどの神をも超える程の魔力が発生する。急にこれほど大量の魔力が溢れることなど通常はあり得ない。彼女は……確実に何らかの代償を払っている。
「……面白い。さあ、かかってくるのだ!」
「言われなくても!!」
「ッ!?」
エレナは地を蹴り、ディアウスへと肉薄し剣を振り下ろす。速い。その一言だった。
形態変化した神も強靭な肉体を持つゼロも超える遥かに速い攻撃。そして速いだけでは無く一撃が重い。弱点に命中させれば確実に致命傷になるだろう。
ディアウスはこれほどの速さを想定していなかったのか、肩口から剣で切り抜かれた。これまでであればすぐに再生が始まっていたはずだが、今回は再生が始まらない。
「……これが神殺しの剣というものの力か。侮れんものだな」
ディアウスは神の力が覚醒している。そのため神殺しの剣は彼女にも効力を発揮するのだ。
高くなった身体能力をさらに魔法で上昇させたエレナは間髪入れずに剣を振る。彼女の身長の3分の2ほどもある神殺しの剣を、余裕で振り回せるだけの身体能力が今の彼女にはある。
エレナの速さと神殺しの剣の力を確認したディアウスは、今までで一番の速さで避け続けるが、エレナの攻撃速度の方が速く再生できない傷は次々と増えて行く。気づけばディアウスの纏う魔力量も半分ほどに減っている。
「ハァ……ハァ……どうです? これが勇者の……本気ですよ!」
「うぐっ……流石に無視出来ないダメージだ。だが其方もいつまでも続けられるわけではなかろう」
攻撃を続けるエレナだが、明らかに息が荒い。あれほどの速度で動き続ければ確かに疲労するだろう。しかしそれでも攻撃速度は変わらないのだ。まるで体力以外の部分を削って肩代わりさせているかのようだ。
「ここで終わらせてやりますよ……!」
「アガッ……ごはぁっ」
エレナの突き出した剣がディアウスの腹部を貫き、吐血させる。初めてディアウスにまともなダメージが入った瞬間だった。
「ガハッ……」
しかし、それと同時にエレナはその場で倒れてしまった。先ほどまで溢れていた膨大な魔力は完全に消滅しており、このままでは命を落とす危険性がある程までになっている。
「エレナ!」
「すみません……とどめは刺せませんでした」
回復魔法をかけるが、体力も魔力も回復しない。それどころかどんどん魔力は霧散していき、顔からは血の気が引いていく。
「ディアベル……もう無理だ。ロストザモクは自身の全てを代償に能力を大幅上昇させる最後の切り札なんだ。どれだけ回復させても、もうじきエレナは死ぬ」
「なん……だと?」
「オレが死ねば……恐らくアリサが勇者扱いになりやがります。あとは任せましたよ……」
「……わかった」
「オレは勇者として、世界を救うための責務は果たせましたかね……」
「貴様は立派に戦った……だから」
全てを言い終える前にエレナの体は塵となり消滅してしまった。遺体すら残らなかった。彼女が存在した事を、勇敢に戦ったと言う事実を残すためにも、この世界を消滅させるわけには行かない。
必ずディアウスを倒す。そう誓った。
「ぐッ……流石に今のは効いたな。これだけの外傷を再生できないのは痛手だ。それに片腕も失った。……だがその程度で負けを認めるような私では無いぞ!」
あれほどの傷を負っていながらディアウスはこちらに向かって飛んでくる。動きに若干のぎこちなさはあるものの戦う上でそれほどの影響は与えないだろう。
「うらぁァァ!!」
「くっ……やはりその剣は厄介だな」
突き出されたディアウスの爪をアリサは神殺しの剣を握り受け止める。国王の壁を数度の攻撃で破壊出来る爪だが、神殺しの剣はそれを容易く弾き返す。それだけでは無い。剣に当たった爪は粉々に砕け散ったのだ。
「エレナの仇は私が取る。ディアウス、かかってこい!」
「ほう。魔術師の身でありながら、このディアウスに向かってくるか」
「近づかなきゃ、この剣で斬れませんからね」
「しかし、其方の身体能力でどう戦う気だ?」
ディアウスの言う通り、エレナの身体能力では到底渡り合うことなど不可能だ。しかしそれでもエレナは歩みを進める。恐らくアリサの言っていた『アレ』が関係しているのだろう。
「貴方を倒すために、すべてを賭けてやりますよ。……ロストザモク!」
刹那、エレナの内側から先ほどの神をも超える程の魔力が発生する。急にこれほど大量の魔力が溢れることなど通常はあり得ない。彼女は……確実に何らかの代償を払っている。
「……面白い。さあ、かかってくるのだ!」
「言われなくても!!」
「ッ!?」
エレナは地を蹴り、ディアウスへと肉薄し剣を振り下ろす。速い。その一言だった。
形態変化した神も強靭な肉体を持つゼロも超える遥かに速い攻撃。そして速いだけでは無く一撃が重い。弱点に命中させれば確実に致命傷になるだろう。
ディアウスはこれほどの速さを想定していなかったのか、肩口から剣で切り抜かれた。これまでであればすぐに再生が始まっていたはずだが、今回は再生が始まらない。
「……これが神殺しの剣というものの力か。侮れんものだな」
ディアウスは神の力が覚醒している。そのため神殺しの剣は彼女にも効力を発揮するのだ。
高くなった身体能力をさらに魔法で上昇させたエレナは間髪入れずに剣を振る。彼女の身長の3分の2ほどもある神殺しの剣を、余裕で振り回せるだけの身体能力が今の彼女にはある。
エレナの速さと神殺しの剣の力を確認したディアウスは、今までで一番の速さで避け続けるが、エレナの攻撃速度の方が速く再生できない傷は次々と増えて行く。気づけばディアウスの纏う魔力量も半分ほどに減っている。
「ハァ……ハァ……どうです? これが勇者の……本気ですよ!」
「うぐっ……流石に無視出来ないダメージだ。だが其方もいつまでも続けられるわけではなかろう」
攻撃を続けるエレナだが、明らかに息が荒い。あれほどの速度で動き続ければ確かに疲労するだろう。しかしそれでも攻撃速度は変わらないのだ。まるで体力以外の部分を削って肩代わりさせているかのようだ。
「ここで終わらせてやりますよ……!」
「アガッ……ごはぁっ」
エレナの突き出した剣がディアウスの腹部を貫き、吐血させる。初めてディアウスにまともなダメージが入った瞬間だった。
「ガハッ……」
しかし、それと同時にエレナはその場で倒れてしまった。先ほどまで溢れていた膨大な魔力は完全に消滅しており、このままでは命を落とす危険性がある程までになっている。
「エレナ!」
「すみません……とどめは刺せませんでした」
回復魔法をかけるが、体力も魔力も回復しない。それどころかどんどん魔力は霧散していき、顔からは血の気が引いていく。
「ディアベル……もう無理だ。ロストザモクは自身の全てを代償に能力を大幅上昇させる最後の切り札なんだ。どれだけ回復させても、もうじきエレナは死ぬ」
「なん……だと?」
「オレが死ねば……恐らくアリサが勇者扱いになりやがります。あとは任せましたよ……」
「……わかった」
「オレは勇者として、世界を救うための責務は果たせましたかね……」
「貴様は立派に戦った……だから」
全てを言い終える前にエレナの体は塵となり消滅してしまった。遺体すら残らなかった。彼女が存在した事を、勇敢に戦ったと言う事実を残すためにも、この世界を消滅させるわけには行かない。
必ずディアウスを倒す。そう誓った。
「ぐッ……流石に今のは効いたな。これだけの外傷を再生できないのは痛手だ。それに片腕も失った。……だがその程度で負けを認めるような私では無いぞ!」
あれほどの傷を負っていながらディアウスはこちらに向かって飛んでくる。動きに若干のぎこちなさはあるものの戦う上でそれほどの影響は与えないだろう。
「うらぁァァ!!」
「くっ……やはりその剣は厄介だな」
突き出されたディアウスの爪をアリサは神殺しの剣を握り受け止める。国王の壁を数度の攻撃で破壊出来る爪だが、神殺しの剣はそれを容易く弾き返す。それだけでは無い。剣に当たった爪は粉々に砕け散ったのだ。
「エレナの仇は私が取る。ディアウス、かかってこい!」
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