20 / 21
20 第二十話
しおりを挟む
「この程度か? 全くもってつまらんな」
「ファイアボール!」
「むぅっ!?」
魔王が俺たちにハルバードを振り下ろそうとした瞬間、後ろから魔法が飛んできた。
「やったか……?」
メリアの放った魔法攻撃は魔王に着弾し、凄まじい爆発を起こした。
いくら魔王と言えど、これだけの威力の魔法をまともに食らえばただでは済まないはず。
「ほう、中々良い威力だ」
しかし期待とは裏腹に、魔王は平然と煙の中から姿を現した。
「そんな……全く効いていないの……?」
「いいや、全くと言う訳では無いな。少しではあるが奴の魔力が乱れた」
「ディアス、わかるのか? なら何か手は無いだろうか」
近接攻撃も魔法攻撃も目立ったダメージにならなかった。
恐らく真正面からぶつかっても駄目だ。
「ふむ、余もあれほどの強者とは出会ったことが無いのだ」
「そうか……」
考えてみればそうだった。ああまでしてわざわざ俺に付いて来たんだ。
今までに俺以上の相手には出会っていないと考えるのが自然だった。
「いや、攻撃が効いているのであればまだ可能性はある。俺とアルバートが奴の相手をしている間に、二人は出来るだけ魔法攻撃を当ててくれ。少しでも火力を上げたいからサポートもいらない」
「でもそれでは二人が危険すぎるのではありませんか!?」
「いや、それしか無い。レインの言う通り、今奴に通用する攻撃はメリアの魔法攻撃だけだ」
確かに前線で戦うのは危険だ。だがそれは今に限った話ではない。
今までだって俺たちは前衛と後衛に分かれて戦って来た。
サポートが無いというのは不安要素ではあるが、今この状況では贅沢は言ってられない。
限られたリソースを少しでも有効利用するしかないんだ。
「……わかった。絶対に死なないでよね」
「おう、二度も死ぬつもりはないさ」
「行くぞアルバート!」
俺とレインは再び魔王の元へと向かって行く。
「作戦会議は終わったか?」
「それがわかってて見逃すなんて、随分気前が良いんだな」
「ハンデだとも。そうでもしなければ貴様らは我には敵わないからな」
随分と舐められたものだが、ハンデをくれると言うのであれば有効利用しない手は無い。
「しかし、それでもなお我に勝てるかはわからんな」
「余裕でいられるのも今の内だ。レイン!」
「ああ!」
さっきと違って今度は二人同時に斬りこむ。
「うぉぉっ!!」
片方が態勢を立て直している内に、もう片方が間髪入れずに攻撃を行う。
それを繰り返し続けて魔王の隙を狙う。
「おお、良いぞ良いぞ。これでこそ戦いと言うものだ!」
魔王はハルバードで攻撃を受け流すが、それでもさばき切れていないようだった。
だがそれでも鎧に阻まれ致命傷にはならない。
「今だ!」
レインの掛け声で横へ避ける。
次の瞬間、魔王に魔法が着弾し爆発を起こした。
メリアの魔法攻撃だ。彼女の詠唱が終了したのをレインは気付いていた。
「次!」
メリアの声を聞き、俺たちは再び攻撃を開始する。
また詠唱が終わるまでの時間稼ぎをしなければいけない。
「ふっ……ふははっは! それほどの戦闘技術を持っていながら、最弱の名を払拭することが出来なかった哀れな冒険者よ! そろそろ我も本気を出そうでは無いか!」
「何!?」
耳を疑いたくなった。
魔王はまだ本気を出していなかったというのもそうだが、それよりも……。
「何故アンタが俺たちが最弱の名を持っていたことを知っているんだ……?」
魔王は元の世界における俺たちのことを何故か知っていた。
そのことが気になって仕方が無い。
「ああ、そのことか。ふっ、今となっては隠す必要もあるまい。何を隠そう、我も貴様らと同じように別の世界からやってきたのだ」
「何だって……?」
魔王の口から出て来たのは想像もしていなかった言葉だった。
「ファイアボール!」
「むぅっ!?」
魔王が俺たちにハルバードを振り下ろそうとした瞬間、後ろから魔法が飛んできた。
「やったか……?」
メリアの放った魔法攻撃は魔王に着弾し、凄まじい爆発を起こした。
いくら魔王と言えど、これだけの威力の魔法をまともに食らえばただでは済まないはず。
「ほう、中々良い威力だ」
しかし期待とは裏腹に、魔王は平然と煙の中から姿を現した。
「そんな……全く効いていないの……?」
「いいや、全くと言う訳では無いな。少しではあるが奴の魔力が乱れた」
「ディアス、わかるのか? なら何か手は無いだろうか」
近接攻撃も魔法攻撃も目立ったダメージにならなかった。
恐らく真正面からぶつかっても駄目だ。
「ふむ、余もあれほどの強者とは出会ったことが無いのだ」
「そうか……」
考えてみればそうだった。ああまでしてわざわざ俺に付いて来たんだ。
今までに俺以上の相手には出会っていないと考えるのが自然だった。
「いや、攻撃が効いているのであればまだ可能性はある。俺とアルバートが奴の相手をしている間に、二人は出来るだけ魔法攻撃を当ててくれ。少しでも火力を上げたいからサポートもいらない」
「でもそれでは二人が危険すぎるのではありませんか!?」
「いや、それしか無い。レインの言う通り、今奴に通用する攻撃はメリアの魔法攻撃だけだ」
確かに前線で戦うのは危険だ。だがそれは今に限った話ではない。
今までだって俺たちは前衛と後衛に分かれて戦って来た。
サポートが無いというのは不安要素ではあるが、今この状況では贅沢は言ってられない。
限られたリソースを少しでも有効利用するしかないんだ。
「……わかった。絶対に死なないでよね」
「おう、二度も死ぬつもりはないさ」
「行くぞアルバート!」
俺とレインは再び魔王の元へと向かって行く。
「作戦会議は終わったか?」
「それがわかってて見逃すなんて、随分気前が良いんだな」
「ハンデだとも。そうでもしなければ貴様らは我には敵わないからな」
随分と舐められたものだが、ハンデをくれると言うのであれば有効利用しない手は無い。
「しかし、それでもなお我に勝てるかはわからんな」
「余裕でいられるのも今の内だ。レイン!」
「ああ!」
さっきと違って今度は二人同時に斬りこむ。
「うぉぉっ!!」
片方が態勢を立て直している内に、もう片方が間髪入れずに攻撃を行う。
それを繰り返し続けて魔王の隙を狙う。
「おお、良いぞ良いぞ。これでこそ戦いと言うものだ!」
魔王はハルバードで攻撃を受け流すが、それでもさばき切れていないようだった。
だがそれでも鎧に阻まれ致命傷にはならない。
「今だ!」
レインの掛け声で横へ避ける。
次の瞬間、魔王に魔法が着弾し爆発を起こした。
メリアの魔法攻撃だ。彼女の詠唱が終了したのをレインは気付いていた。
「次!」
メリアの声を聞き、俺たちは再び攻撃を開始する。
また詠唱が終わるまでの時間稼ぎをしなければいけない。
「ふっ……ふははっは! それほどの戦闘技術を持っていながら、最弱の名を払拭することが出来なかった哀れな冒険者よ! そろそろ我も本気を出そうでは無いか!」
「何!?」
耳を疑いたくなった。
魔王はまだ本気を出していなかったというのもそうだが、それよりも……。
「何故アンタが俺たちが最弱の名を持っていたことを知っているんだ……?」
魔王は元の世界における俺たちのことを何故か知っていた。
そのことが気になって仕方が無い。
「ああ、そのことか。ふっ、今となっては隠す必要もあるまい。何を隠そう、我も貴様らと同じように別の世界からやってきたのだ」
「何だって……?」
魔王の口から出て来たのは想像もしていなかった言葉だった。
0
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。
朱本来未
ファンタジー
魔術師の大家であるレッドグレイヴ家に生を受けたヒイロは、15歳を迎えて受けた成人の儀で盗賊の天職を授けられた。
天職が王家からの心象が悪い盗賊になってしまったヒイロは、廃嫡されてレッドグレイヴ領からの追放されることとなった。
ヒイロは以前から魔術師以外の天職に可能性を感じていたこともあり、追放処分を抵抗することなく受け入れ、レッドグレイヴ領から出奔するのだった。
パーティを追放された鈺魔導士はパラメータチェンジ魔法を覚えたら誰にも負けなくなった
かにくくり
ファンタジー
【鈺魔導士】という役に立たない魔法ばかり覚える冒険職に就いていた主人公チェイン・クローゼは、冒険者パーティ【ヘルクレス】の足を引っ張りまくっていた。
ついにはパーティを追放されてしまう。
しかし追放された直後に覚えた魔法は今まで誰も習得した事がない最強の魔法だった。
もう【ヘルクレス】とかどうでもいいんで、他のパーティに合流して無双します。
でも基本ステータスはレベル1のそれなので魔法を使わないとめちゃくちゃ弱いです。
※表紙のマリーニャ(+シャミィ)は六汁さんに描いて頂きました。
ありがとうございます。 ('-'人)
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる