上 下
6 / 21

6 第六話

しおりを挟む
「アンタたち、どこ行って……って君は……」

 男二人に連れられて行きついた場所。そこは街外れの小屋だった。
 いやそれはまだ良いとして、そこにいた少女の方に驚いた。

「貴方はこの前の……」

 この街に来た時に俺を助けてくれたあの少女だったのだ。

「ここのギルド専属冒険者になったってのは聞いていたけど、こんなにも早く順応するとは……流石は高ランクの冒険者様ね」
「その、高ランクと言うのは少し……」
「違うのか?」
「おう、違うのか?」

 うーん、男二人の圧が凄い。下手な事を言えば今ここで潰されそうな程だ。
 よし、ひとまず話を合わせるとしよう。

「今日は依頼を終えて戻ってきたところでして」
「そうなの? ターゲットは何? フレイムドラゴン? それとも最近有名なプライムウルフ?」

 おお、どれもこれも危険度の高い魔物ばかり。期待が重い……。

「いえ、今日はアイアンアントを……」
「え、あのDランクの?」

 不味い、危険度が低すぎたか?

「きょ、今日は少し調子が良く無くてですね」
「ああそういうことか。無理は良くないからな。いかに優秀な冒険者であっても病魔には勝てんし、そのまま魔物と相対しても本当の力は出んだろうさ」

 どうやら納得してくれたようだ。良かった。

「それで、何故ここに?」
「あ、ああそうでした。そこのお二方にお願いされまして……」
「そうだったぜ。それが本題だった。これまで師匠がこの町一番の魔法使いだった中、この方はそれ以上だというからな。師匠をさらなる高みへ連れて行ってくれるんじゃないかと思って連れてきやした」
「そうだったのか。いやあ私の弟子たちが急にすまなかったね」
「いえ大丈夫です全然」

 最初は怖いし恐ろしかったが、聞けば師匠思いの良い奴らじゃないか。
 人は見た目によらないってやつか。

「じゃあ早速教えて貰おうかな」
「えぇっ!?」
「なんて冗談さ。君、今日は調子が良くないんだろう? またの機会にお願いするよ。あ、そうだうっかりしていた。私はメアリーだ。よろしく」
「俺はアルバートです。そ、それではまた今度!」

 とりあえず今日はそのまま解散することになった。
 さてどうしようか。俺には彼女に教えられるものが無い……。
 魔力量も魔法自体も俺がどうこう出来るものなんて……よし、それはその時考えよう。
 今日はさっさと依頼達成の報告をして家へ帰ろう。

 俺はそのままの足でギルドへ行き依頼の達成報告を行った。
 アイアンアントの達成報酬に専属契約の上乗せ分が合わさってかなりの量だ。
 これだけあればしばらくは不自由なく暮らせるだろう。宿代が必要無いのも嬉しい所だ。

 となれば後は……魔法に関してか。
 色々と調べてみるしか無いな……。突き詰めて行けば、もしかしたら何かしらはメアリーに教えられるかもしれないし。
 それが出来なければ……素直に謝ろうそうしよう。謝るのは慣れているしな。

「……はぁ」

 ベッドに寝転がり、天井を見つめながら今日起こったことを思い出す。
 思えば今日一日で本当に色々なことがあった。
 死んだかと思えば俺だけ何故か生きているし、なんか力も魔力もけた違いになっているし。
 こんなに良い家貰って、今こうしてフカフカのベッドで寝られている。

 どれもこれも、今までの生活からは考えられない。
 だけど、なぜこうなったのかも今の俺にはわからない。
 ……とにかく情報が必要だ。
 少しでも多くの情報を得て、元の世界に……そしてアイツらを……。

「あぁ、なんだか凄く疲れたな……眠い……」

 意識が朦朧としてきた。もう寝よう……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する

平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。 しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。 だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。 そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...