5 / 21
5 第五話
しおりを挟む
森を進んでどれくらい経っただろうか。
日の光の位置からしてそう経ってはいないはずだが、早めに達成するに越したことは無い。
と、どうやら向こうから来てくれたようだ。
カンカンと甲高い金属が弾けるような音を立てながら森の中を闊歩する存在。
種族としてもかなり能力が高く、群れを成さずに自由に行動している。
と言うより、他の個体が縄張りに入ることを極度に嫌う性質がある。
「ついに現れたな……アイアンアント……!」
全身が銀色の金属のような硬い外殻で覆われている。そのため斬撃攻撃は効果が薄い。
だがそんな堅牢な体も高温には弱い。炎で燃やせば体の内部が焼けて動きが鈍くなる。
しかし問題は、俺が使える炎系の攻撃は超初歩的な炎魔法『ファイアアロー』だけなのだ。
お世辞にも火力があるとは言えない。ましてやアイアンアントレベルの相手に効果的かどうかと言われれば……。
いや、とにかくやるしか無いんだ。
倒せなければ終わり。死に物狂いでやって見せろ俺……!
「ギギギ……」
ヤツは金属の擦れるような音を立てて歩き続けている。
なら今の内に出来るだけ近づかせてもらおう。
極力足音を立てないようにしてヤツの背後にまで近づいて行く。
後はファイアアローを……頼む、これで終わってくれ……!
「燃えろ炎の矢……ファイアアロー!」
「グギギィッッ!?」
不意打ちの一撃は見事命中した。
だがこれだけで終わるとは思えない。後何発必要だろうか……。
俺の魔力量だと使えて後二発程……ってうん?
魔力が……ほとんど減っていない……?
ファイアアローは魔力消費量が300程のはずだ。当然だが俺の魔力量ではそうポンポン撃てるものでは無い。
しかし、今の俺の魔力量は恐らくまだ九割以上残っている。
「ギ……ギィ……」
「まだ生きていたか……って、え?」
これまた不思議なことが起きていた。
とても火力があるとは言えないはずのファイアアローたった一発で、アイアンアントが倒れたのだ。
「信じられない……そ、そうだとどめを……!」
そうだ。まだ安心はできない。とどめを刺さない限り魔物は襲って来ると考えるべきだ。
その昔、倒したと思って油断して後ろから喰われた冒険者もいたって言うしな。
「ふぅ……これで流石に死んだだろう」
短刀を使って完全に頭と胴体を別れさせた。
これも驚いたのだが、短刀の切れ味が今までとは比べようも無い程に跳ね上がっている。
何と言うか、俺の何もかもが上方修正されていると言った感覚だ。一種のバフ……なのか?
まあいい。依頼は達成したんだ。今は街に戻ろう。
……そうして街へ戻った俺をまず最初に出迎えたのは厳つい冒険者の二人組だった。
「よう、アンタ……魔力量が凄まじいってんで専属契約したんだってな」
「あ、ああそうだが……」
ガラが悪いにも程がある……。
もしや急に現れて専属契約することになった俺に対して不信感を持っているのか?
いやそれもそうか。不自然だもんな……。
「アンタが何モンなのかは知らねえが、この街で一番の魔法使いってのはなぁ……既に決まってんだよ」
「おう、既に決まってんだよ」
「そ、それは申し訳ないことをしました……その、今持ち合わせが無くて……」
こんな時は金を払って退散するに限るが……今俺は金を持っていない。不味い。
何とか見逃してくれ頼むから……。
「金ェ? そんなのいらねえんだよ」
「おう、いらねえんだよ」
「俺たちの目的はたった一つ……!」
「おう、たった一つ」
男二人はジリジリと近づいてくる。
「しまった……」
いつの間にか後ろには壁があった。もう逃げられない。
「す、すみません……どうか命だけは……」
「俺たちの師匠に、魔法を教えていただけませんか!」
「おう、教えていただけませんか!」
「ひぃいっ……って……えぇ?」
男二人は頭を下げて俺に頼み込んできたのだった。
日の光の位置からしてそう経ってはいないはずだが、早めに達成するに越したことは無い。
と、どうやら向こうから来てくれたようだ。
カンカンと甲高い金属が弾けるような音を立てながら森の中を闊歩する存在。
種族としてもかなり能力が高く、群れを成さずに自由に行動している。
と言うより、他の個体が縄張りに入ることを極度に嫌う性質がある。
「ついに現れたな……アイアンアント……!」
全身が銀色の金属のような硬い外殻で覆われている。そのため斬撃攻撃は効果が薄い。
だがそんな堅牢な体も高温には弱い。炎で燃やせば体の内部が焼けて動きが鈍くなる。
しかし問題は、俺が使える炎系の攻撃は超初歩的な炎魔法『ファイアアロー』だけなのだ。
お世辞にも火力があるとは言えない。ましてやアイアンアントレベルの相手に効果的かどうかと言われれば……。
いや、とにかくやるしか無いんだ。
倒せなければ終わり。死に物狂いでやって見せろ俺……!
「ギギギ……」
ヤツは金属の擦れるような音を立てて歩き続けている。
なら今の内に出来るだけ近づかせてもらおう。
極力足音を立てないようにしてヤツの背後にまで近づいて行く。
後はファイアアローを……頼む、これで終わってくれ……!
「燃えろ炎の矢……ファイアアロー!」
「グギギィッッ!?」
不意打ちの一撃は見事命中した。
だがこれだけで終わるとは思えない。後何発必要だろうか……。
俺の魔力量だと使えて後二発程……ってうん?
魔力が……ほとんど減っていない……?
ファイアアローは魔力消費量が300程のはずだ。当然だが俺の魔力量ではそうポンポン撃てるものでは無い。
しかし、今の俺の魔力量は恐らくまだ九割以上残っている。
「ギ……ギィ……」
「まだ生きていたか……って、え?」
これまた不思議なことが起きていた。
とても火力があるとは言えないはずのファイアアローたった一発で、アイアンアントが倒れたのだ。
「信じられない……そ、そうだとどめを……!」
そうだ。まだ安心はできない。とどめを刺さない限り魔物は襲って来ると考えるべきだ。
その昔、倒したと思って油断して後ろから喰われた冒険者もいたって言うしな。
「ふぅ……これで流石に死んだだろう」
短刀を使って完全に頭と胴体を別れさせた。
これも驚いたのだが、短刀の切れ味が今までとは比べようも無い程に跳ね上がっている。
何と言うか、俺の何もかもが上方修正されていると言った感覚だ。一種のバフ……なのか?
まあいい。依頼は達成したんだ。今は街に戻ろう。
……そうして街へ戻った俺をまず最初に出迎えたのは厳つい冒険者の二人組だった。
「よう、アンタ……魔力量が凄まじいってんで専属契約したんだってな」
「あ、ああそうだが……」
ガラが悪いにも程がある……。
もしや急に現れて専属契約することになった俺に対して不信感を持っているのか?
いやそれもそうか。不自然だもんな……。
「アンタが何モンなのかは知らねえが、この街で一番の魔法使いってのはなぁ……既に決まってんだよ」
「おう、既に決まってんだよ」
「そ、それは申し訳ないことをしました……その、今持ち合わせが無くて……」
こんな時は金を払って退散するに限るが……今俺は金を持っていない。不味い。
何とか見逃してくれ頼むから……。
「金ェ? そんなのいらねえんだよ」
「おう、いらねえんだよ」
「俺たちの目的はたった一つ……!」
「おう、たった一つ」
男二人はジリジリと近づいてくる。
「しまった……」
いつの間にか後ろには壁があった。もう逃げられない。
「す、すみません……どうか命だけは……」
「俺たちの師匠に、魔法を教えていただけませんか!」
「おう、教えていただけませんか!」
「ひぃいっ……って……えぇ?」
男二人は頭を下げて俺に頼み込んできたのだった。
0
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる