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(おまけ編その1)そうだ、大司教になろう
第204話 おれはビビリだから分かるんだ
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その頃、黒ちゃんは自宅でメイにメッセージをし終えて、考え込んでいた。
「司教になればメイスが使えるな……。あれば正しく鈍器の最強武器。前に一度僧侶だったのはラッキーだった。私も行くべきだな」
メイスとは金属製の頭部と木製の柄を組み合わせた攻撃力の高い棍棒で、司教と大司教のみが使える武器だった。
「メイスと防御魔法があれば盾は要らぬか。しかも僧侶の杖も硬いものなら鈍器にもなる……。これは面白い。ふふ……ふははは!」
黒ちゃんは少し不気味に笑うと、VRグラスをかけてゲームの世界に入っていった。
ー エストンレルトの大聖堂 ー
黒ちゃんはゲームに入ってすぐエストンレルトに転移すると、街の中心にある大聖堂へ入っていった。
大聖堂に入ると、シスターたちが黒ちゃんを迎えた。
「プレイヤーネーム、黒ちゃん様。ようこそおいでくださいました」
黒ちゃんは出迎えたシスターに膝を突いて静かに頭を下げた。
するとシスターの1人が黒ちゃんに尋ねた。
「黒ちゃん様。あなたは今は騎士ですが過去は僧侶でしたね。司教になるために来られたのですね」
「はい」
「では質問させてください。もし、この世から神が消えてしまったらどう致しますか」
「もし神が消えたならば、我らが神の尊さ、ご慈悲、ご意思をお伝えしましょう。その言葉は人々を救い、喜びを与えるでしょう」
「う……。ううっ!」
黒ちゃんの言葉を聞いたシスターは涙を流すと黒ちゃんに言った。
「それが正しく望む答えです。この封書をお受け取りください。これを持ってヤーヤムの街へ行き、コイン神父にお渡しください」
「承知しました」
黒ちゃんは封書を受け取ると急いでヤーヤムの街へと向かった。
その頃、メイとアーボンはオルゴールを探していた。
「アーボンさん、どう?」
「いや。なんかさぁ、家の扉をノックすると英語で不機嫌そうに何か言われるんだよね」
「はは。まぁ、そうだよね。……って、え? 何か聞こえない?」
♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬
「え? 何か聞こえるか? ……。ん? あっ、オルゴールの音!」
「だよね! え、どこ?」
メイとアーボンは耳を澄ますと、一軒の家の窓からオルゴールの音が聞こえてきていた。
「あ、あそこ!」
2人は走って家に近づくと、窓から少女が話しかけてきた。
「Who are you?」
「え、ふわ湯?」
「おれ英語ぜんぜんわからないぞ」
すると2人の声を聞いた少女は日本語で話しかけてきた。
「あなた、だあれ?」
それを聞いたアーボンが答えた。
「あ、よ、よかった日本語だ。おれはアーボン。こっちはメイちゃんな」
「そう。ねえ、お願いがあるの。お母さんを探してほしいの」
「え、お母さん?」
「うん。お母さんは居なくなったお父さんを探しに行って帰ってこないの」
「そっか、それは心配だな……」
するとメイが泣きながら少女に言った。
「ううっ……。お父さんもお母さんも居ないとか、まじ心配だよね。おっけー! わたしたちが見つけるから!」
「お、おう任せとけ!」
アーボンも一緒に返事をすると少女は窓を開けてオルゴールを差し出した。
「これ受け取って。お父さんが大好きな曲なの。きっとこの曲を聞いたら思い出して帰ってきてくれる」
メイはオルゴールを受け取ると少女に言った。
「わかった。任せて!」
少女は笑顔になると、メイとアーボンもつられて笑顔になった。
◆
メイとアーボンは家を離れて歩いていると、オルゴールを見ていたメイが何か文字が書いてある事に気がついた。
「COIGNE? コイグネ?」
アーボンはメイが持っているオルゴールを覗き込むとメイに言った。
「あ、これきっとコインって書いてあるんだよ。横にはVIORI……。ビオリかな……?」
「あ、わかった! このビオリって人がお母さんで、コインって人がお父さんなんだよ!」
「え? まさか、コインって……」
「あの子、コイン神父の娘さんだ!」
「まじか! でもお父さんもお母さんも家に居ないって」
カン カン カン カン……
するとその時、アーボンは誰かが下水道からハシゴを登ってくる音を聞いたが、ただならぬ気配を感じてメイに言った。
「や……、やばいぞ」
「え、何?」
「おれはビビリだから分かるんだ。強いヤツが来るぞ」
「え、まじで!」
メイとアーボンが身構えると、下水道のハシゴを登る音が大きくなってきた。
カン カン カン カン……
アーボンは素早く剣を抜くと、メイに言った。
「こいつ、余裕感がハンパない。強ぇやつって妙に余裕があるんだよ。気をつけろ」
「う、うん」
カン カン カン カン……
ゆっくりとハシゴを登ってくる音にアーボンは汗を流すと、両手剣を握りしめてメイに言った。
「やっぱりあの余裕、普通じゃねぇ。くっ……。くそっ! 先手必勝だ! おりゃぁああ!」
「ちょっ、アーボンさん!」
アーボンが両手剣で斬りかかると、下水道から出てきた人物は素早く飛び出して、タックルでアーボンを吹き飛ばした。
ゴッ!
「うげっ!」
するとメイが声をあげた。
「あ、あれ!? 黒ちゃんさん?」
アーボンも倒れながら慌てて振り返ると、なんと黒ちゃんが立っていた。
黒ちゃんは棍棒と盾を仕舞うと、吹き飛ばしたアーボンを引き起こしながらメイに言った。
「メイさんアーボンさん、驚かせてしまってすみません。お2人の投稿を見て、わたしも司教になろうと来てしまいました」
「え……、そうなんですか? てか、黒ちゃんさん防御とか回復って感じじゃないんですけど」
「え、あ、ははは。実はメイスが使いたくて……」
「メイス?」
それを聞いていたアーボンはメイに説明した。
「メイスは鉄の棍棒みたいなもんで、めっちゃ強いんだよ。けど司教と大司教しか使えないんだ」
「あ、そっか。だから黒ちゃんさんも使いたいんだ」
メイの言葉を聞いた黒ちゃんは少し恥ずかしそうに頭を掻きながら答えた。
「その通りです。ですのでやって来てしまいました。よかったらクエストをご一緒にと思いまして。ははは」
「ほんとに!? 仲間が増えれば安心感ハンパない!」
「それは良かったです。共に参りましょう」
こうして黒ちゃんも仲間になり、3人でクエストを進める事になった。
「司教になればメイスが使えるな……。あれば正しく鈍器の最強武器。前に一度僧侶だったのはラッキーだった。私も行くべきだな」
メイスとは金属製の頭部と木製の柄を組み合わせた攻撃力の高い棍棒で、司教と大司教のみが使える武器だった。
「メイスと防御魔法があれば盾は要らぬか。しかも僧侶の杖も硬いものなら鈍器にもなる……。これは面白い。ふふ……ふははは!」
黒ちゃんは少し不気味に笑うと、VRグラスをかけてゲームの世界に入っていった。
ー エストンレルトの大聖堂 ー
黒ちゃんはゲームに入ってすぐエストンレルトに転移すると、街の中心にある大聖堂へ入っていった。
大聖堂に入ると、シスターたちが黒ちゃんを迎えた。
「プレイヤーネーム、黒ちゃん様。ようこそおいでくださいました」
黒ちゃんは出迎えたシスターに膝を突いて静かに頭を下げた。
するとシスターの1人が黒ちゃんに尋ねた。
「黒ちゃん様。あなたは今は騎士ですが過去は僧侶でしたね。司教になるために来られたのですね」
「はい」
「では質問させてください。もし、この世から神が消えてしまったらどう致しますか」
「もし神が消えたならば、我らが神の尊さ、ご慈悲、ご意思をお伝えしましょう。その言葉は人々を救い、喜びを与えるでしょう」
「う……。ううっ!」
黒ちゃんの言葉を聞いたシスターは涙を流すと黒ちゃんに言った。
「それが正しく望む答えです。この封書をお受け取りください。これを持ってヤーヤムの街へ行き、コイン神父にお渡しください」
「承知しました」
黒ちゃんは封書を受け取ると急いでヤーヤムの街へと向かった。
その頃、メイとアーボンはオルゴールを探していた。
「アーボンさん、どう?」
「いや。なんかさぁ、家の扉をノックすると英語で不機嫌そうに何か言われるんだよね」
「はは。まぁ、そうだよね。……って、え? 何か聞こえない?」
♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬♪♫♬
「え? 何か聞こえるか? ……。ん? あっ、オルゴールの音!」
「だよね! え、どこ?」
メイとアーボンは耳を澄ますと、一軒の家の窓からオルゴールの音が聞こえてきていた。
「あ、あそこ!」
2人は走って家に近づくと、窓から少女が話しかけてきた。
「Who are you?」
「え、ふわ湯?」
「おれ英語ぜんぜんわからないぞ」
すると2人の声を聞いた少女は日本語で話しかけてきた。
「あなた、だあれ?」
それを聞いたアーボンが答えた。
「あ、よ、よかった日本語だ。おれはアーボン。こっちはメイちゃんな」
「そう。ねえ、お願いがあるの。お母さんを探してほしいの」
「え、お母さん?」
「うん。お母さんは居なくなったお父さんを探しに行って帰ってこないの」
「そっか、それは心配だな……」
するとメイが泣きながら少女に言った。
「ううっ……。お父さんもお母さんも居ないとか、まじ心配だよね。おっけー! わたしたちが見つけるから!」
「お、おう任せとけ!」
アーボンも一緒に返事をすると少女は窓を開けてオルゴールを差し出した。
「これ受け取って。お父さんが大好きな曲なの。きっとこの曲を聞いたら思い出して帰ってきてくれる」
メイはオルゴールを受け取ると少女に言った。
「わかった。任せて!」
少女は笑顔になると、メイとアーボンもつられて笑顔になった。
◆
メイとアーボンは家を離れて歩いていると、オルゴールを見ていたメイが何か文字が書いてある事に気がついた。
「COIGNE? コイグネ?」
アーボンはメイが持っているオルゴールを覗き込むとメイに言った。
「あ、これきっとコインって書いてあるんだよ。横にはVIORI……。ビオリかな……?」
「あ、わかった! このビオリって人がお母さんで、コインって人がお父さんなんだよ!」
「え? まさか、コインって……」
「あの子、コイン神父の娘さんだ!」
「まじか! でもお父さんもお母さんも家に居ないって」
カン カン カン カン……
するとその時、アーボンは誰かが下水道からハシゴを登ってくる音を聞いたが、ただならぬ気配を感じてメイに言った。
「や……、やばいぞ」
「え、何?」
「おれはビビリだから分かるんだ。強いヤツが来るぞ」
「え、まじで!」
メイとアーボンが身構えると、下水道のハシゴを登る音が大きくなってきた。
カン カン カン カン……
アーボンは素早く剣を抜くと、メイに言った。
「こいつ、余裕感がハンパない。強ぇやつって妙に余裕があるんだよ。気をつけろ」
「う、うん」
カン カン カン カン……
ゆっくりとハシゴを登ってくる音にアーボンは汗を流すと、両手剣を握りしめてメイに言った。
「やっぱりあの余裕、普通じゃねぇ。くっ……。くそっ! 先手必勝だ! おりゃぁああ!」
「ちょっ、アーボンさん!」
アーボンが両手剣で斬りかかると、下水道から出てきた人物は素早く飛び出して、タックルでアーボンを吹き飛ばした。
ゴッ!
「うげっ!」
するとメイが声をあげた。
「あ、あれ!? 黒ちゃんさん?」
アーボンも倒れながら慌てて振り返ると、なんと黒ちゃんが立っていた。
黒ちゃんは棍棒と盾を仕舞うと、吹き飛ばしたアーボンを引き起こしながらメイに言った。
「メイさんアーボンさん、驚かせてしまってすみません。お2人の投稿を見て、わたしも司教になろうと来てしまいました」
「え……、そうなんですか? てか、黒ちゃんさん防御とか回復って感じじゃないんですけど」
「え、あ、ははは。実はメイスが使いたくて……」
「メイス?」
それを聞いていたアーボンはメイに説明した。
「メイスは鉄の棍棒みたいなもんで、めっちゃ強いんだよ。けど司教と大司教しか使えないんだ」
「あ、そっか。だから黒ちゃんさんも使いたいんだ」
メイの言葉を聞いた黒ちゃんは少し恥ずかしそうに頭を掻きながら答えた。
「その通りです。ですのでやって来てしまいました。よかったらクエストをご一緒にと思いまして。ははは」
「ほんとに!? 仲間が増えれば安心感ハンパない!」
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====================================
2020.03.21_掲載
2020.05.24_100話達成
2020.09.29_200話達成
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