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みんなでサブクエスト

第160話 ライラ、偵察する

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 ライラと戦っていたプレイヤーはきを見て逃げ出すと、4人のプレイヤーたちと合流した。

 ライラはプレイヤーたちをにらみつけながら武器を構えると、静かに尋ねた。

「おい、お前たちアーボンの手下だな」

「手下? まぁ、そんなところだな。お前らは俺たちの仕事の邪魔をしに来たのか?」

「仕事? なんだ、金でももらえるのか」

「はぁ? 当たり前だろ。俺たちゃアーボンさんから金をもらってやとわれてるプロ・プレイヤーだ」

「なんだと?」

「このダンジョンでアーボンさんの事をぎ回るやつは殺す。仕事の邪魔になるんでな」

「よかろう。が悪いが相手になろう」

「はぁ? 相手にならねぇだろ!?」

 プレイヤーの1人はそう言い放つと、ハンマーを振り上げてライラに叩きつけた。

「おらぁ!」

 ガコン!

「くっ!」

「おらぁぁあ!」

 ガコン! ガコン!

 ハンマーの連続攻撃にライラが防戦一方になると、海がハンマーの騎士に槍を突き出した。

「やあっ!」

 ガキン!

「あっ!」

 海が槍を突き出した瞬間、他の女性プレイヤーがスピア(盾を持たずに戦う両手槍)で海の槍を弾いた。

 そしてスピア使いの騎士は笑いながら海に言った。

「ランス使いさん、こんにちは。盾持って戦うなんてカッコ悪いわね」

 ガキン!

「うわっ!」

 女性騎士は炎をまとったスピアを海の盾を叩きつけると笑いながら連続攻撃を放ってきた。

「あはははははは! めっちゃ弱いこの子!」

 ガキン! ガキンガキン! ガキン!

「その盾、耐久値たいきゅうちいつまで持つのかしら!?」

「ええっ!?」

「あたしのスピアは爆炎タートルのスピア! 格が違うのよ!」

 ガキン! ガキンガキン! ガキン! ガキンガキン!

「う、うわっ!」

「あははははは!」

 ガキン! ガキンガキン!  ガキンガキンガキン! ガキョッ!

「あっ!」

 なんと、海の盾は耐久値が限界に達して半分に割れてしまった。

「さぁ、どうするのかしら!?」

「く、くそう!」

 海は盾を無くしたが槍を両手で持って構えた。

「なに? あなたやる気なの?」

「ぼ、僕は弱い! だけど逃げない!」

「はぁ? なんか熱いわね。でもホントそういうの嫌い。死ねば」

 ヒュッ!

 ドッ!

「えっ」

 なんとその瞬間、どこからともなく飛んできた矢がスピアの騎士にヘッドショットを決めた。

 そこへすかさず海が槍を突いた。

「やぁぁああ!」

 ドスッ!

「いたっ!」

 その瞬間、横で戦っていたライラが、自分の盾を女性騎士の頭へ向かって投げつけた。

 ヒュッ、ゴンッ!!

「ぎゃっ!」

 ドスッ! ドスッ!

「きゃぁ!」

 そこへ海が突きを決めると、女性騎士は思わず後ろへ下がった。

 ヒュッヒュッ!

 ドドッ!

「う、うそ……」

 シュゥゥゥウウウ

 なんと、さらに矢が飛んできて女性騎士にヘッドショットを決めると、女性騎士は静かに消滅していった。

 ライラはそれを見届けると、雷獣パルルの槍と盾に持ち替えてハンマーの騎士に突撃していった。

 海はその時、目の前に転がっているライラの盾を拾って使おうとしたが「使用不可」の文字が現れた。

「やっぱりダメか!」

 すると海は苦し紛れにベンドレから買ってもらったモリブデンの両手剣を出現させて構えた。

 するとプレイヤーたちの中から細身の両手剣の騎士が前に出てきた。

「へぇ、両手剣か。なら僕が相手だ」

 騎士も両手剣を構えると、なぜか突然動かなくなって苦しみ始めた。

「なっ……。く、くくっ……、HPが……」

 シュピン!

「ぎゃっ!」

 シュゥゥゥウウウ

 なんと、突然両手剣の騎士が消滅していった。

 その時、黒いローブを来た人影が横切るのが見えた。

「あっ!」

 しかし、その人影はすぐに姿を消してしまった。

 海が驚いていると、残ったプレイヤーたちは海とライラから距離をとって話し始めた。

「おい、何があった!」

「い、いや、わからん」

「突然死んだぞ」

「あ、ああ。しかも矢も飛んでくる」

「おい、味方を呼べ!」

「もう呼んだ! すぐ来るはずだ」

 ライラと海は手下のプレイヤーたちが狼狽うろたえているのを見ながら、慎重に武器を構えた。

 そして、手下のプレイヤーたちをうかがっていると、突然ライラと海の背後から声がした。

「あなたたち、アーボンをさぐっているの?」

「えっ!」
「はい、そうです!」

 2人が振り返ると、黒いローブにキツネの面を被った小柄なプレイヤーがいた。

「あなたは……」

「いいから、こっちに来て」

 キツネの面のプレイヤーはそう言うと、ダンジョンの分かれ道を奥へと走っていった。

「海、行くぞ! 今はこの人を信用しよう。やつらの仲間が来たら勝ち目はない」

「は、はい!」

 走り出すライラたちを見た手下のプレイヤーたちは慌ててライラたちを追いかけた。

 ◆

 ライラと海はモンスターたちをけながらキツネの面のプレイヤーについていくと、どんどんと下の階層へと進んでいった。

 ライラはキツネの面のプレイヤーについていきながら尋ねた。

「キツネの面の御仁ごじん! まさか、このままベヒーモスの住処すみかへ?」

「ええ。ベヒーモスを倒してクエストクリアの階段が出現すれば安全に地上に戻れます」

「なんと……。だか、おもしろい脱出方法た!」

 ライラは笑いながら言うと、キツネの面のプレイヤーと一緒にベヒーモスのいる部屋へ滑り込んだ。

 ブモォォォオオ!!

 部屋の中央に寝そべっていた巨大な牛の魔獣ベヒーモスは、起き上がると威圧するように咆哮ほうこうした。

 そして、ゆっくりと歩き出すと体中に雷を帯電させて向かってきた。

 パンッ! バリバリ バリバリバリバリ

 海は自分の体の10倍はありそうな巨体のベヒーモスを見ると思わずライラに言った。

「ラララ、ライラさん! このモンスターと戦うんですか!?」

「そうなるな」

「ガッ、ガガガッ、がんばります!」

 ブモォォォオオオオオ!!

 ベヒーモスは大きく咆哮ほうこうすると、ライラに向かって突進してきた。

 ダダダダダダダダダダッ!

「来たかっ!」

 ドガン!

「っつ!」

 ライラは突進を盾で受け止めたが、そのまま吹き飛ばされた。

 ドシャァァアアア

「くそっ!」

 するとその時、ライラの視界に部屋の入口の外で待つ数人のプレイヤーたちが目に入った。

「ちっ。私たちが瀕死ひんしになったらるつもりだな」

 ライラは即座に立ち上がると、なんとキツネの面のプレイヤーが短剣でベヒーモスの首を刺していた。

 ドスッ!

 ブモォォオ!!

 キツネ面のプレイヤーはベヒーモスの首をって離れると、即座に空中で弓に持ち替え、矢を放った。

 ヒュッ! ドッ!

 矢は見事にヘッドショットを決めたがベヒーモスは暴れだした。

 ブモォォォオオオオオ!!

 ベヒーモスは暴れたまま海に突っ込んでいくと、ライラが必死に叫んだ。

「海! 逃げろ!! あぶない!」

 しかし、海は両手剣を構えて冷静にベヒーモスの動きを見ながら呟いた。

「まだだ。まだだ。あせるな。まだだ……。今だ! やぁぁああ!」

 ズバッ!

 ドゴッ!

「うわっ!」

 ドシャァァアアア

 海はベヒーモスの前足にダメージを与えたが、ベヒーモスに吹き飛ばされHPを大きく削られてしまった。

「海、大丈夫か!? あっ!」

 ライラが海のところへ走り出した瞬間、ライラは異変に気づいて上を見上げた。

「あれは!!」

 なんと、高い天井の下には沢山の大な白い魔法陣が空中に完成していた。

 それを見たライラは目を見開いて海に言った。

「あれは、光の魔法陣! ルル様のよりも大きい!! 危ない! 海、離れろ!」

「は、は、はい!!」

 海とライラが魔法陣から離れると、それを確認するように魔法陣はまばゆく輝き出して無数の光の矢がベヒーモスへ降り注いだ。
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