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白の脅威

第66話 ひろし、最強の敵が強すぎる

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 みんなと一緒に走り出したイリューシュは途中で方向を変えながら、めぐに言った。

「めぐさん、私達は後ろから援護にまわりましょう! 私はドラゴンの右に回り込みますから、めぐさんは左へ!」

「はい!」

 めぐは返事をしてドラゴンの左側へ走り出すと、イリューシュは右側に走りながらオロチの大弓で曲射を連射した。

 バババッ! バババッ! バババッ!

 その矢はホワイトドラゴンの頭上へ飛んでゆき、ホワイトドラゴンが飛び上がらないようにけん制した。

 するとそれを見た社長が走り込み、きつけスキルを発動した。

「ドラゴンよ、敵はわたしだ! かかってこい!」

 ドラゴンは社長をにらみつけて標的にすると、素早く息を吸い込んで青白い炎を吐き出した。

 ブォォオオォォオオ

 社長は両腕の盾で炎をガードすると、美咲と大谷は素早く社長の背後に隠れて炎をやり過ごした。

 その様子を見たイリューシュは、めぐに言った。

「めぐさん、大呪文を! わたしもオロチの矢を放ちます!」

「はい! 聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与えたまえ。清く正義の力をもって嘆願する。あの者に裁きの雷を!」

 ヒュッ……ドドドドドドドドド!

 ガガーーン!!

 イリューシュが放ったオロチの矢がドラゴンの頭に命中すると、それが避雷針となり、めぐの雷の大呪文が落雷した。

 グォォォオオ!

 すると、ドラゴンは大きく怯んで炎が止まった。

 それを見た社長は盾を下げて叫んだ。

「いまだ!!」

 その瞬間、社長の背後から大谷と美咲が社長の肩を踏み台にして飛び出した。

「やぁぁあぁあああ!」

「いくよ」

 大谷は回転しながら、そして美咲は鋭くレイピアを突き出して空へ舞い上がると、美しくドラゴンの頭を斬りつけた。

 ズババッ!

 ドスッ!

 ギャァァアアオオオオ!

 大きくダメージを受けたドラゴンは暴れだし、着地しようとした大谷を爪で弾き飛ばした。

 ズバッ!

「ぐあっ!」

「大谷くん!」

 社長は大谷に駆け寄ると両手の盾で大谷をカバーして言った。

「すまない! 大谷くんが全回復薬を飲み終わるまで惹きつけスキルを解除する!」

「「はい」」

 ギャァァアアオオオオ!

 バサッ!!

 社長が惹きつけスキルを解除した瞬間、ドラゴンは素早く羽ばたいて一気に遠く離れていためぐの所まで飛んでいってしまった。

 そして、めぐの目の前に降りると、めぐをにらみつけながら炎を吐こうと息を吸った。

 それを見たイリューシュは驚いて叫んだ。

「めぐさん、逃げて!」

 しかし、ひとり離れていためぐは逃げ場を失い、ただ杖を握りしめながら恐怖するしかなかった。

「あっ……」

 ブィィィイイイイ!!
 
 するとその時、おじいさんの軽トラが全速力で飛び込んできた。

「めぐちゃん!!!」

 おじいさんは窓から顔を出してめぐに叫ぶと、めぐは涙ぐみながら笑顔で答えた。

「おじいちゃん!」

 ズザザザザザザザッ!! 

 おじいさんは軽トラをめぐとドラゴンの間に急停車させて飛び降りると、急いでめぐと一緒に軽トラの後ろに隠れた。

 ブォォオオォォオオ

 ドラゴンは青白い炎を吐き出したが、軽トラがドラゴンの炎を防ぎ、おじいさんとめぐは静かに胸を撫で下ろした。

「おじいちゃん、ありがとう。もうダメかと思った」

「いやぁ、アカネさんがドラゴンに気づいて教えてくれたので間に合いました」

「そっか……。アカネに感謝だね」

 しかし、軽トラは炎で少しずつ溶けてゆき、漏れ出た炎がめぐとおじいさんのHPをどんどん減らし始めた。

「あぁ、HPが」

「大変! おじいちゃん、回復薬飲んで!!」

 おじいさんとめぐは回復薬を飲み続けてHPを維持したが、あっという間に無くなってしまった。

 その時、

『洋子さんから全回復薬が20個贈られました』

「あっ!」

「おじいちゃん、これ!」

 おじいさんとめぐは急いで全回復薬を飲んで横を見ると、こちらへ向かってくるモービルが見えた。

 それは和代からメッセージをもらって援護に駆け付けてきたマユのモービルだった。

「洋子ちゃん、送れた!?」

「ええ! もう大丈夫ですマユさん!」

「じゃあ、砂漠に応援行くね!」

「はい!」

「メイ、ナミ、準備はいい?」

「おっけー!」
「ぅん」

 マユはハンドルを切って方向を変えると、アクセルを踏み込んで砂漠地帯へと急いだ。

 

 その頃、砂漠地帯では、アカネがバス屋根の上で胡座あぐらをかいてサンドワームを警戒していた。

 するとアカネを待ち構えていたかのように砂漠からサンドワームが現れ、バスの行く手を阻んだ。

 ザバァァアアア!

 グオォォオオオオ!

 アカネは即座に立ち上がると、バスも急停車をした。

 アカネは屋根から飛び降りると、それを見た運転手の大槻が大声で言った。

「お嬢さん、武器も持たずに大丈夫ですか!?」

「え? まぁ、さすがにデカすぎて投げられないけど心配しないで止まってて。逃げるチャンスができたら言うからさ」

 アカネはそう言うと両手に「痺れ粉」と「毒の粉」を出現させた。

 グオォォオオオオ!

 サンドワームは長い巨体をくねらせると、体を大きく仰け反らせた。

 そして振り子のように勢いをつけると、前に出たアカネを狙った。

 ブワァァアアアア!

 それを見たアカネは「痺れ粉」と「毒の粉」を用意して笑った。

「きたきたきた! おいでおいで! もう少し!」

 サンドワームの大きな口がアカネに近づいた瞬間、アカネは「痺れ粉」と「毒の粉」を同時に投げつけた。

 ブワッ!

「おっしゃ!」

 そして前回り受け身でサンドワームの攻撃をよけると素早く立ち上がってサンドワームから距離を取った。

 グオォォオオオオ!

 しかしサンドワームは長い巨体をくねらせながら、再び体を大きく仰け反らせた。

「はは。やっぱ、1回じゃ効かないか」

 アカネはそう言うと走り回ってサンドワームの気を引いた。

「おーい、サンドワームちゃん! こっちだよー!」

 しかしサンドワームはアカネではなくバスを狙った。

 グオォォオオオオ!

「おい! まてまて! 敵はあたしだろっ!」

 アカネは慌ててバスへ向かって走り出した。

 そしてバスのサイドミラーを掴んで跳び上がると一気にバスの屋根へと跳び乗った。

 そして「痺れ粉」と「毒の粉」を5つずつ手に出現させると笑いながらサンドワームに言った。

「おっし、かかってこい!」

 サンドワームはアカネの声に答えるようにバスの屋根の上にいるアカネに突っ込んできた。

 グォォォオオ!

「くらえ!!」

 ダッ!

 アカネは突っ込んでくるサンドワームに飛び込むと、「痺れ粉」と「毒の粉」を全て投げつけた。

 バフッ!!

 グォ……、ォ……、オオ……

 アカネは「痺れ粉」と「毒の粉」を見事にサンドワームに命中させると、サンドワームの頭の上に「麻痺」と「毒」の表示が現れて動きが止まった。

 しかしなんと、サンドワームは麻痺したままゆっくりとバスのほうへ倒れてきてしまった。

 それを見たアカネは慌てて声を上げた。

「運転手さん、後ろに下がって!! サンドワームが倒れるよ!!」

 アカネがそう言った瞬間、防御魔法陣がバスの前に展開した。

 ブゥー……ン

 ガンッ!

 そして倒れるサンドワームを受け止めるように防ぐと、そこへ3本の矢と氷の大呪文が放たれた。

 ヒュッ……、ドドドッ!!

 「凍てつく氷の女神たちよ、我に冷血なる力を与えたまえ。凍る六花の結晶をもって嘆願する。あの者に絶対零度の裁きを!」

 キー……ン
 ズガガガガン!

 それはモービルで援護にやってきたナミの矢とおばあさんの大呪文だった。

 そこへ、攻撃強化薬を飲んだマユが片手剣を突き出しながら走り込んだ。

「やあっ!」

 ズザッァ……、ズバッ ズバッ ズバッ!

 グォォオオオ!

 サンドワームはマユの攻撃を受けると、たまらず消滅していった。
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