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アラフィフ暗殺者、異世界転生を果たす
10,ディーラー試験〈後編〉
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(ふむ……こうも場が静かだと盛り上がりに欠けるねぇ)
ナナシはテーブルに座るゴルディ、クロエ、カロンを見渡しながらそう考える。三人の後ろにはゼノとハクタケが立っており、いつナナシがイカサマをするのかを見破ろうと鋭い視線を向けている。
(先ほどから結構仕掛けてるんだけど、いまだに誰も気がついていないようだねぇ)
ナナシは内心ほくそ笑んでいた。
(まあ、まだ序盤だしねぇ……。ここから一気に盛り上げていくとするかな)
♦
「なあ、クロエ。これってどういう状況なんだ?」
「さあ、私もわからないわ」
((なんか、嫌な予感しかしない))
カロンとクロエは全く同じことを考えており、冷や汗を流している。一方、ゼノは無言のまま冷静に状況を分析していた。そして、ゴルディは何事もなかったかのように次のゲームを始めようとしていた。
「さーて!次行くぞ!次!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
クロエが慌ててゴルディを止めるとゴルディは不機嫌そうに振り向いた。
「なんだよ?」
「なんだよ、じゃないわよ!あんたが仕切らないでくれる?」
「ああ、悪い。でも、俺が一番強いし……」
ゴルディがそう言うとクロエは無言のままゴルディのことを睨みつける。ゴルディは冷ややかな目で見られると肩をすくめた。
「わかったよ!俺が悪かったからそんな怖い顔をするなって!」
「ふん!最初から素直に従っていれば良いのよ!」
「へいへーい」
ゴルディがやる気のない返事を返すと、クロエは舌打ちをした。
「それで?どうするの?続けるの?」
「ああ、もちろんだ。このまま引き下がるわけにはいかないからな」
「そう……。わかったわ」
クロエは再び席に着くと、ナナシがカードを五枚ずつ配っていく。
(さっきからカロンを勝たせてあげてないからね。そろそろ彼にもツキを回してあげようか)
そう思いながら手際よくカードを切っていき、全員に配る。そして、ゴルディたちの反応を見ると、ゴルディアは少し怪しげな動きをしていた。
「おい、ゴルディ。お前、何やってるんだ?」
「ん?いや、なんでもないぜ」
ゴルディは明らかに何かを隠しているが、カロンは特に気にしなかったようでスルーした。そして、ゴルディはこっそりとナナシの方を見る。
「なあ、ナナシ。お前ってイカサマとかできるのか?」
「もちろんできるけど、どうしてだい?」
「いやぁ、俺ってさっきから全然勝ってないだろ?だから、もしかするとイカサマでもしてるのかと思ってな」
カロンの言葉にナナシは一瞬驚いたような表情を浮かべるがすぐに笑顔に戻る。
「さあどうだろうね?でも今回は結構露骨にやったつもりなんだけどねぇ」
ナナシはにやりと笑いカロンの顔色を窺う。だが、カロンは動揺することなくナナシに言い放つ。
「別に俺はお前が何をしようが構わんさ。お前のイカサマなんてどうせ見破れないだろうしな」
「おやまぁ、随分と自信がないみたいだねぇ」
「そりゃそうだろ。俺はお前のイカサマを見破ったことは一度もないしな。……でも、今回は俺の勝ちみたいだぜ!」
カロンは自信満々にカードを机に叩きつけた。そのカードはスペードのロイヤルストレートフラッシュ。ゴルディは思わず「嘘だろ!?」と叫んでしまう。
「……ゴルディ。落ち着きなさいよ。今回はナナシがイカサマをしたって言ってたじゃない」
クロエがゴルディを宥めるとゴルディはハッとしたように我に帰る。
「そうか……。ナナシがイカサマをしたんだな!?一体どうやったのか教えろよ!」
ゴルディは興奮した様子でナナシに詰め寄るが、ナナシは涼しい顔で答える。
「それは教えられないねぇ。私にもプライドがあるからねぇ」
「そうか……。なら、力づくで聞き出すまでだ!!」
ゴルディは勢い良く立ち上がるとナナシに向かって拳を振り上げる。だが――
「おいおい、こんな爺さんを虐めるもんじゃないよ」
ナナシは振り下ろされた腕をつかみ、ゴルディの背中側に捻りあげる。
「いてえええええっ!ギブ!ギブアップぅっ!!」
ゴルディは痛みに耐えきれず降参するとナナシは手を離す。ゴルディはあまりの痛さに床に転がって悶絶している。
「ゴルディ……。お前、馬鹿だろ?」
「うるさい!!元はと言えばお前がイカサマしたせいだろ!」
ゴルディは涙目になりながら反論するが、カロンは呆れた眼差しを向ける。
「お前が勝手に勘違いしただけだろ。それに、ナナシはイカサマをしてなかったんだから、文句を言う筋合いはないだろ」
「ぐぬぬ……!」
ゴルディは悔しそうな表情を浮かべるが。
「いや、イカサマはさっきからしてるよ?っていうか、ゲームはじめてからイカサマしなかった回なんて一回もなかったんだけどねl」
にやりと笑うナナシを見てカロンたちは背筋に冷たいものが走るのを感じるのであった。
ナナシはテーブルに座るゴルディ、クロエ、カロンを見渡しながらそう考える。三人の後ろにはゼノとハクタケが立っており、いつナナシがイカサマをするのかを見破ろうと鋭い視線を向けている。
(先ほどから結構仕掛けてるんだけど、いまだに誰も気がついていないようだねぇ)
ナナシは内心ほくそ笑んでいた。
(まあ、まだ序盤だしねぇ……。ここから一気に盛り上げていくとするかな)
♦
「なあ、クロエ。これってどういう状況なんだ?」
「さあ、私もわからないわ」
((なんか、嫌な予感しかしない))
カロンとクロエは全く同じことを考えており、冷や汗を流している。一方、ゼノは無言のまま冷静に状況を分析していた。そして、ゴルディは何事もなかったかのように次のゲームを始めようとしていた。
「さーて!次行くぞ!次!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
クロエが慌ててゴルディを止めるとゴルディは不機嫌そうに振り向いた。
「なんだよ?」
「なんだよ、じゃないわよ!あんたが仕切らないでくれる?」
「ああ、悪い。でも、俺が一番強いし……」
ゴルディがそう言うとクロエは無言のままゴルディのことを睨みつける。ゴルディは冷ややかな目で見られると肩をすくめた。
「わかったよ!俺が悪かったからそんな怖い顔をするなって!」
「ふん!最初から素直に従っていれば良いのよ!」
「へいへーい」
ゴルディがやる気のない返事を返すと、クロエは舌打ちをした。
「それで?どうするの?続けるの?」
「ああ、もちろんだ。このまま引き下がるわけにはいかないからな」
「そう……。わかったわ」
クロエは再び席に着くと、ナナシがカードを五枚ずつ配っていく。
(さっきからカロンを勝たせてあげてないからね。そろそろ彼にもツキを回してあげようか)
そう思いながら手際よくカードを切っていき、全員に配る。そして、ゴルディたちの反応を見ると、ゴルディアは少し怪しげな動きをしていた。
「おい、ゴルディ。お前、何やってるんだ?」
「ん?いや、なんでもないぜ」
ゴルディは明らかに何かを隠しているが、カロンは特に気にしなかったようでスルーした。そして、ゴルディはこっそりとナナシの方を見る。
「なあ、ナナシ。お前ってイカサマとかできるのか?」
「もちろんできるけど、どうしてだい?」
「いやぁ、俺ってさっきから全然勝ってないだろ?だから、もしかするとイカサマでもしてるのかと思ってな」
カロンの言葉にナナシは一瞬驚いたような表情を浮かべるがすぐに笑顔に戻る。
「さあどうだろうね?でも今回は結構露骨にやったつもりなんだけどねぇ」
ナナシはにやりと笑いカロンの顔色を窺う。だが、カロンは動揺することなくナナシに言い放つ。
「別に俺はお前が何をしようが構わんさ。お前のイカサマなんてどうせ見破れないだろうしな」
「おやまぁ、随分と自信がないみたいだねぇ」
「そりゃそうだろ。俺はお前のイカサマを見破ったことは一度もないしな。……でも、今回は俺の勝ちみたいだぜ!」
カロンは自信満々にカードを机に叩きつけた。そのカードはスペードのロイヤルストレートフラッシュ。ゴルディは思わず「嘘だろ!?」と叫んでしまう。
「……ゴルディ。落ち着きなさいよ。今回はナナシがイカサマをしたって言ってたじゃない」
クロエがゴルディを宥めるとゴルディはハッとしたように我に帰る。
「そうか……。ナナシがイカサマをしたんだな!?一体どうやったのか教えろよ!」
ゴルディは興奮した様子でナナシに詰め寄るが、ナナシは涼しい顔で答える。
「それは教えられないねぇ。私にもプライドがあるからねぇ」
「そうか……。なら、力づくで聞き出すまでだ!!」
ゴルディは勢い良く立ち上がるとナナシに向かって拳を振り上げる。だが――
「おいおい、こんな爺さんを虐めるもんじゃないよ」
ナナシは振り下ろされた腕をつかみ、ゴルディの背中側に捻りあげる。
「いてえええええっ!ギブ!ギブアップぅっ!!」
ゴルディは痛みに耐えきれず降参するとナナシは手を離す。ゴルディはあまりの痛さに床に転がって悶絶している。
「ゴルディ……。お前、馬鹿だろ?」
「うるさい!!元はと言えばお前がイカサマしたせいだろ!」
ゴルディは涙目になりながら反論するが、カロンは呆れた眼差しを向ける。
「お前が勝手に勘違いしただけだろ。それに、ナナシはイカサマをしてなかったんだから、文句を言う筋合いはないだろ」
「ぐぬぬ……!」
ゴルディは悔しそうな表情を浮かべるが。
「いや、イカサマはさっきからしてるよ?っていうか、ゲームはじめてからイカサマしなかった回なんて一回もなかったんだけどねl」
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