夏の終わりに

佐城竜信

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眩しくて、目を閉じていた。
身体が中に浮く感覚と緩やかに動いているエレベーターにいるような感覚に陥る。

まぶたをあけると、異空間にいることには間違いないなかった。

なにもない、ただの白の世界が広がっている。

「ここは、どこなんだ・・・」

「なにもない・・・」

後ろを振り返るが、なにも見当たらない。

音も景色もすべてを飾るものがない。。

「これは幻覚なのか」




空間の中心にファルファト教授自身が浮いていた。



羽角蓮の存在もなければ、セイカと名乗っていた女性もいない。

人間ひとりだけが存在していた。

《ドクン・・・》

どこからだろう?心臓に似た音が聞こえてきた。

《ドクン・・・》

またさらに空間を反響しながら、心臓の音はさらに大きくなっていく。

《ドクン・・・》


近づいているように感じた。


目の前に、黒く小さな球体が突然現れた。


「なんだ・・・」

目を懲らしめながら球体を見ていると不思議な動きをしはじめた。

小さな生き物が生まれるように静かに振動を始める。

振動は徐々に大きく鳴り始めると、球体の内部からまた黒い球体が生まれてきた。

「球体が球体を作っているのか・・・」


さらに球体の増殖は、ウイルスのように広がり続けていた。

白の世界だったはずだが、黒の球体が埋め尽くしていた。

ファルファトは、一つの球体に導かれて行った。

身体はゆっくりとその球体の小さなブラックホールの中へと飲み込まれていった。

「世界が・・・反転していってる」

吸引されながら、景色は、白と黒の反転を繰り返していた。

白世界から黒の世界へと変化してゆく

身体は浮いたまま、白世界の窓が閉じられてゆく


見渡せば、黒の闇の世界にファルファトは立たされていた。


「はあはあ・・・」

「また変わったぞ。これからまたなにが起きるんだ」





なにもない黒の空間に、一つの白点が目立つように存在していた。

白点は、物質の粒子なのだろう。


「つまり、これはビックバンにより作られた粒子ということなのか」


粒子は、ゆっくり振動を繰り返していた

まるで振り子のように何度も繰り返している。

粒子の大きさは、シャンパンの泡1粒ほどであるが、光速より速い動きで、一瞬のうちに小さな光のエネルギーの球体達を放出させていた。

エネルギーは、太陽系以上の大きさになるほど急速しはじめた。
その爆発的な膨張速度は知る限り、地球には存在しない速さだった。

「やはり、そうか、ここは宇宙を形成しているということか」

かすかに聞こえてくる、命の鼓動。

それは幾億年かけて、宇宙は形を成していった。

まるでプラネタリウムで宇宙誕生を見ているかのような感覚に近い。

宇宙空間に漂ってたファルファトは、耳をすましていた。

どこからか聞こえてくる赤ちゃんの泣く声が・・・


「えっ!」

気付くと、そこは世界が変わっていた。

ファルファトは、ある病室の片隅に立っていた。
「なんだ。場所がいきなり変わったぞ」

しかし、この場所は地球なのか?それとも・・・


ただ、私は第三者で見ているようだ。
誰も私に気づかないのだから

「おぎゃあ・・・」


「赤ちゃんが生まれたのか。」


《あれは無から生まれた最初の私。》

突然、セイカが出現していた。ごく自然に話すように

「無?ああ・・・あの粒子のことか」
ファルファトは言った。

《私は、ずっと生きることを望みました。意識を確立させることでこの世が誕生したのです》

「あの赤ちゃんが、あなたということですね」

《はい》

《あなたの始祖は、この星で生まれました。》

《星の名前は、マルデックと言います》








 
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