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「あっ、雨……」
小百合は空を見上げて呟いた。出掛けに降りそうだったのが、ついに降ってきたのだ。
小百合は折りたたみの傘を鞄から取り出し、広げて雨の中へと歩き出した。
そして学校への道を歩く。その途中で雨の中を濡れながら走る雄介の姿を見た。
「あ……雄介君」
思わず声が出た。すると雄介も小百合に気づき、こちらに向かって走ってくる。
「おはよう、小百合!これから部活?」
雄介は剣道部に所属している。朝から部活に勤しむのだろう。
「ううん、私は生徒会の仕事があるから。ってゆーか、雄介君!早く入って!濡ちゃうよ!」
小百合は急いで雄介を自分の傘に入れようとするが、雄介はそれを拒否する。
「い、いいよ俺は!」
「なんで?」
「だって相合い傘になっちゃうだろ?恥ずかしいし……」
雄介は顔を赤らめて言う。雄介の言葉に小百合も頬を赤くするが。
「濡れちゃうよりマシだよ。ほらっ!」
半ば強引に雄介を傘に入れた。雄介は諦めたのか何も言わず、二人は一緒に歩き出す。
(やばい、緊張する……。でもなんか嬉しいかも)
好きな人と一緒の傘に入るという行為だけで、小百合にとっては特別なものになっていた。
「雄介君って剣道部だよね?練習キツくない?」
「まぁね。結構しんどいけど、強くなるために頑張るよ」
「そっか……。武道習ってる人って強いもんね」
「あはは……。俺はそんなにすごくないよ」
小百合と雄介の共通の友人である千葉彰久。空手で全国大会出場を決めた彼のことを思うと、県大会出場すらままならない剣道部の自分が情けなく感じてしまう。
「俺さ、彰久のこと尊敬してんだ」
「え?どうして?」
「彰久ってすごい努力家じゃん?毎日欠かさず練習してさ。それに、あれだけ強いのに成績もいいしさ。本当に尊敬するよ」
確かに彰久は努力家だし、成績はいつもトップクラスだ。
「それにさ。今度アマチュアの格闘大会に出るらしいじゃん?優勝してプロになるんだー、とか張り切っちゃってて……。ほんと、俺とはぜんぜん違うんだな、って」
「……それは私もそうかな。私だって、まだ将来なりたいものなんて決まってないよ。だから雄介君のこと、偉いとしか思えない」
「そうなんだ……」
雄介は少し寂しげに言った。
「小百合ならきっと何でもできると思うんだけどなぁ。料理上手いし、優しいし。みんなに好かれる人気者だと思うけどなぁ」
「そんなことないよ……」
小百合は謙遜したように否定したが、内心嬉しかった。雄介が自分を褒めてくれている。それだけで胸が高鳴った。
だがその時、急に激しい雨が降り始めた。しかもかなり強めの雨だった。
「きゃっ!こ、これじゃ濡れちゃうよ!」
小百合は思わず声を上げた。しかし、傘を持っていなかった雄介はもうすでにびしょ濡れ状態になっている。
「雄介君大丈夫!?風邪引いちゃうよ!」
「俺はいいから!小百合が濡れたら大変だろ?」
「ダメだよ!このままじゃ二人とも風邪引くよ!」
小百合は必死になって叫んだ。すると雄介は突然立ち止まり、小百合の顔を見て言った。
「小百合……」
「なに?」
雄介は深呼吸をして、そして言った。
「好きだ!!」
その言葉を聞いた瞬間、小百合は目を大きく見開き、そして顔を真っ赤にした。
(好きって言われた!!どうしよう、顔が熱い……。心臓がバクバク言ってる……)
小百合は自分の鼓動を抑えることができなかった。まさかこんな形で告白されると思ってなかったからだ。
「小百合は可愛いし、誰にでも優しくて、いつもみんなの中心にいるし、明るいし……。そんな小百合が好きなんだ!」
「ゆ、ゆうすけくん……」
小百合は震えた声で呟いた。雄介の言葉が心に染み渡るように入り込んでくる。
「小百合が好きなんだよ!ずっと前から……」
雄介の目には涙が浮かんでいた。今まで秘めていた想いが溢れ出したのだ。
「だから……俺と付き合ってください!」
雄介は真っ直ぐに小百合を見つめながら言った。
(雄介君……。私のこと、そんな風に思っててくれたんだ……。私なんかのことを……。すごく嬉しい)
小百合は目を潤ませ、口元を緩ませた。
「わ、わたし……」
小百合は緊張しながら言葉を紡ぐ。
「私も雄介君のことが好き……」
小百合の言葉に雄介は驚いたような表情を浮かべる。
「えっ……それってどういう意味?」
「あのね、私も雄介君と同じ気持ちなの。雄介君は明るくて、面白くて、みんなの中心で……。私にとって憧れの存在なの。だから、私も雄介君のことが好きなんです!」
小百合の言葉に雄介は喜びを隠せない様子だった。
「ほ、本当か!?俺達両思いなのか?」
「うん!そうだよ」
二人はお互いの気持ちを確認し合い、そして同時に笑った。
「ありがとう、小百合……。嬉しいよ」
「こちらこそ……。私もすごく幸せだよ」
小百合は満面の笑顔で答えた。
「あ、傘持ってくれてる?ごめんね」
「あぁ、全然いいよ」
雄介は小百合の傘を持ち、小百合の方に傘を傾ける。
(なんか恥ずかしいな……。こういうのって)
二人の距離は近くなり、手と手が触れ合った。
「あっ……」
「えへへっ」
小百合は照れ笑いをする。雄介は頬を赤くして
小百合は空を見上げて呟いた。出掛けに降りそうだったのが、ついに降ってきたのだ。
小百合は折りたたみの傘を鞄から取り出し、広げて雨の中へと歩き出した。
そして学校への道を歩く。その途中で雨の中を濡れながら走る雄介の姿を見た。
「あ……雄介君」
思わず声が出た。すると雄介も小百合に気づき、こちらに向かって走ってくる。
「おはよう、小百合!これから部活?」
雄介は剣道部に所属している。朝から部活に勤しむのだろう。
「ううん、私は生徒会の仕事があるから。ってゆーか、雄介君!早く入って!濡ちゃうよ!」
小百合は急いで雄介を自分の傘に入れようとするが、雄介はそれを拒否する。
「い、いいよ俺は!」
「なんで?」
「だって相合い傘になっちゃうだろ?恥ずかしいし……」
雄介は顔を赤らめて言う。雄介の言葉に小百合も頬を赤くするが。
「濡れちゃうよりマシだよ。ほらっ!」
半ば強引に雄介を傘に入れた。雄介は諦めたのか何も言わず、二人は一緒に歩き出す。
(やばい、緊張する……。でもなんか嬉しいかも)
好きな人と一緒の傘に入るという行為だけで、小百合にとっては特別なものになっていた。
「雄介君って剣道部だよね?練習キツくない?」
「まぁね。結構しんどいけど、強くなるために頑張るよ」
「そっか……。武道習ってる人って強いもんね」
「あはは……。俺はそんなにすごくないよ」
小百合と雄介の共通の友人である千葉彰久。空手で全国大会出場を決めた彼のことを思うと、県大会出場すらままならない剣道部の自分が情けなく感じてしまう。
「俺さ、彰久のこと尊敬してんだ」
「え?どうして?」
「彰久ってすごい努力家じゃん?毎日欠かさず練習してさ。それに、あれだけ強いのに成績もいいしさ。本当に尊敬するよ」
確かに彰久は努力家だし、成績はいつもトップクラスだ。
「それにさ。今度アマチュアの格闘大会に出るらしいじゃん?優勝してプロになるんだー、とか張り切っちゃってて……。ほんと、俺とはぜんぜん違うんだな、って」
「……それは私もそうかな。私だって、まだ将来なりたいものなんて決まってないよ。だから雄介君のこと、偉いとしか思えない」
「そうなんだ……」
雄介は少し寂しげに言った。
「小百合ならきっと何でもできると思うんだけどなぁ。料理上手いし、優しいし。みんなに好かれる人気者だと思うけどなぁ」
「そんなことないよ……」
小百合は謙遜したように否定したが、内心嬉しかった。雄介が自分を褒めてくれている。それだけで胸が高鳴った。
だがその時、急に激しい雨が降り始めた。しかもかなり強めの雨だった。
「きゃっ!こ、これじゃ濡れちゃうよ!」
小百合は思わず声を上げた。しかし、傘を持っていなかった雄介はもうすでにびしょ濡れ状態になっている。
「雄介君大丈夫!?風邪引いちゃうよ!」
「俺はいいから!小百合が濡れたら大変だろ?」
「ダメだよ!このままじゃ二人とも風邪引くよ!」
小百合は必死になって叫んだ。すると雄介は突然立ち止まり、小百合の顔を見て言った。
「小百合……」
「なに?」
雄介は深呼吸をして、そして言った。
「好きだ!!」
その言葉を聞いた瞬間、小百合は目を大きく見開き、そして顔を真っ赤にした。
(好きって言われた!!どうしよう、顔が熱い……。心臓がバクバク言ってる……)
小百合は自分の鼓動を抑えることができなかった。まさかこんな形で告白されると思ってなかったからだ。
「小百合は可愛いし、誰にでも優しくて、いつもみんなの中心にいるし、明るいし……。そんな小百合が好きなんだ!」
「ゆ、ゆうすけくん……」
小百合は震えた声で呟いた。雄介の言葉が心に染み渡るように入り込んでくる。
「小百合が好きなんだよ!ずっと前から……」
雄介の目には涙が浮かんでいた。今まで秘めていた想いが溢れ出したのだ。
「だから……俺と付き合ってください!」
雄介は真っ直ぐに小百合を見つめながら言った。
(雄介君……。私のこと、そんな風に思っててくれたんだ……。私なんかのことを……。すごく嬉しい)
小百合は目を潤ませ、口元を緩ませた。
「わ、わたし……」
小百合は緊張しながら言葉を紡ぐ。
「私も雄介君のことが好き……」
小百合の言葉に雄介は驚いたような表情を浮かべる。
「えっ……それってどういう意味?」
「あのね、私も雄介君と同じ気持ちなの。雄介君は明るくて、面白くて、みんなの中心で……。私にとって憧れの存在なの。だから、私も雄介君のことが好きなんです!」
小百合の言葉に雄介は喜びを隠せない様子だった。
「ほ、本当か!?俺達両思いなのか?」
「うん!そうだよ」
二人はお互いの気持ちを確認し合い、そして同時に笑った。
「ありがとう、小百合……。嬉しいよ」
「こちらこそ……。私もすごく幸せだよ」
小百合は満面の笑顔で答えた。
「あ、傘持ってくれてる?ごめんね」
「あぁ、全然いいよ」
雄介は小百合の傘を持ち、小百合の方に傘を傾ける。
(なんか恥ずかしいな……。こういうのって)
二人の距離は近くなり、手と手が触れ合った。
「あっ……」
「えへへっ」
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