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風の国編
聖と魔のデメリット
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ノア・ノアールはレイメルの宿にいた。
ワイアットと共にエリスを救い、ここまで運んだのだ。
エリスは怪我などは無く、2人は安堵した。
宿の一室、一つだけあるベッドにエリスが眠る。
その横にノアとワイアットが立っていた。
北の遺跡からレイメルに到着したのは朝方だったので、ベッドの横にある窓からは朝日が差し込んでいた。
「昔を思い出すな……」
ノアがエリスの寝顔を見ながら口を開く。
ワイアットはその言葉に首を傾げた。
「どういう意味だ?」
「いや……エリスと出会った日のことを思い出していた。彼女は貴族ではない。私があの遺跡近くの森で拾ったんだ。10年ほど前にな」
「なんだと……」
「この一件……もしやと思った。この前セントラルでリヴォルグの部下の魔法使いに会って話を聞いた時、確信したよ。エリスがカゲヤマリュウイチを召喚した魔女なのだと」
ワイアットはノアの言葉に絶句した。
この話が事実ならエリスが魔女であるという噂は本当だったことになる。
「クローバル家の執事は土の国で暗躍する、ある組織の人間だった。こいつらは魔女崇拝組織で、崇拝なんて言ってるが、実際は幼少の女子に無属性魔法を使わせ続けているクソ組織だ」
「なんだよそれ……」
「数百年前、カイン王とリーゼ王、そしてレノ王で潰したそうだが、残党が残っていたんだろう。今組織を拡大して、風の国である計画を実行していると」
「ある計画?」
「最強のシックス・ホルダーを生み出す実験だそうだ」
「最強のシックス・ホルダーだと?それがあの黒騎士だってのか?」
「恐らくな。だが実験は失敗している」
ワイアットが首を傾げた。
ワイアット自身、あれだけ強い人間とは戦ったことがない。
あれのどこが失敗なのかわからなかった。
「俺が今まで戦った奴の中で一番強かったぞ……エンブレムも広範囲に展開できるし、宝具だってある。どこが失敗なんだ?」
「宝具のデメリットだ」
「デメリット?」
「推測だが魔剣レフト・ウィングのデメリットは発動の度に"年を取る"ことだろう。黒冑の下を見たがカゲヤマはもう老人だった」
ワイアットは驚いた表情をした。
発動する度に年を取るということは、力を使う度に命の時間を削ることになる。
確かにそれでは長く生きられず、"最強"と言うには疑問だ。
「だが、この計画……まだ終わってないな。そして、なぜ魔法使いを殺し続けていたのかわかった気がするよ」
「……確か黒騎士の目的は"復讐"と言ってた気がするが」
「それはガウロかラムザが用意した台本だろう。実際そうだったとしても表向きでしかない。本当の目的は私を誘き寄せるため……標的は恐らく"私"だ」
「ノア団長が狙い?意味がよくわからない。なぜ団長が狙いなんだ?」
ノアは差し込む朝日にを見ると目を細めた。
そして深呼吸してワイアットの方を見た。
「実際には私というより、私の持つ宝具、聖剣ライト・ウィングの"デメリット"が目的なんだろう。これで彼らの望む最強のシックス・ホルダーは生まれる」
ワイアットの頭は混乱していた。
デメリットが二つもあったら最強どころか、普通の人間よりも弱くなってしまうのではないかと思った。
「もう一度ガウロに会って確かめねばなるまい」
「……俺も行こう」
ノアとワイアットは聖騎士団宿舎の牢獄にいるガウロ・クローバルの元へ向かった。
聖剣ライト・ウィングと魔剣レフト・ウィングのデメリットはお互い真逆のものだった。
ワイアットと共にエリスを救い、ここまで運んだのだ。
エリスは怪我などは無く、2人は安堵した。
宿の一室、一つだけあるベッドにエリスが眠る。
その横にノアとワイアットが立っていた。
北の遺跡からレイメルに到着したのは朝方だったので、ベッドの横にある窓からは朝日が差し込んでいた。
「昔を思い出すな……」
ノアがエリスの寝顔を見ながら口を開く。
ワイアットはその言葉に首を傾げた。
「どういう意味だ?」
「いや……エリスと出会った日のことを思い出していた。彼女は貴族ではない。私があの遺跡近くの森で拾ったんだ。10年ほど前にな」
「なんだと……」
「この一件……もしやと思った。この前セントラルでリヴォルグの部下の魔法使いに会って話を聞いた時、確信したよ。エリスがカゲヤマリュウイチを召喚した魔女なのだと」
ワイアットはノアの言葉に絶句した。
この話が事実ならエリスが魔女であるという噂は本当だったことになる。
「クローバル家の執事は土の国で暗躍する、ある組織の人間だった。こいつらは魔女崇拝組織で、崇拝なんて言ってるが、実際は幼少の女子に無属性魔法を使わせ続けているクソ組織だ」
「なんだよそれ……」
「数百年前、カイン王とリーゼ王、そしてレノ王で潰したそうだが、残党が残っていたんだろう。今組織を拡大して、風の国である計画を実行していると」
「ある計画?」
「最強のシックス・ホルダーを生み出す実験だそうだ」
「最強のシックス・ホルダーだと?それがあの黒騎士だってのか?」
「恐らくな。だが実験は失敗している」
ワイアットが首を傾げた。
ワイアット自身、あれだけ強い人間とは戦ったことがない。
あれのどこが失敗なのかわからなかった。
「俺が今まで戦った奴の中で一番強かったぞ……エンブレムも広範囲に展開できるし、宝具だってある。どこが失敗なんだ?」
「宝具のデメリットだ」
「デメリット?」
「推測だが魔剣レフト・ウィングのデメリットは発動の度に"年を取る"ことだろう。黒冑の下を見たがカゲヤマはもう老人だった」
ワイアットは驚いた表情をした。
発動する度に年を取るということは、力を使う度に命の時間を削ることになる。
確かにそれでは長く生きられず、"最強"と言うには疑問だ。
「だが、この計画……まだ終わってないな。そして、なぜ魔法使いを殺し続けていたのかわかった気がするよ」
「……確か黒騎士の目的は"復讐"と言ってた気がするが」
「それはガウロかラムザが用意した台本だろう。実際そうだったとしても表向きでしかない。本当の目的は私を誘き寄せるため……標的は恐らく"私"だ」
「ノア団長が狙い?意味がよくわからない。なぜ団長が狙いなんだ?」
ノアは差し込む朝日にを見ると目を細めた。
そして深呼吸してワイアットの方を見た。
「実際には私というより、私の持つ宝具、聖剣ライト・ウィングの"デメリット"が目的なんだろう。これで彼らの望む最強のシックス・ホルダーは生まれる」
ワイアットの頭は混乱していた。
デメリットが二つもあったら最強どころか、普通の人間よりも弱くなってしまうのではないかと思った。
「もう一度ガウロに会って確かめねばなるまい」
「……俺も行こう」
ノアとワイアットは聖騎士団宿舎の牢獄にいるガウロ・クローバルの元へ向かった。
聖剣ライト・ウィングと魔剣レフト・ウィングのデメリットはお互い真逆のものだった。
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