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水の国編
さらなる北へ
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ライデュスに到着したアルフィス、メルティーナ、ロールの三人。
ライデュスは町自体、さほど大きいわけではないが、町の中央にある大きい噴水が有名だった。
円形状の広場に丸く屋台が並び、いつも賑わっている。
アルフィス達はその広場でグレイと合流した。
他にも聖騎士が二人、魔法使い一人がグレイと共にいた。
「来てもらってすまないね。わざわざメルティーナお嬢様も」
噴水付近にいたグレイはニコニコしている。
アルフィスとロールはそんな笑顔を見て警戒していたが、メルティーナは何も知らないのでお構い無しだった。
「いえ、ここも薬が無いって聞きました。何かあったんですか?」
「グイン村同様です。町の西の方にある森が薬草の採取場所なんですが、大量の魔獣が出たようで。今は私の部隊を何名か行かせたんですが……」
珍しくグレイの表情が曇る。
それを見たメルティーナは首を傾げる。
アルフィスとロールが顔を見合わせた。
「何か問題でも?」
「見てもらいたいものがあるです」
そう言って、グレイは噴水から少し離れた目立たない路地へ三人を案内した。
路地には荷馬車が置かれており、荷台にはシートが掛けられている。
「この荷馬車は?」
「これを見て下さい」
グレイは荷台のシートを半分ほどめくった。
するとそこには荷台いっぱいに大きな透明の瓶が置いてあり、中には黒い液体が入っていた。
「なんなの?この量は……」
「診療所や薬屋を訪ねていたら、途中でこれを出されました。怪しい医者が置いていったと」
三人は明らかにジレンマと小柄な医者の仕業だろうと思った。
しかし量が尋常ではない。
「私の部隊、総出で回収させました。その怪しい医者はここの薬が枯渇していることをいいことに売り捌いていったようで」
「ちょっと待てよ、それいつの話しだ?」
「数ヶ月前らしい。それからはその医者は来てないようだね」
いつもニコニコしているグレイもこの時ばかりは表情が暗かった。
グレイが内通者でなかった場合、この液体が何かはわからない。
「回収したのはよかったが、悪い知らせもあるだ」
「なんだよ?」
「数ヶ月前からこの薬を飲んでいた者が突然暴れだして、町を出て行ってしまったらしい」
アルフィスとロールは絶句した。
メルティーナもこの薬が魔人を生み出す薬だということはまだ知らない。
だがサーシャと同じことが起こってるとなれば只事ではないと思っていた。
「他にこの薬を飲んでいたやつはいないのか?」
「すぐに調べたが、どうやらこの薬を処方した薬屋は一件だけで、飲んでいたのはその患者だけだそうだ。さすがに認可されてない薬を売るのはマズイからね。……薬が無いことの不安で買ったのはいいけど、やはり医者達にも良心があったようだ」
三人は胸を撫で下ろした。
この町全体にこの薬が行き渡っていたらどうなっていたことか。
「あと、その患者だが、追いかけた者の話しだと、どうやら北西の……ラタムの方角へ向かったようだ」
「ラ、ラタムだって……」
グレイから話を聞いたロールがカタカタと震え始めていた。
アルフィスとメルティーナは心配そうにロールを見た。
「どうしたの?ロール」
「ラタムは、ぼ、僕の故郷なんだ……」
「な、なんだと……」
涙目のロールを見てアルフィスとメルティーナが顔を見合わせた。
これは早めに対処しなければ大変なとこになる。
「ど、どうしよう……町には母親と兄弟が……」
おどおどしているロールの背中をアルフィスが思い切りドンと叩いた。
その衝撃にビックリして背筋を伸ばすロール。
「"どうしよう"じゃねぇ。行くんだろ?」
「ア、アルフィス……」
ロールは涙目だが意を決した表情だった。
メルティーナもそれを見て笑みを溢した。
「急ぐなら馬に直接乗って行くしかねぇな。どうすっかなぁ三人だと……」
「あんた馬乗れないでしょ。ロールの後ろに乗せてもらえばいい。私は残るから」
「はぁ?」
「もしかしたら、他に薬を飲んだ人がいるかもしれない。グレイと一緒に調査してるわ」
アルフィスは考えた。
ここは町の人も多いし、他にもグレイの部隊の聖騎士や魔法使いもいる。
グレイが内通者だったとしてもここでは手は出せないだろう。
「それでいくか……」
「すまない……アルフィス……」
「ダチの家族は俺の家族も同然だ。急ぐぞ!」
ロールは完全に涙していた。
それを見たアルフィスはロールがいかに家族を大事に思っているのかがわかった。
アルフィスとロールはメルティーナと一旦別れ、北西にある町ラタムへ向かうこととなった。
ライデュスは町自体、さほど大きいわけではないが、町の中央にある大きい噴水が有名だった。
円形状の広場に丸く屋台が並び、いつも賑わっている。
アルフィス達はその広場でグレイと合流した。
他にも聖騎士が二人、魔法使い一人がグレイと共にいた。
「来てもらってすまないね。わざわざメルティーナお嬢様も」
噴水付近にいたグレイはニコニコしている。
アルフィスとロールはそんな笑顔を見て警戒していたが、メルティーナは何も知らないのでお構い無しだった。
「いえ、ここも薬が無いって聞きました。何かあったんですか?」
「グイン村同様です。町の西の方にある森が薬草の採取場所なんですが、大量の魔獣が出たようで。今は私の部隊を何名か行かせたんですが……」
珍しくグレイの表情が曇る。
それを見たメルティーナは首を傾げる。
アルフィスとロールが顔を見合わせた。
「何か問題でも?」
「見てもらいたいものがあるです」
そう言って、グレイは噴水から少し離れた目立たない路地へ三人を案内した。
路地には荷馬車が置かれており、荷台にはシートが掛けられている。
「この荷馬車は?」
「これを見て下さい」
グレイは荷台のシートを半分ほどめくった。
するとそこには荷台いっぱいに大きな透明の瓶が置いてあり、中には黒い液体が入っていた。
「なんなの?この量は……」
「診療所や薬屋を訪ねていたら、途中でこれを出されました。怪しい医者が置いていったと」
三人は明らかにジレンマと小柄な医者の仕業だろうと思った。
しかし量が尋常ではない。
「私の部隊、総出で回収させました。その怪しい医者はここの薬が枯渇していることをいいことに売り捌いていったようで」
「ちょっと待てよ、それいつの話しだ?」
「数ヶ月前らしい。それからはその医者は来てないようだね」
いつもニコニコしているグレイもこの時ばかりは表情が暗かった。
グレイが内通者でなかった場合、この液体が何かはわからない。
「回収したのはよかったが、悪い知らせもあるだ」
「なんだよ?」
「数ヶ月前からこの薬を飲んでいた者が突然暴れだして、町を出て行ってしまったらしい」
アルフィスとロールは絶句した。
メルティーナもこの薬が魔人を生み出す薬だということはまだ知らない。
だがサーシャと同じことが起こってるとなれば只事ではないと思っていた。
「他にこの薬を飲んでいたやつはいないのか?」
「すぐに調べたが、どうやらこの薬を処方した薬屋は一件だけで、飲んでいたのはその患者だけだそうだ。さすがに認可されてない薬を売るのはマズイからね。……薬が無いことの不安で買ったのはいいけど、やはり医者達にも良心があったようだ」
三人は胸を撫で下ろした。
この町全体にこの薬が行き渡っていたらどうなっていたことか。
「あと、その患者だが、追いかけた者の話しだと、どうやら北西の……ラタムの方角へ向かったようだ」
「ラ、ラタムだって……」
グレイから話を聞いたロールがカタカタと震え始めていた。
アルフィスとメルティーナは心配そうにロールを見た。
「どうしたの?ロール」
「ラタムは、ぼ、僕の故郷なんだ……」
「な、なんだと……」
涙目のロールを見てアルフィスとメルティーナが顔を見合わせた。
これは早めに対処しなければ大変なとこになる。
「ど、どうしよう……町には母親と兄弟が……」
おどおどしているロールの背中をアルフィスが思い切りドンと叩いた。
その衝撃にビックリして背筋を伸ばすロール。
「"どうしよう"じゃねぇ。行くんだろ?」
「ア、アルフィス……」
ロールは涙目だが意を決した表情だった。
メルティーナもそれを見て笑みを溢した。
「急ぐなら馬に直接乗って行くしかねぇな。どうすっかなぁ三人だと……」
「あんた馬乗れないでしょ。ロールの後ろに乗せてもらえばいい。私は残るから」
「はぁ?」
「もしかしたら、他に薬を飲んだ人がいるかもしれない。グレイと一緒に調査してるわ」
アルフィスは考えた。
ここは町の人も多いし、他にもグレイの部隊の聖騎士や魔法使いもいる。
グレイが内通者だったとしてもここでは手は出せないだろう。
「それでいくか……」
「すまない……アルフィス……」
「ダチの家族は俺の家族も同然だ。急ぐぞ!」
ロールは完全に涙していた。
それを見たアルフィスはロールがいかに家族を大事に思っているのかがわかった。
アルフィスとロールはメルティーナと一旦別れ、北西にある町ラタムへ向かうこととなった。
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