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魔法学校編
水の土と(1)
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アイン、マーシャのペアは準決勝まで辿り着いていた。
相手はアインにとっては苦手なローズガーデン家の令嬢であるマルティーナだった。
マルティーナがバディを組んだ相手は丸々と太った土の国の魔法使いのトビー・ゾルザムという生徒だった。
決して高い位の家柄でもなく、会うと必ず何かを食べているという妙な生徒で、マルティーナとの出会いから何から全く不明な存在だった。
「まさかここでマルティーナと当たるなんて……」
中庭のベンチに座るアインとマーシャ。
アインのトラウマが蘇る。
幼少期、幼馴染のマルティーナからの言葉責めは常軌を逸していたため、それを思い出しただけでも腹痛があった。
アインはお腹を抱えて痛みに耐えていた。
「大丈夫です!二人なら乗り越えられます!」
「そ、そうだね……」
アインの表情は暗い。
マーシャは長期休みから帰ってきた時から、アインの様子がおかしいことを気にしていた。
明らかにマルティーナとの戦いだけの負担でこうなってるわけではないことにはとっくに気づいていたが、深くは追求していない。
「必ず勝って一緒に土の国へ行きましょう!」
「……うん!」
アインの表情が明るくなる。
マーシャの笑顔と励ましがアインにとっては最高の薬だったのだ。
二人は共に闘技場へ向かった。
準決勝ともなれば闘技場内も大盛り上がりだった。
場内入りした四名に声援が飛ぶ。
闘技場の中央にアインとマーシャ、そしてマルティーナとトビーがいた。
マルティーナはレイピアを腰のホルダーにさし、かなり厚底のブーツを履いていて身長が10センチは高くなっている。
トビーはいつものごとくサンドイッチをぱくぱくと食べていて緊張感のカケラもない。
その間には教官がコイントスをおこなうため立っていた。
「"因縁"というのかしら?まさかここで眼鏡小僧と戦うことになるとは」
「アインさんは眼鏡小僧じゃありません!」
マルティーナとマーシャが睨み合う。
アインはそのやりとりに困惑していた。
教官がコイントスの準備に入る。
両チーム立ち合い、その距離は15メートルほどあった。
緊張の中、教官はコイントスをおこなう。
地面にコインが落ちた瞬間にアインは詠唱を始めた。
「水の刃よ、我が敵を斬り裂け……」
詠唱を完了する瞬間だった。
アインの目の前に畳ほどの大きさの土壁が地面から突き上げ視界を塞ぐ。
アインは突然のことで驚き、魔法を中断せざるおえなかった。
マーシャの目の前にも同様の土壁が視界を塞いでいた。
「エンブレム!」
マーシャがエンブレムを発動させて土壁を瞬時に消すと目の前にはマルティーナがおりレイピアの無数の突きを放っていた。
驚いたマーシャは後ろに飛び引くが、マルティーナの突進力は強い。
「無駄なことですわ」
マーシャがたまらず横薙ぎ払いの一閃を繰り出すが、また目の前に土壁が現れそれを切ってしまう。
土壁の上にはマルティーナが立っており、ジャンプ攻撃の突きでさらにマーシャを追い詰めた。
アインがマーシャの状況を掴もうと土壁の横に出ようとしても、またアインの目の前に土壁が次々と現れ視界を塞ぎ状況が全くわからなかった。
そのまま土壁が大量に出現しアインは闘技場の壁際まで追いやられてしまう。
マルティーナ、トビーペアの戦い方は完全に聖騎士と魔法使いを分断する戦闘方法だった。
アインは思考を止めず突破口を模索した。
「……水よ我が敵の自由を奪え!水の足枷!」
その言葉と共に闘技場全体が大きい水溜まりになった。
「水の激流!」
闘技場の壁端から水の竜巻が発生し、それがどんどん縮まる。
アインは視界が塞がれているため、どこに敵がいてもいい無差別攻撃だった。
聖騎士にはこの魔法は効かないため、マーシャやマルティーナには影響がない。
この攻撃は先にトビーを倒すためのものだ。
「土壁が消えない、どういうことだ?」
水の竜巻は完全に中央まで到達し消えた。
だが土壁が消えていないということはトビーは倒せなかったということを意味している。
さらにこの壁の強度は尋常ではない。
マルティーナはアインの攻撃を見て少し冷や汗をかいたが、トビーは思いの外やるようだ。
マルティーナがマーシャをレイピアの突きで追い詰めていた。
「もう降参したらどうかしら?このままアインのところまで追い詰めて、アインを倒してじっっくりあなたを倒す」
「させない!」
その言葉に感情的になったマーシャは一歩踏み込み、縦一線の攻撃に出る。
しかしまた土壁が現れ、それを斬る。
マーシャはマルティーナのジャンプ攻撃を警戒して頭上を見るが、そこにはマルティーナの姿はない。
「い、いない……上じゃない……?」
マーシャが困惑していると、目の前の土壁が消えてマルティーナが勢いよく突きを放ち、またマーシャは後ろへ下がってしまった。
マルティーナの厚底のブーツは土壁の上に立った時、足元をエンブレム範囲外にするために履いていた。
さらに地上の突進攻撃で土壁を自分のエンブレムで消し攻撃するという完全に二択を迫まる戦い方だった。
「このままじゃマズイ……」
アインの脳裏には"魔力覚醒"があった。
しかしこれを使ってしまうと、この戦いに勝ったとしても明日の決勝に魔法が使えない状態での出場となってしまう。
相手はこんなにシンプルな戦い方なのに、ここまで追い詰められるとはアインも思ってもみなかった。
もうマーシャはアインのいる壁際まで追い詰められそうだった。
マルティーナの剣技自体は上手くないが、土壁との連携でそれを完全に補っていたのだ。
「ここまできたら仕方ない……らしくないことをしようか……水の刃よ我が敵を斬り裂け……」
アインの目の前には土壁がある。
しかしアインはそんなのお構い無しに詠唱する。
「水の聖剣!」
土壁もろとも縦一線の水の斬撃で切り裂く。
ズドン!という音と共に水飛沫が上がり、所々に水溜まりができていた。
この攻撃でアインの視界にあった土壁は壊されており、周りを見るともう近くまでマーシャとマルティーナが来ていた。
さらに先を見ると、土でできたドーム状の壁があり、アインはそれがトビーだと認識した。
その瞬間に土壁がアインの目の前に現れるが、もう遅かった。
「場所は分かったぞ!"水の破龍・八卦"」
周りにできている水溜まりがぶるぶると震え始め、水飛沫が吹き上がり、それが水が龍の姿へ変わった。
それは八つ首あり、その水の八龍は全てトビーがいた方向へと突撃した。
相手はアインにとっては苦手なローズガーデン家の令嬢であるマルティーナだった。
マルティーナがバディを組んだ相手は丸々と太った土の国の魔法使いのトビー・ゾルザムという生徒だった。
決して高い位の家柄でもなく、会うと必ず何かを食べているという妙な生徒で、マルティーナとの出会いから何から全く不明な存在だった。
「まさかここでマルティーナと当たるなんて……」
中庭のベンチに座るアインとマーシャ。
アインのトラウマが蘇る。
幼少期、幼馴染のマルティーナからの言葉責めは常軌を逸していたため、それを思い出しただけでも腹痛があった。
アインはお腹を抱えて痛みに耐えていた。
「大丈夫です!二人なら乗り越えられます!」
「そ、そうだね……」
アインの表情は暗い。
マーシャは長期休みから帰ってきた時から、アインの様子がおかしいことを気にしていた。
明らかにマルティーナとの戦いだけの負担でこうなってるわけではないことにはとっくに気づいていたが、深くは追求していない。
「必ず勝って一緒に土の国へ行きましょう!」
「……うん!」
アインの表情が明るくなる。
マーシャの笑顔と励ましがアインにとっては最高の薬だったのだ。
二人は共に闘技場へ向かった。
準決勝ともなれば闘技場内も大盛り上がりだった。
場内入りした四名に声援が飛ぶ。
闘技場の中央にアインとマーシャ、そしてマルティーナとトビーがいた。
マルティーナはレイピアを腰のホルダーにさし、かなり厚底のブーツを履いていて身長が10センチは高くなっている。
トビーはいつものごとくサンドイッチをぱくぱくと食べていて緊張感のカケラもない。
その間には教官がコイントスをおこなうため立っていた。
「"因縁"というのかしら?まさかここで眼鏡小僧と戦うことになるとは」
「アインさんは眼鏡小僧じゃありません!」
マルティーナとマーシャが睨み合う。
アインはそのやりとりに困惑していた。
教官がコイントスの準備に入る。
両チーム立ち合い、その距離は15メートルほどあった。
緊張の中、教官はコイントスをおこなう。
地面にコインが落ちた瞬間にアインは詠唱を始めた。
「水の刃よ、我が敵を斬り裂け……」
詠唱を完了する瞬間だった。
アインの目の前に畳ほどの大きさの土壁が地面から突き上げ視界を塞ぐ。
アインは突然のことで驚き、魔法を中断せざるおえなかった。
マーシャの目の前にも同様の土壁が視界を塞いでいた。
「エンブレム!」
マーシャがエンブレムを発動させて土壁を瞬時に消すと目の前にはマルティーナがおりレイピアの無数の突きを放っていた。
驚いたマーシャは後ろに飛び引くが、マルティーナの突進力は強い。
「無駄なことですわ」
マーシャがたまらず横薙ぎ払いの一閃を繰り出すが、また目の前に土壁が現れそれを切ってしまう。
土壁の上にはマルティーナが立っており、ジャンプ攻撃の突きでさらにマーシャを追い詰めた。
アインがマーシャの状況を掴もうと土壁の横に出ようとしても、またアインの目の前に土壁が次々と現れ視界を塞ぎ状況が全くわからなかった。
そのまま土壁が大量に出現しアインは闘技場の壁際まで追いやられてしまう。
マルティーナ、トビーペアの戦い方は完全に聖騎士と魔法使いを分断する戦闘方法だった。
アインは思考を止めず突破口を模索した。
「……水よ我が敵の自由を奪え!水の足枷!」
その言葉と共に闘技場全体が大きい水溜まりになった。
「水の激流!」
闘技場の壁端から水の竜巻が発生し、それがどんどん縮まる。
アインは視界が塞がれているため、どこに敵がいてもいい無差別攻撃だった。
聖騎士にはこの魔法は効かないため、マーシャやマルティーナには影響がない。
この攻撃は先にトビーを倒すためのものだ。
「土壁が消えない、どういうことだ?」
水の竜巻は完全に中央まで到達し消えた。
だが土壁が消えていないということはトビーは倒せなかったということを意味している。
さらにこの壁の強度は尋常ではない。
マルティーナはアインの攻撃を見て少し冷や汗をかいたが、トビーは思いの外やるようだ。
マルティーナがマーシャをレイピアの突きで追い詰めていた。
「もう降参したらどうかしら?このままアインのところまで追い詰めて、アインを倒してじっっくりあなたを倒す」
「させない!」
その言葉に感情的になったマーシャは一歩踏み込み、縦一線の攻撃に出る。
しかしまた土壁が現れ、それを斬る。
マーシャはマルティーナのジャンプ攻撃を警戒して頭上を見るが、そこにはマルティーナの姿はない。
「い、いない……上じゃない……?」
マーシャが困惑していると、目の前の土壁が消えてマルティーナが勢いよく突きを放ち、またマーシャは後ろへ下がってしまった。
マルティーナの厚底のブーツは土壁の上に立った時、足元をエンブレム範囲外にするために履いていた。
さらに地上の突進攻撃で土壁を自分のエンブレムで消し攻撃するという完全に二択を迫まる戦い方だった。
「このままじゃマズイ……」
アインの脳裏には"魔力覚醒"があった。
しかしこれを使ってしまうと、この戦いに勝ったとしても明日の決勝に魔法が使えない状態での出場となってしまう。
相手はこんなにシンプルな戦い方なのに、ここまで追い詰められるとはアインも思ってもみなかった。
もうマーシャはアインのいる壁際まで追い詰められそうだった。
マルティーナの剣技自体は上手くないが、土壁との連携でそれを完全に補っていたのだ。
「ここまできたら仕方ない……らしくないことをしようか……水の刃よ我が敵を斬り裂け……」
アインの目の前には土壁がある。
しかしアインはそんなのお構い無しに詠唱する。
「水の聖剣!」
土壁もろとも縦一線の水の斬撃で切り裂く。
ズドン!という音と共に水飛沫が上がり、所々に水溜まりができていた。
この攻撃でアインの視界にあった土壁は壊されており、周りを見るともう近くまでマーシャとマルティーナが来ていた。
さらに先を見ると、土でできたドーム状の壁があり、アインはそれがトビーだと認識した。
その瞬間に土壁がアインの目の前に現れるが、もう遅かった。
「場所は分かったぞ!"水の破龍・八卦"」
周りにできている水溜まりがぶるぶると震え始め、水飛沫が吹き上がり、それが水が龍の姿へ変わった。
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