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魔法学校編
バーサーカー
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夕方 聖騎士寮
マーシャは寮の自室の机に置かれた二枚の紙を見ていた。
一枚はリューネからのメッセージだ。
入れ替わった時は、たまに何があったのか書き残してくれる。
そこには"アインはバディを断った"との一文だけ書かれていた。
そしてもう一枚は、アインからの二通目の手紙だった。
マーシャは勇気を出して読んでみたが、そこに書かれていたのは、"リューネと決闘がしたい"という一文と日時が書かれていた。
マーシャは悩んだ。
アインが酷い目に遭うかもしれない……
だが、それ以上にアインを信じたかった。
もしかしたら、アインは今自分が置かれた状況から連れ出してくれるのではないかと。
マーシャはリューネに手紙を書き、剣のグリップを握った。
闘技場
観客席にはちらほら観戦者がいた。
闘技場内は妙な緊張感で圧迫され、不思議な空気を漂わせた。
闘技場の中央、アインとマーシャが向かい合う。
マーシャは剣を握って肩に乗せ、無表情にアインを睨む。
もう目の前にいるのはマーシャではなくリューネだった。
アインの隣にはトッドもいた。
「今まですまなかったなアイン……だが、マーシャ自身、望んでいるのか?バディを組むことは」
「わからない。でもこれに勝って、もう一度あらためて誘おうと思う」
「そうか……」
アインはリューネを越えることで、自分の弱い心を乗り越えようとしていた。
今まで自分の意見を押し殺して生きてきた弱い自分だ。
乗り越えられた時、きっとマーシャと一緒に戦うことができる。
アインはそう信じていた。
「しかし、大丈夫か?」
「ああ、あの学年最下位でも勝てたんだ。俺だってやれるさ。それに……」
「それに?」
「俺は水の王と握手してるんだぜ」
トッドは無言で驚いた表情をした。
水の王が握手するというのは稀なことだ。
よほど魔力量が高く魔法使いとして見込みがあるか、水の王自身が興味を引くような人物でない限り絶対に握手はしない。
「その時、水の王に言われたんだ、"次の水の王は君かもね"って」
「マジか……」
「俺は冗談だと思ったよ。でも今はその言葉を信じたい」
そう言うと、アインはリューネの方を向く。
「話は終わったかい?アイン・スペルシア」
リューネの眼光を見ると、あまりの殺気に押しつぶされそうになるアイン。
蛇に睨まれた蛙のような気分だ。
だがアインはもう迷っていなかった。
ただリューネを倒すことだけを考えていた。
「トッド、コイントスを頼む」
「了解」
そう言うとトッドがアインとリューネの間に立ち、コイントスの準備に入る。
「わざわざフルネームで呼ばなくてもいいぞ」
「……身をもってしても真実を知りたいか?アイン」
「俺は負けない」
その言葉を聞いたリューネは不気味に笑う。
リューネは肩に乗せていた剣を鞘から引き抜く。
アインも魔法具を構え、詠唱準備に入る。
両者の睨み合う中、運命の時がきた。
トッドは勢いよくコイントスをおこなった。
コインが地面に落ちた瞬間、アインが詠唱を始める。
「水の刃よ、我が敵を斬り裂け!」
どういうことか、リューネは動かず、不適な笑みを浮かべアインの詠唱を待っていた。
「"水の聖剣"!」
縦一直線の範囲攻撃。
ズドン!という音と共に水飛沫が上がる。
目の前には無傷のリューネがいた。
ちょうどリューネが立っているところだけ水溜まりが無い。
リューネは右手の甲を見せる。
エンブレムは三日月の形をして光っていた。
「一度だけチャンスを与えたが、やはり魔法使いは聖騎士には勝てないのさ」
そう言うと、リューネは一気にダッシュし、アインとの間合いを詰める。
そのスピードは弓矢のように速い。
「!!……水よ我が敵を惑わせ……」
アインはそのスピードに驚愕するが、頭は冷静だ。
リューネが横の薙ぎ払いをおこない、アインの胴は切り裂かれる。
……と思いきや、切り裂かれた体は水に変わり地面に落ち水溜まりになる。
「……"水の幻影"」
アインは水の幻影の数メートル後ろにいた。
「くだらん小細工だ」
「……"水の激流"!」
リューネが切り捨てた水の幻影から生まれた水溜まりから水の竜巻が起こる。
だが、リューネはそんなのものともせずに竜巻ごと切って捨てた。
そのまま、リューネはさらに加速してアインに両手持ち縦一閃で切り掛かる。
アインは間一髪横に側転して避けるが、腕に傷を負った。
「いつまでもつかな?アイン」
リューネの剣技の猛攻に成す術がないアイン。
回避が精一杯で詠唱ができない。
そうこうしているうちに壁際まで追い詰められる。
「くっ!」
「これで終わりだ!」
リューネがアインの顔めがけて剣を突く。
それをアインは間一髪、首を曲げてかわし、剣は壁に突き刺さる。
アインの頬から血が流れる。
リューネは完全にアインの息の根を止める気で戦っていた。
「アイン!もう降参しろ!殺されるぞ!」
トッドの悲痛な叫びが闘技場内を覆う。
観戦している生徒も、意気消沈していた。
だがアインは諦めていなかった。
「仕方ない……"水の破竜"!」
アインの叫びと共に、最初に水の聖剣で作られた水溜まりから、水の蒼い龍が出現し、アインの目の前のリューネに横から襲いかかった。
リューネは剣で押し返そうとしたのが間違いだった。
そのあまりの水量、水圧でエンブレムでは捌《さば》ききれず数メートル吹き飛ばされる。
だが、すぐに立て直したリューネはすぐさまアインに向かってダッシュ。
またも剣の猛攻がアインを襲う。
まさにそれは戦いに魅入られた狂人《バーサーカー》だった。
闘技場の外周を回るようにして逃げるアインだが、その体はもう傷だらけだった。
「もうやめろ!アイン!聖騎士には勝てないんだ!」
逃げ回るだけのアインに対して、トッドは悲痛に叫ぶ。
魔法を無詠唱で発動させるための水溜まりはもう無い。
後ろに下がり続けていたアインは遂につまずき、後ろに倒れる。
「……う!」
「アイン・スペルシア、よく頑張ったよ。だが魔法使いは聖騎士には勝てない。これがこの世の真実なんだ」
そう呟いたリューネは、倒れたアインを一刀両断した。
……がそれは水の幻影で切られた幻影が水溜まりになる。
リューネの背後、数メートル離れたところにアインがいた。
だがアインは傷だらけでもう立っているのがやっとの状態で息が切れそうだった。
「……真実?俺には真実というより、洗脳のようにしか聞こえない。俺は今日、聖騎士に勝つ」
振り向いたリューネはゆっくり歩いてアインに近づくが、息ひとつ切らしていない。
リューネはもう勝利を確信していた。
「なにをやっても無駄だアイン。お前の負けだ。お前はマーシャに相応しくない」
「本当は対抗戦まで見せないつもりだったけど……」
リューネは不敵な笑みを浮かべるが、次第にその表情を曇らせる。
リューネは吐く息が白いくなっていることに気づく。
闘技場内の空気が変わったことに観客席も騒ついていた。
「なんか寒くないか……?」
「見ろ!雪降ってきたぞ!」
「お、おい、なんかアインの様子おかしくないか?」
アインの髪の色が青白く発光する。
目の色も青い光を放っている。
「魔力覚醒……」
その言葉と同時に、アインの立つ場所に巨大な白い魔法陣が展開した。
そして闘技場内は一気に"冷気"に包まれた。
マーシャは寮の自室の机に置かれた二枚の紙を見ていた。
一枚はリューネからのメッセージだ。
入れ替わった時は、たまに何があったのか書き残してくれる。
そこには"アインはバディを断った"との一文だけ書かれていた。
そしてもう一枚は、アインからの二通目の手紙だった。
マーシャは勇気を出して読んでみたが、そこに書かれていたのは、"リューネと決闘がしたい"という一文と日時が書かれていた。
マーシャは悩んだ。
アインが酷い目に遭うかもしれない……
だが、それ以上にアインを信じたかった。
もしかしたら、アインは今自分が置かれた状況から連れ出してくれるのではないかと。
マーシャはリューネに手紙を書き、剣のグリップを握った。
闘技場
観客席にはちらほら観戦者がいた。
闘技場内は妙な緊張感で圧迫され、不思議な空気を漂わせた。
闘技場の中央、アインとマーシャが向かい合う。
マーシャは剣を握って肩に乗せ、無表情にアインを睨む。
もう目の前にいるのはマーシャではなくリューネだった。
アインの隣にはトッドもいた。
「今まですまなかったなアイン……だが、マーシャ自身、望んでいるのか?バディを組むことは」
「わからない。でもこれに勝って、もう一度あらためて誘おうと思う」
「そうか……」
アインはリューネを越えることで、自分の弱い心を乗り越えようとしていた。
今まで自分の意見を押し殺して生きてきた弱い自分だ。
乗り越えられた時、きっとマーシャと一緒に戦うことができる。
アインはそう信じていた。
「しかし、大丈夫か?」
「ああ、あの学年最下位でも勝てたんだ。俺だってやれるさ。それに……」
「それに?」
「俺は水の王と握手してるんだぜ」
トッドは無言で驚いた表情をした。
水の王が握手するというのは稀なことだ。
よほど魔力量が高く魔法使いとして見込みがあるか、水の王自身が興味を引くような人物でない限り絶対に握手はしない。
「その時、水の王に言われたんだ、"次の水の王は君かもね"って」
「マジか……」
「俺は冗談だと思ったよ。でも今はその言葉を信じたい」
そう言うと、アインはリューネの方を向く。
「話は終わったかい?アイン・スペルシア」
リューネの眼光を見ると、あまりの殺気に押しつぶされそうになるアイン。
蛇に睨まれた蛙のような気分だ。
だがアインはもう迷っていなかった。
ただリューネを倒すことだけを考えていた。
「トッド、コイントスを頼む」
「了解」
そう言うとトッドがアインとリューネの間に立ち、コイントスの準備に入る。
「わざわざフルネームで呼ばなくてもいいぞ」
「……身をもってしても真実を知りたいか?アイン」
「俺は負けない」
その言葉を聞いたリューネは不気味に笑う。
リューネは肩に乗せていた剣を鞘から引き抜く。
アインも魔法具を構え、詠唱準備に入る。
両者の睨み合う中、運命の時がきた。
トッドは勢いよくコイントスをおこなった。
コインが地面に落ちた瞬間、アインが詠唱を始める。
「水の刃よ、我が敵を斬り裂け!」
どういうことか、リューネは動かず、不適な笑みを浮かべアインの詠唱を待っていた。
「"水の聖剣"!」
縦一直線の範囲攻撃。
ズドン!という音と共に水飛沫が上がる。
目の前には無傷のリューネがいた。
ちょうどリューネが立っているところだけ水溜まりが無い。
リューネは右手の甲を見せる。
エンブレムは三日月の形をして光っていた。
「一度だけチャンスを与えたが、やはり魔法使いは聖騎士には勝てないのさ」
そう言うと、リューネは一気にダッシュし、アインとの間合いを詰める。
そのスピードは弓矢のように速い。
「!!……水よ我が敵を惑わせ……」
アインはそのスピードに驚愕するが、頭は冷静だ。
リューネが横の薙ぎ払いをおこない、アインの胴は切り裂かれる。
……と思いきや、切り裂かれた体は水に変わり地面に落ち水溜まりになる。
「……"水の幻影"」
アインは水の幻影の数メートル後ろにいた。
「くだらん小細工だ」
「……"水の激流"!」
リューネが切り捨てた水の幻影から生まれた水溜まりから水の竜巻が起こる。
だが、リューネはそんなのものともせずに竜巻ごと切って捨てた。
そのまま、リューネはさらに加速してアインに両手持ち縦一閃で切り掛かる。
アインは間一髪横に側転して避けるが、腕に傷を負った。
「いつまでもつかな?アイン」
リューネの剣技の猛攻に成す術がないアイン。
回避が精一杯で詠唱ができない。
そうこうしているうちに壁際まで追い詰められる。
「くっ!」
「これで終わりだ!」
リューネがアインの顔めがけて剣を突く。
それをアインは間一髪、首を曲げてかわし、剣は壁に突き刺さる。
アインの頬から血が流れる。
リューネは完全にアインの息の根を止める気で戦っていた。
「アイン!もう降参しろ!殺されるぞ!」
トッドの悲痛な叫びが闘技場内を覆う。
観戦している生徒も、意気消沈していた。
だがアインは諦めていなかった。
「仕方ない……"水の破竜"!」
アインの叫びと共に、最初に水の聖剣で作られた水溜まりから、水の蒼い龍が出現し、アインの目の前のリューネに横から襲いかかった。
リューネは剣で押し返そうとしたのが間違いだった。
そのあまりの水量、水圧でエンブレムでは捌《さば》ききれず数メートル吹き飛ばされる。
だが、すぐに立て直したリューネはすぐさまアインに向かってダッシュ。
またも剣の猛攻がアインを襲う。
まさにそれは戦いに魅入られた狂人《バーサーカー》だった。
闘技場の外周を回るようにして逃げるアインだが、その体はもう傷だらけだった。
「もうやめろ!アイン!聖騎士には勝てないんだ!」
逃げ回るだけのアインに対して、トッドは悲痛に叫ぶ。
魔法を無詠唱で発動させるための水溜まりはもう無い。
後ろに下がり続けていたアインは遂につまずき、後ろに倒れる。
「……う!」
「アイン・スペルシア、よく頑張ったよ。だが魔法使いは聖騎士には勝てない。これがこの世の真実なんだ」
そう呟いたリューネは、倒れたアインを一刀両断した。
……がそれは水の幻影で切られた幻影が水溜まりになる。
リューネの背後、数メートル離れたところにアインがいた。
だがアインは傷だらけでもう立っているのがやっとの状態で息が切れそうだった。
「……真実?俺には真実というより、洗脳のようにしか聞こえない。俺は今日、聖騎士に勝つ」
振り向いたリューネはゆっくり歩いてアインに近づくが、息ひとつ切らしていない。
リューネはもう勝利を確信していた。
「なにをやっても無駄だアイン。お前の負けだ。お前はマーシャに相応しくない」
「本当は対抗戦まで見せないつもりだったけど……」
リューネは不敵な笑みを浮かべるが、次第にその表情を曇らせる。
リューネは吐く息が白いくなっていることに気づく。
闘技場内の空気が変わったことに観客席も騒ついていた。
「なんか寒くないか……?」
「見ろ!雪降ってきたぞ!」
「お、おい、なんかアインの様子おかしくないか?」
アインの髪の色が青白く発光する。
目の色も青い光を放っている。
「魔力覚醒……」
その言葉と同時に、アインの立つ場所に巨大な白い魔法陣が展開した。
そして闘技場内は一気に"冷気"に包まれた。
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