地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ

文字の大きさ
上 下
9 / 200
魔法学校編

決闘

しおりを挟む
魔法学校と聖騎士学校は並んでおり、校舎自体は分かれていた。
校舎どうしの真ん中には大きい中庭があり、どちらの生徒も散歩や日向ぼっこを楽しむ場所であった。
お互い授業を受けている時は別れているため、バディ申し込みはこの中庭でおこなわれることは長年の通例。
そのほとんどは魔法学校の生徒からの申込みで、聖騎士学校の女子生徒はそれを待つ。
それはまさに愛の告白に似ていた。


学校中庭

「なぜこの剣が"カタナ"だと?」

アゲハのこの言葉にザックとライアンは顔を見合わせて首を傾げる。
二人とも"カタナ"という言葉は知らなかった。

「そりゃあ俺の故郷の伝統的な武器だからな」

アルフィスはそんなのは当たりまえの如く答える。
その"故郷"とはもちろん前世に住んでいた日本のことだ。

「あなた、ネクタイをしていないようだけど、どこの国の出身かしら?」

ネクタイは属性を判断するために色が違う。
火の国出身ならレッド、水の国出身ならブルー、風の国出身ならグリーン、土の国ならブラウンだ。
聖騎士学校の女子はリボン色が違っている。

「火の国だけど」

「火の国……この剣は火の国の剣なのですね」

なにか誤解があるような気がしたので、アルフィスは否定しようとするが、めんどくさくてやめた。
ザックとライアンは、お互い顔を見合わせたまま、また首を傾げる。
火の国であんな剣は見たことない。

「私と取引しませんか?」

「取引?」

前にも経験ある言葉にアルフィスは身構える。
これはまた面倒ごとになると、簡単に想像できたからだ。

「あなたはまだバディはいらっしゃらないでしょう?」

「いたらどうする?」

「変な駆け引きは必要はないですよ。あなたはこちらでも有名ですから」

こちらとは聖騎士学校のことだろう。
アルフィスは頭をかく。
まさかそんなに有名になっていたとは。

「私とバディを組みませんか?そのかわり私をあなたの故郷に連れて行ってほしい」

この言葉にザックとライアンが驚く。
それはバディ申込みは男がするもので、女子がするものではないという常識を覆えしていたからだ。

「アル!凄いぞ!」

「アル!これは受けましょう!」

それはそうだった。
アルフィスの悪評だとバディはおろか、女子ともまともに話しはできないだろうところ、なんと女子からバディの申込みがあったのだ。
願ったり叶ったりだった。

「すまんな。お断りする」

「え?」

「は?」

「なんでや」

即答。
アルフィスは早々その場から立ち去ろうと振り向き歩き始めていた。

「待ってください。理由が聞きたい」

アゲハはあまりの出来事に驚いていた。
自分の申込みを断るなんてどうかしてる、そう思ったからだ。

「お前は、さっきの男に断る理由を話したか?」

そう言って、歩みをやめないアルフィスをザックとライアンは追いかけた。

「あえて言うなら、お前弱そうだからだ」

「私が弱い……?」

その後アゲハは言葉を出せなかった。
下級貴族なんかに弱者呼ばわりされる。
これほどの屈辱はない。
放心状態のアゲハは去るアルフィスの背中をずっと見ていた。

______________________________


授業がすべて終わり、寮に戻る頃には噂は広がっていた。
下級貴族があのクローバル家の令嬢のバディ申込みを断ったと。

アゲハは聖騎士学校でも好成績で、特に実技だと上級生をも圧倒し、学年最強とまで言われていた。
そのアゲハ・クローバルの誘いを断ったとあれば広まらないわけがない。
魔法学校、聖騎士学校共にこの話題で持ちきりだった。

アルフィスはザックとライアンと寮に戻ろうと校門を出るところだった。
アルフィスはここまで来るのに男子生徒に睨まれすぎて生きた心地がしなかった。

「俺なんか悪いことしたか?」

アルフィスは呑気にザックとライアンに聞いた。
全く事の重大さを理解していなかった。

「あの誘いを断るのはただの馬鹿だと思うぞ。みんな喉から手が出るほどアゲハ嬢のバディになりたいと思ってるからな」

「もうアルの友達やめたくなったよ……こっちまで睨まれてる」

アルフィスは自分が睨まれるならまだしも友達がとばっちりを食らっているこに心底申し訳なさは感じていた。

校門前に辿り着くと人だかりができていた。
なにやら男子も女子も何人も集まっており、物々しい雰囲気だった。
校門前にはアゲハ・クローバルが立っていた。
その周りにギャラリーがいたのだ。

「あなたはアルフィス・ハートルと言いましたね」

「どうしたんだ?またなんか用か?」 

周りがざわつく。
なぜこんな下級貴族に会いに魔法学校の校門前まで来るのかと。

「あなたは私が弱いといいましたが、本当にそうか試してみませんか?あなたは聖騎士団長にまで戦いを挑んだと聞きました。私ぐらい倒せないと団長には勝てないですよ」

それは決闘の申込みだった。
バディの申込みは正直どうでもよかったが、喧嘩の誘いにはアルフィスも興奮した。

「別に構わないぜ。いつやるんだ?」

「一時間後に競技場で」

競技場は学校の真裏にある施設で実技訓練の授業に使う場所だ。

「またあとで」

そう言ってアゲハはその場を立ち去った。
周りで見ていた生徒達はざわついていた。
魔法使いは魔法使い、聖騎士は聖騎士と戦うのはわかるが、魔法使いと聖騎士の戦いは無謀だった。
なにせ魔法使いは聖騎士には勝てないと言われてるからだ。

「アル、お前馬鹿か、なんでバディの誘いは断って、決闘の方を受けるんだよ!」

「そうだよ!絶対やめた方がいい!」

ザックもライアンも必死に止めたがる。

「なんでだよ。いいだろ別に。禁止されてるわけじゃないし」

確かに決闘自体は教官の許しさえあればやってもいいとこにはなっていた。
それは魔法使いと聖騎士の決闘もだ。

「お前、学校行事に詳しくないくせして、なんでそんなこと知ってるんだよ……」

「でも聖騎士には魔法使いは勝てないよ。なにせエンブレムがあるからね……」

エンブレムは魔法使いで言うところのスキル。
この世界では女子は魔力を全く持たない。
逆に魔力を持たない者しか刻めないスキルがエンブレムだ。
エンブレムはすべて同じ能力で、その差は使い手の生命力による。
その能力はアンチマジック。

エンブレムの刻まれた女子、つまり聖騎士には魔法は効かない。
魔法使いは聖騎士には絶対勝てないことはこの世界の常識だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

火駆闘戯 第一部

高谷 ゆうと
ファンタジー
焼暴士と呼ばれる男たちがいた。 それは、自らの身体ひとつで、人間を脅かす炎と闘う者たちの総称である。 人間と対立する種族、「ラヨル」の民は、その長であるマユルを筆頭に、度々人間たちに奇襲を仕掛けてきていた。「ノーラ」と呼ばれる、ラヨルたちの操る邪術で繰り出される炎は、水では消えず、これまでに数多の人間が犠牲になっていった。人々がノーラに対抗すべく生み出された「イョウラ」と名付けられた武術。それは、ノーラの炎を消すために必要な、人間の血液を流しながらでも、倒れることなく闘い続けられるように鍛え上げられた男たちが使う、ラヨルの民を倒すための唯一の方法であった。 焼暴士の見習い少年、タスクは、マユルが持つといわれている「イホミ・モトイニ」とよばれる何かを破壊すべく、日々の鍛錬をこなしていた。それを破壊すれば、ラヨルの民は、ノーラを使えなくなると言い伝えられているためだ。 タスクは、マユルと対峙するが、全く歯が立たず、命の危機にさらされることになる。己の無力さを痛感したその日、タスクの奇譚は、ゆっくりと幕を開けたのだった。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

【禁術の魔法】騎士団試験から始まるバトルファンタジー

浜風 帆
ファンタジー
辺境の地からやって来たレイ。まだ少し幼なさの残る顔立ちながら、鍛え上げられた体と身のこなしからは剣術を修練して来た者の姿勢が窺えた。要塞都市シエンナにある国境の街道を守る騎士団。そのシエンナ騎士団に入るため、ここ要塞都市シエンナまでやってきたのだが、そこには入団試験があり…… ハイファンタジー X バトルアクション X 恋愛 X ヒューマンドラマ 第5章完結です。 是非、おすすめ登録を。 応援いただけると嬉しいです。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

処理中です...