82 / 84
第八十二話 わたしの意識はこの世に戻っていく
しおりを挟む
わたしの意識は少しずつ戻ってきていた。
フォルテーヌではなく、今この世で生きているフローラリンデとして。
わたしは前世の自分を思い出すことができた。
マロールデックス子爵家令嬢のフォルテーヌとして前世を生きてきたのが、今世で生きているこのわたしフローラリンデ。
前世は存在していたのだし、今世も存在していた。
そして、わたしと来世、つまり、今世での結婚の約束をしていたのが、前世ではオディアン殿下として生きたディックスヴィアン殿下。
殿下が前世での最後に言った、
「わたしは来世で、あなたと結婚することを心から望んでいます。結婚の約束をしたいと思います。よろしくお願いします」
と言う言葉。
今はしっかり思い出している。
しかし、旅の途中で殿下に救けられるまでは、前世での殿下のことを思い出すことはできなかった。
もしルアンソワ様との婚約以前に、前世での殿下のことを思い出せていたのであれば、その婚約はいくら周囲にすすめられても断っていたと思う。
殿下と前世で結婚の約束をしたのだから、きっと今世でも会うことができる。
そして、結婚することができる。
わたしはそう強く思って、殿下と会える日を待ち望んでいたと思う。
しかし、それはできなかった。
わたしは幼い頃から幸せな結婚にあこがれてきた。
いつの日か、わたしと前世もしくはあの世で約束をした人が迎えにきてくれるものと信じていた。
ただ、その約束した人のことを思い出すことはできなかった。
その方が、殿下だということを思い出すことはできなかった。
殿下のことを思い出せなかったわたしは、ルアンソワ様と婚約することになった。
ルアンソワ様が、約束をした方ではないか、という期待があった。
ルアンソワ様に初めて会う時も期待をしていた。
しかし、ルアンソワ様は、約束していた方ではないのでは、と初めて会った時にわたしは思った。
約束をしていた方であれば、会った時にすぐお互いに懐かしく思うという。
そして、強い好意をその場で持ち、そのまま恋にと進んでいくという話を聞いていた。
ルアンソワ様とわたしの間にはそういうものはなかった。
ルアンソワ様に対して、懐かしく思う気持ちは湧いてこなかったし、好意もなかなか湧いてこなかった。
ルアンソワ様の方も、言葉はやさしかったが、わたしにはたいして興味はなさそうだったし、好意も湧いているようには思えなかった。
そこで、一旦は落胆した。
約束をした方でない方と、このまま結婚まで進んでいいものなのだろうか?
婚約を断り、約束した方を待ち続けるべきではないのだろうか?
今思うと待ち続けるべべきだったと思う。
しかし、わたしは、ルアンソワ様との婚約は断れなかった。
家と家のことなので、断ることが難しかったのが一番大きい。
ただ、それだけではなく、ルアンソワ様が約束した方である可能性はまだあるかもしれない、と思っていたところも大きいと思う。
婚約まで進んでいるということは、約束をしたからではないのだろうか?
今ルアンソワ様とわたしが、お互いを懐かしく思うことができなかったり、好意がなかなか湧いてこないのは、会ってから間もないからで、二人でこれから一緒にいることが多くなれば、約束を思い出し、親密になっていけるのでは?
そう思ったわたしは、心を切り替え、婚約したからには、ルアンソワ様を愛し、公爵家の夫人にふさわしい女性になろうと一生懸命努力した。
フォルテーヌではなく、今この世で生きているフローラリンデとして。
わたしは前世の自分を思い出すことができた。
マロールデックス子爵家令嬢のフォルテーヌとして前世を生きてきたのが、今世で生きているこのわたしフローラリンデ。
前世は存在していたのだし、今世も存在していた。
そして、わたしと来世、つまり、今世での結婚の約束をしていたのが、前世ではオディアン殿下として生きたディックスヴィアン殿下。
殿下が前世での最後に言った、
「わたしは来世で、あなたと結婚することを心から望んでいます。結婚の約束をしたいと思います。よろしくお願いします」
と言う言葉。
今はしっかり思い出している。
しかし、旅の途中で殿下に救けられるまでは、前世での殿下のことを思い出すことはできなかった。
もしルアンソワ様との婚約以前に、前世での殿下のことを思い出せていたのであれば、その婚約はいくら周囲にすすめられても断っていたと思う。
殿下と前世で結婚の約束をしたのだから、きっと今世でも会うことができる。
そして、結婚することができる。
わたしはそう強く思って、殿下と会える日を待ち望んでいたと思う。
しかし、それはできなかった。
わたしは幼い頃から幸せな結婚にあこがれてきた。
いつの日か、わたしと前世もしくはあの世で約束をした人が迎えにきてくれるものと信じていた。
ただ、その約束した人のことを思い出すことはできなかった。
その方が、殿下だということを思い出すことはできなかった。
殿下のことを思い出せなかったわたしは、ルアンソワ様と婚約することになった。
ルアンソワ様が、約束をした方ではないか、という期待があった。
ルアンソワ様に初めて会う時も期待をしていた。
しかし、ルアンソワ様は、約束していた方ではないのでは、と初めて会った時にわたしは思った。
約束をしていた方であれば、会った時にすぐお互いに懐かしく思うという。
そして、強い好意をその場で持ち、そのまま恋にと進んでいくという話を聞いていた。
ルアンソワ様とわたしの間にはそういうものはなかった。
ルアンソワ様に対して、懐かしく思う気持ちは湧いてこなかったし、好意もなかなか湧いてこなかった。
ルアンソワ様の方も、言葉はやさしかったが、わたしにはたいして興味はなさそうだったし、好意も湧いているようには思えなかった。
そこで、一旦は落胆した。
約束をした方でない方と、このまま結婚まで進んでいいものなのだろうか?
婚約を断り、約束した方を待ち続けるべきではないのだろうか?
今思うと待ち続けるべべきだったと思う。
しかし、わたしは、ルアンソワ様との婚約は断れなかった。
家と家のことなので、断ることが難しかったのが一番大きい。
ただ、それだけではなく、ルアンソワ様が約束した方である可能性はまだあるかもしれない、と思っていたところも大きいと思う。
婚約まで進んでいるということは、約束をしたからではないのだろうか?
今ルアンソワ様とわたしが、お互いを懐かしく思うことができなかったり、好意がなかなか湧いてこないのは、会ってから間もないからで、二人でこれから一緒にいることが多くなれば、約束を思い出し、親密になっていけるのでは?
そう思ったわたしは、心を切り替え、婚約したからには、ルアンソワ様を愛し、公爵家の夫人にふさわしい女性になろうと一生懸命努力した。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された男爵令嬢〜盤面のラブゲーム
清水花
恋愛
チェスター王国のポーンドット男爵家に生を受けたローレライ・ポーンドット十五歳。
彼女は決して高位とは言えない身分の中でありながらも父の言いつけを守り貴族たる誇りを持って、近々サーキスタ子爵令息のアシュトレイ・サーキスタ卿と結婚する予定だった。
だが、とある公爵家にて行われた盛大な茶会の会場で彼女は突然、サーキスタ卿から婚約破棄を突きつけられてしまう。
突然の出来事に理解が出来ず慌てるローレライだったが、その婚約破棄を皮切りに更なる困難が彼女を苦しめていく。
貴族たる誇りを持って生きるとは何なのか。
人間らしく生きるとは何なのか。
今、壮絶な悪意が彼女に牙を剥く。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約者はやさぐれ王子でした
ダイナイ
恋愛
「お前の婚約者が決まった。相手はレオン・クライトン王子殿下だ」
アーヴァイン公爵令嬢のシルヴィアは、父親に勝手に婚約者を決められてしまう。
しかもその相手は、クライトン王国でやさぐれ王子と悪名高い第二王子のレオン・クライトンだった。
いつかまた、幸せな日常に戻れると信じていたシルヴィアは、突然の婚約に抵抗しようとする。
しかし父親がそれを許すはずもなく、抵抗むなしく婚約が決まってしまう。
こうしてシルヴィアは、やさぐれ王子との婚約生活が始まってしまった。
妹に邪魔される人生は終わりにします
風見ゆうみ
恋愛
公爵家の長女として生まれた私、エリナ・モドゥルスは、二卵性双生児の妹、エイナとは仲良くやってきたつもりだった。
無愛想な私と天使の様に可愛いと言われるエイナ。
周りからは悪魔と天使の様だと言われていたけれど、大して気にもとめていなかった。
私の婚約者である第一王子、クズーズ殿下との結婚を控えたある日、王家主催の夜会の休憩所で、エイナと殿下が愛を語らい、エイナが私にいじめられていると嘘を話しているのを聞いてしまう。
父に報告しようとパーティ会場に戻ろうとしたところ、エイナの専属メイドにより、私は階段から落とされる。
意識を失う寸前に視界に入ったのは、妹のエイナが、ほくそ笑む姿だった。
運良く助かった私は、記憶喪失のふりをして、身の安全を確保しつつエイナの本性を暴くと決めた。
婚約者は婚約者で、見舞いに来たくせに、エイナの話ばかり。
そんな婚約者なんていらない。
それなら妹がいらないと言っている冴えない第二王子殿下と婚約するわ!
※2024年1月下旬に書籍化が決まりました。
※現在はifバージョンを更新中です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる