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第五十五話 婚約したい女性 (ルアンソワサイド)
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今日は、イレーレナが来る日。
この日、わたしはフローラリンデとの婚約を破棄しようと思っていた。
いつものように、自分の部屋で、イレーレナと二人だけの世界に入っていたわたし。
その世界から戻ってきてからも、イレーレナと二人でくつろいでいた。
「イレーレナよ、今日わたしは、フローラリンデとの婚約を破棄する」
「いよいよですね」
イレーレナは笑う。
「昨日も話をした通り、お前にもきてもらう。お前という存在がいれば、フローラリンデは打撃を受けるだろう」
「フローラリンデさんがかわいそうな気がしますけど」
「心にもないことをよくいえるものだな。うれしくてしょうがないだろう」
「もちろんうれしいですわ。でもフローラリンデさんがかわいそうだとは思います。そこまでフローラリンデさんのことを嫌っていたのですか?」
「フローラリンデは、わたしに贅沢をするな、と言った。それだけでも嫌う理由としては充分だ。そして、もともとお前と違ってゴージャスではない。わたしはゴージャスな子が好きなんだ」
そう言った後、わたしは唇をイレーレナの唇に重ねた。
唇を離すと、
「わたしには、今はお前がいればいい」
とわたしは言った。
「今だけですか?」
「まあ今はだ。その内、また他の女性を愛するかもしれない。わたしはとにかく遊びたい」
「わたしを婚約者にする気はないんでしょうか?」
「ないな」
「そんな……。婚約を破棄されるのであれば、次の婚約者が必要でしょう? わたしだったら、家柄も申し分ないし、ルアンソワ様をこうして満足させることができる。婚約者としてこれ以上の適任な女性はいません」
イレーレナは、ちょっと厳しい表情になって言う。
また婚約の話だ。うんざりする。
わたしが十人の女性と別れてきた一番の要因は、彼女たちが婚約者の座を要求してきたことだった。
婚約し結婚するというのは、他の女性と遊びにくくなり自由がなくなっていくことだとわたしは思っている。
父親に言われたので、やむをえず婚約したが、その婚約も嫌になって破棄をするのだ。
なぜ、また婚約をしなければならないのだろう。
イレーレナのことは好きだ。
でも婚約をしなければならないということにはならない。
今の関係が続けばいいと思っている。
とはいっても、きっぱり断るのも、関係をおかしくしてしまう。
「まあ、お前がもっと魅力的になっていけば、婚約を検討してもいい」
わたしがそう言った途端、イレーレナは笑顔になった。
「それだったら自信があります。もっと魅力的になり、ルアンソワ様の婚約者になっていきます」
「すごい自信だな」
「ここまで付き合ってきたんですもの。ただの恋人でいたくはありませんわ」
そう言って笑うイレーレナ。
いや、わたしは、イレーレナとはただの恋人のままでいいと思っている。
これが婚約者になれば、私の自由を制限しようとするに違いない。
そうなると、新しい恋はできなくなる。
まだまだわたしは、いろいろな女性と遊びたい。
イレーレナはその女性の中の一人でしかないのだ。
「わたしはルアンソワ様が好きです」
イレーレナは甘えた声で言ってくる。
「わたしもイレーレナが好きだ」
「婚約者に今すぐなりたいです」
「それは無理だ」
「そんなことはおっしゃらずに。お願いしたいと思います」
「とにかくもっと魅力的になってほしい。そうすれば検討する」
「今日は無理なんですね。今日婚約したかったのですけど」
残念そうなイレーレナ。
「今日はまず、婚約を破棄しなければならないんだ。いずれにしても、それからのことだ。検討していないとは言っていない。今日は、とにかく集中したい」
「ルアンソワ様がそうおっしゃるなら、今日はもう言いません」
ようやく納得したようだ。
でもまた明日から言い出しそうな気がする。
わたしはイレーレナのことが好きだし、イレーレナもわたしのことが好きだ。
それだけでいい気がする。
なぜイレーレナは、それ以上のものを求めるのだろう。
こうして二人で遊んでいれば、お互い楽しいと思うのに。
わたしはイレーレナとまた唇を重ね合わせた。
この日、わたしはフローラリンデとの婚約を破棄しようと思っていた。
いつものように、自分の部屋で、イレーレナと二人だけの世界に入っていたわたし。
その世界から戻ってきてからも、イレーレナと二人でくつろいでいた。
「イレーレナよ、今日わたしは、フローラリンデとの婚約を破棄する」
「いよいよですね」
イレーレナは笑う。
「昨日も話をした通り、お前にもきてもらう。お前という存在がいれば、フローラリンデは打撃を受けるだろう」
「フローラリンデさんがかわいそうな気がしますけど」
「心にもないことをよくいえるものだな。うれしくてしょうがないだろう」
「もちろんうれしいですわ。でもフローラリンデさんがかわいそうだとは思います。そこまでフローラリンデさんのことを嫌っていたのですか?」
「フローラリンデは、わたしに贅沢をするな、と言った。それだけでも嫌う理由としては充分だ。そして、もともとお前と違ってゴージャスではない。わたしはゴージャスな子が好きなんだ」
そう言った後、わたしは唇をイレーレナの唇に重ねた。
唇を離すと、
「わたしには、今はお前がいればいい」
とわたしは言った。
「今だけですか?」
「まあ今はだ。その内、また他の女性を愛するかもしれない。わたしはとにかく遊びたい」
「わたしを婚約者にする気はないんでしょうか?」
「ないな」
「そんな……。婚約を破棄されるのであれば、次の婚約者が必要でしょう? わたしだったら、家柄も申し分ないし、ルアンソワ様をこうして満足させることができる。婚約者としてこれ以上の適任な女性はいません」
イレーレナは、ちょっと厳しい表情になって言う。
また婚約の話だ。うんざりする。
わたしが十人の女性と別れてきた一番の要因は、彼女たちが婚約者の座を要求してきたことだった。
婚約し結婚するというのは、他の女性と遊びにくくなり自由がなくなっていくことだとわたしは思っている。
父親に言われたので、やむをえず婚約したが、その婚約も嫌になって破棄をするのだ。
なぜ、また婚約をしなければならないのだろう。
イレーレナのことは好きだ。
でも婚約をしなければならないということにはならない。
今の関係が続けばいいと思っている。
とはいっても、きっぱり断るのも、関係をおかしくしてしまう。
「まあ、お前がもっと魅力的になっていけば、婚約を検討してもいい」
わたしがそう言った途端、イレーレナは笑顔になった。
「それだったら自信があります。もっと魅力的になり、ルアンソワ様の婚約者になっていきます」
「すごい自信だな」
「ここまで付き合ってきたんですもの。ただの恋人でいたくはありませんわ」
そう言って笑うイレーレナ。
いや、わたしは、イレーレナとはただの恋人のままでいいと思っている。
これが婚約者になれば、私の自由を制限しようとするに違いない。
そうなると、新しい恋はできなくなる。
まだまだわたしは、いろいろな女性と遊びたい。
イレーレナはその女性の中の一人でしかないのだ。
「わたしはルアンソワ様が好きです」
イレーレナは甘えた声で言ってくる。
「わたしもイレーレナが好きだ」
「婚約者に今すぐなりたいです」
「それは無理だ」
「そんなことはおっしゃらずに。お願いしたいと思います」
「とにかくもっと魅力的になってほしい。そうすれば検討する」
「今日は無理なんですね。今日婚約したかったのですけど」
残念そうなイレーレナ。
「今日はまず、婚約を破棄しなければならないんだ。いずれにしても、それからのことだ。検討していないとは言っていない。今日は、とにかく集中したい」
「ルアンソワ様がそうおっしゃるなら、今日はもう言いません」
ようやく納得したようだ。
でもまた明日から言い出しそうな気がする。
わたしはイレーレナのことが好きだし、イレーレナもわたしのことが好きだ。
それだけでいい気がする。
なぜイレーレナは、それ以上のものを求めるのだろう。
こうして二人で遊んでいれば、お互い楽しいと思うのに。
わたしはイレーレナとまた唇を重ね合わせた。
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