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第四十三話 わたしはこれから殿下と一緒に歩んでいく
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わたしは国内の問題点とその解決策について、なるべくわかりやすく、そして手短にまとめて話をした。
黙って聞いていた国王陛下だったが、
「財政の赤字を減らす為には、増税ではなく、王室経費の節減が必要だと思っています」
と言った時は、さすがにムッとしているようだった。
わたしとしては、柔らかめに言ったつもりだった。
しかし、「王室経費の節減」というのは、それだけデリケートなことなのだろう。
国王陛下は、一生懸命我慢をされているようだ。
いつそれが爆発するかもしれない。
でも話はとにかく続けなくてはいけない。
そして、なんとか話を最後まですることができた。
国王陛下は、なんとか怒りを抑えたようだ。
しかし、厳しい表情であることには変わりはない。
短い時間だったとはいうものの、話したいことは話せたと思う。
後は、国王陛下がどう思うか、というところになる。
厳しい表情のままなので、わたしのことを嫌な女性だと思った可能性はある。
そうだとすると、これから殿下に権限の多くを移譲し、こういう人の採用の多くを任せるといっても、決していい気持ちはしないだろう。
殿下は、先程も、
「わたしがあなたを必ず守ります」
と言ってくださった。
殿下にはご迷惑はかけたくないので、国王陛下がわたしのことを認めてくださればいいのだけど……。
わたしは国王陛下の言葉を待った。
国王陛下は、しばらくの間黙っていたが、やがて、
「あなたの話は要点がまとまっていて、わかりやすかった。その点は認めよう。また、デリケートな話である「王室の経費節減」についても、内容についてはまた別の問題だが、話をしたこと自体は褒めてやる」
と言った。
「ありがとうございます」
わたしがそう言って頭を下げると、
「それではフローラリンデさんをわたしのアドバイザーにすることについて、改めて賛成していただくことでいいですね」
と殿下は言った。
国王陛下は、
「少なくとも、国内の問題点に対する方策をもっているということは理解した。王太子に賛成する」
と言った。
「賛成していただきありがとうございます」
殿下がそう言って頭を下げた。
これでようやく少し安心できると思っていた時、国王陛下は、
「賛成はするが、間違ってもらってはいけない。まだこの女性の全体を認めたわけではない。王太子が決めたことだから一旦は従う。しかし、もしこの女性が思うような働きができないようであれば、その時は、どうするかを検討しなければならない」
と言った。
まだまだ国王陛下の信頼を得るのは難しそうだ。
それでも進んでいくしかない。
「大丈夫です。きっと王国の為に尽くしてくれます」
「まあ王太子がそういうのなら」
国王陛下が言うと、それまで黙っていた王妃殿下が、
「わたしも国王陛下と同じで、まだこのものの全体は認めていませんが、賛成はします。王国の為に尽くしなさい」
と厳しい表情で言った。
王妃殿下も、わたしへの信頼は弱い。
お二人の信頼を得ていくことが、これから大切になってくる。
気の遠くなるような話だ。
「これで、お二人も賛成してくださいました。これから一緒に努力していきましょう」
微笑む殿下。
そうだ。
わたしはこれから殿下と一緒に歩んでいく。
努力していけば、きっとお二人もわたしのことを認めてくださるだろう。
わたしはそう思うのだった。
黙って聞いていた国王陛下だったが、
「財政の赤字を減らす為には、増税ではなく、王室経費の節減が必要だと思っています」
と言った時は、さすがにムッとしているようだった。
わたしとしては、柔らかめに言ったつもりだった。
しかし、「王室経費の節減」というのは、それだけデリケートなことなのだろう。
国王陛下は、一生懸命我慢をされているようだ。
いつそれが爆発するかもしれない。
でも話はとにかく続けなくてはいけない。
そして、なんとか話を最後まですることができた。
国王陛下は、なんとか怒りを抑えたようだ。
しかし、厳しい表情であることには変わりはない。
短い時間だったとはいうものの、話したいことは話せたと思う。
後は、国王陛下がどう思うか、というところになる。
厳しい表情のままなので、わたしのことを嫌な女性だと思った可能性はある。
そうだとすると、これから殿下に権限の多くを移譲し、こういう人の採用の多くを任せるといっても、決していい気持ちはしないだろう。
殿下は、先程も、
「わたしがあなたを必ず守ります」
と言ってくださった。
殿下にはご迷惑はかけたくないので、国王陛下がわたしのことを認めてくださればいいのだけど……。
わたしは国王陛下の言葉を待った。
国王陛下は、しばらくの間黙っていたが、やがて、
「あなたの話は要点がまとまっていて、わかりやすかった。その点は認めよう。また、デリケートな話である「王室の経費節減」についても、内容についてはまた別の問題だが、話をしたこと自体は褒めてやる」
と言った。
「ありがとうございます」
わたしがそう言って頭を下げると、
「それではフローラリンデさんをわたしのアドバイザーにすることについて、改めて賛成していただくことでいいですね」
と殿下は言った。
国王陛下は、
「少なくとも、国内の問題点に対する方策をもっているということは理解した。王太子に賛成する」
と言った。
「賛成していただきありがとうございます」
殿下がそう言って頭を下げた。
これでようやく少し安心できると思っていた時、国王陛下は、
「賛成はするが、間違ってもらってはいけない。まだこの女性の全体を認めたわけではない。王太子が決めたことだから一旦は従う。しかし、もしこの女性が思うような働きができないようであれば、その時は、どうするかを検討しなければならない」
と言った。
まだまだ国王陛下の信頼を得るのは難しそうだ。
それでも進んでいくしかない。
「大丈夫です。きっと王国の為に尽くしてくれます」
「まあ王太子がそういうのなら」
国王陛下が言うと、それまで黙っていた王妃殿下が、
「わたしも国王陛下と同じで、まだこのものの全体は認めていませんが、賛成はします。王国の為に尽くしなさい」
と厳しい表情で言った。
王妃殿下も、わたしへの信頼は弱い。
お二人の信頼を得ていくことが、これから大切になってくる。
気の遠くなるような話だ。
「これで、お二人も賛成してくださいました。これから一緒に努力していきましょう」
微笑む殿下。
そうだ。
わたしはこれから殿下と一緒に歩んでいく。
努力していけば、きっとお二人もわたしのことを認めてくださるだろう。
わたしはそう思うのだった。
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