上 下
8 / 84

第八話 継母

しおりを挟む
異母妹と異母弟は、お父様の三番目の夫人の子。

わたしのお母様がこの世を去ってから、一年後に再々婚。

異母姉の母と同じくらいの美人。異母姉の母もプライドが高く、わがままだったのに比べて、つつましい性格だと言われていた。

そうしたところをお父様が評価したこともあり、別の子爵家から嫁いできたのだけど……。

外に対してはつつましやかにしているし、お父様に対しても尊大なところはなかった。

しかし、異母姉やわたしには、毎日のように嫌味を言ってくるし、冷たい態度をとっている。

外での対応とは大違いだ。

それは幼い頃から。

我ながらよく耐えてこられたと思う。

ただ、異母姉の方は成長するに従って、それに真っ向から反撃するようになった。

一日中言い争いをしていたこともあるぐらいだ。

それに疲れたのか、最近は口をきかないことも多くなってきている。

ただ団結をすることもある。

それはわたしに対する対応。

もともと、継母は、異母姉よりわたしの方が嫌味を言いやすかったようだ。

継母がわたしに嫌味を言い出すと、異母姉も一緒になって言い出してくる。

こちらの方はたまらない。

相手をするのは嫌なので、相手が言い疲れるのを待つ毎日。

時には怒りたくなることもあったが、怒ってはそれこそ相手の思うつぼ。

耐えるしかなかった。

継母のわたしたちに対する冷たい態度について、お父様も注意はしていた。

わたしたちの目の前で言ってくれたこともある。

しかし、

「これは、この子たちの教育の一環なんです」

と継母は反論する。

お父様も継母には甘いところがあり、それ以上は言えなかった。

そして、継母は、結局態度を直そうとはしなかった。

今もまた、その牙をむき出しにして、わたしに向かってくる。

「あなたはリランテーヌ子爵家の恥さらしだわ。せっかくの縁談だったのに。何をやっているの、あなたは。情けない。こんな人は、この家から追放してもいいぐらいだわ」

わたしはただじっと耐える。

「全くどうしようもない。わたしの権限で、あなたをこの家から追放してしまおうかしら」

冷たい口調で言う継母。

継母は、ただの継母であればまだいいのだが、今の彼女はそうではない。

お父様がこの世を去った後は、彼女が産んだ異母弟が後継者になったのだが、何分まだ十歳と幼い。

まだ家のことを仕切るのは無理だ。

お父様の遺言で、継母がその後見役になった。

事実上、この子爵家のトップといっても過言ではない。

今は、この家のすべての権力を握っている。

ということは、わたしの処遇についても、その権限を握っていることになる。

悔しいが、お父様の遺言である以上、どうにもならない。

「それがいいわ、お継母様。追放してしまったらいいのでは」

異母姉が賛成する。

「お母様の思い通りにするといいと思います。この家の恥ですから。こんな姉を持ってしまって、わたしはつらいです」

異母妹も厳しい口調で賛成する。

異母妹とは言っても、こんなに冷たい態度はとれるものなのかしら……。

そう思わざるをえない。

異母妹は、異母姉と違い、やさしくて思いやりのある女性という評価を受けつつある。

しかし、それは外での話だ。

屋敷での彼女は、わがままを言うことが多く、家の人々も困っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

島アルビノの恋

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)
恋愛
「あのなメガンサ。ライラお兄ちゃんを嫁入り先まで連れていくのはワガママだ。だいたい実の兄貴でもないのに何でそんなに引っ付いているんだ。離れろ、離れろ。ライラにも嫁が必要なんだぞ」 「嫌だ。ライラは私のものだ。何処でも一緒だ。死ぬまで一緒だ」 「お前に本気で好きな人ができたらライラは眼中になくなるさ」 「僕はメガンサのものだよ。何処でも行くよ」 此の作品は、自作作品『毒舌アルビノとカナンデラ・ザカリーの事件簿』の沖縄版二次作品です。是非、元作品と共にお楽しみくださいね。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

平凡な女には数奇とか無縁なんです。

谷内 朋
恋愛
 この物語の主人公である五条夏絵は来年で三十路を迎える一般職OLで、見た目も脳みそも何もかもが平凡な女である。そんな彼女がどんな恋愛活劇を繰り広げてくれるのか……?とハードルを上げていますが大した事無いかもだしあるかもだし? ってどっちやねん!?  『小説家になろう』で先行連載しています。  こちらでは一部修正してから更新します。 Copyright(C)2019-谷内朋

公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです

エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」 塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。 平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。 だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。 お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。 著者:藤本透 原案:エルトリア

我慢するだけの日々はもう終わりにします

風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。 学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。 そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。 ※本編完結しましたが、番外編を更新中です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

処理中です...