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第六話 部屋から追い出されるわたし

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「婚約者でいるのは無理だと言っているのに。もうきみが何を言っても変わらない」

「一生懸命お願いをしても、無理なのでしょうか?」

「無理なものは無理だ!」

そう言った後、ルアンソワ様は二人の護衛を呼んだ。

「この女性を部屋の外につまみ出せ」

「よろしいのでしょうか? ルアンソワ様の婚約者ではなかったのでしょうか?」

護衛の内の一人が言う。

「かまわぬ。この女性はもうわたしの婚約者ではない。さっさと部屋の外、いや、屋敷の外に出すんだ!」

二人とも困惑しているようだ。

二人がすぐに動こうとしないのを見ると、ルアンソワ様は、

「なんだ、お前たち、わたしの命令が聞けないと言うのか?」

と怒った口調で言う。

「いえ、そんなことはありません。ただ」

と護衛の一人が言う。

「ただ、なんだ?」

「この方が婚約破棄されたということが信じられなくて」

「この女性は私を怒らせることをしたのだ。それで理由は充分だろう。お前たちはただわたしの指示に従えばいい!」

ここまで言われたら、従わざるをえないだろうと思う。

「かしこまりました。ルアンソワ様のご指示に従います」

「ご指示に従います」

二人の護衛は、決心したのだろう。

それぞれわたしの腕をつかむと、そのまま、わたしを連れ出そうとする。

もう先程までの困惑した表情は、そこにはない。

強い腕力だ。抵抗しようにも、華奢なわたしの力では全く歯が立たない。

ルアンソワ様もイレーレナさんも、そんなわたしを冷たい表情で見下している。

二人とも、わたしを婚約者の座から追い出すことができて喜んでいるのだろう。

しかし、それでも、わたしはまだルアンソワ様との婚約をあきらめきれない。

今日の仕打ちで、ルアンソワ様のことは嫌になってきてはいる。

浮気をして、それを謝るどころか、浮気相手とわたしとの共存を言い出す。

それを断ったら、怒り出して、婚約を破棄される。

婚約を破棄するだけでなく、別の女性との婚約を宣言するという残酷な仕打ち。

普通だったら、嫌いになるところだろう。嫌いどころか大嫌いになるかもしれない。

しかし、わたしは、まだ可能性はあると思っていた。

わたしがもっと努力すれば、ルアンソワ様はきっとわたしのことが好きになり、受け入れてくれるだろう、と思っていた。

とはいうものの、わたしの体は、どんどんドアの方向に向かっている。

二人の護衛の力にはかなわない。

このままドアの外に出てしまっては、もう二度とルアンソワ様に会えない気がする。

それではあまりにも悲しい。

そう思ったわたしは、

「ルアンソワ様、どうしてこんなことを。わたしはただ婚約者として、ルアンソワ様に尽くしたいだけなのに。どうか、どうか思い直してください。わたしはルアンソワ様の婚約者なんです!」

と叫ぶように言った。

この想い、届いてほしい!

わたしの悲痛な叫びだった。

しかし……。

「きみはもう婚約者ではない。ただの他人だ。わたしはきみのことが大嫌いになった。なんできみを婚約者にしていたんだろうと思うくらいだ」

ルアンソワ様は一回言葉を切った後、

「もう二度ときみには会いたくない!」

と叫んだ。

決定的な叫びだった。

ルアンソワ様、そこまで言わなくてもいいではないですか……。

わたしは、全身の力が抜けた。

ここまで言われた以上、婚約者の座に戻ることはできないだろう。

そして、わたしはつらい気持ちになりながら、無理矢理、部屋の外に出されてしまった……。
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